モバイルデジタルオーディオプレイヤーの普及と共に、外出先や移動中などでも手軽に高音質で音楽を楽しみたいという、サウンドにこだわるリスナーが増加している。これまでに1万円、3万円などの実売価格で購入可能なお薦め製品を価格帯ごとに紹介してきた。今回は、ヘッドホンにこだわりを持つマニアックなユーザーも納得の価格対となる実売5万円前後で購入できる製品をピックアップし、紹介していこう。

audio-technica ATH-W1000X(実売価格:4万6,538円)

ピアノやコンサートホールにも使用される、硬く密度のあるブラックチェリー材をハウジングの素材として使用したラグジュアリーな密閉ダイナミック型ヘッドホン。木目が一台一台異なるため、自分だけのヘッドホンとして愛着が増し所有欲を満たしてくれる。マグネシウムフレームとウッドケースを直接固定せず、ウッド本来の響きを引き出す”フローティングマウントシステム”を採用。ユニット径53mmという大口径ドライバーが生み出すサウンドは、ナチュラルなかつバランスにも優れる。木製ハウジングおよび大口径ドライバーを搭載した本体重量は約350g(コード除く)とやや重めながら、3D方式ウイングサポートにより装着感を向上させている。

audio-technica ATH-AD2000X(実売価格:4万8,900円)

ハウジング内部の空気を拡散するために設けられた、ジェットエンジンのようなフィン形状のディフューザーが目を惹くオープンエアーダイナミック型ヘッドホン。AD2000X専用に設計されたというパーメンジュール磁気回路/OFC7Nボイスコイル採用の53mm径ドライバーによるクリアかつフラットなサウンドは、クラシックをはじめとしたオールジャンルで音楽を楽しむことができる。また、緻密で正確な表現が必要となるハイビット/ハイレートなHDオーディオのリスニングにもお薦めしたいモデル。3Dウイングサポートによる軽快な装着感に加え、上質なフィット感を提供するスウェード素材の低反発イヤパッドは、肌触りも良く耐久性にも優れる。

GRADO RS2i(実売価格:5万2,800円)

米国ハイファイオーディオの世界で人気のGRADO社によるオープンエア型のヘッドホン。高音質化および軽量化に有効なハンドメイドのマホガニー材をエアチャンバーとして採用しており、デザイン的にもユニークな個性を発揮している。オープンエアならではの解放感と伸びがあり、さらに暖かくディテールまでを鮮明に表現可能な音質は”GRADOサウンド”とも称される。オーディオマニアからも評価の高い同社上位機種”RS1i”の弟分的存在のモデルであり、RS1iと比較しエアチャンバーはやや小さくなっている。接続コードには、8芯UHPLC銅線(1.7m)を使用。オープンエア型のため、自室以外でのリスニング環境では音漏れに要注意。

ULTRASONE PRO900-Balanced(実売価格:6万5,400円)

「PRO 900-Balanced」は、ドイツULTRASONE本社でひとつひとつ手作業でバランス駆動仕様に仕立てたというこだわりの製品。ダイナミックレンジが広くジャンルを選ばないサウンドで定評のある同社密閉ダイナミック型ヘッドホン”PROシリーズ”における密閉型最高機種であり、ブラックボディにシルバーエンブレムが映えるクールなデザインは高級感がある。本機は、接続プラグがXLRコネクタというややイレギュラーな仕様となっているため、バランスヘッドフォン出力に対応したヘッドフォンアンプと組み合わせて使用するのが基本となる。なお、従来仕様のステレオプラグ版の「PRO900」もラインナップされている。

beyerdynamic T90(実売価格:3万5,800円)

ヘッドホンのドライバーユニットにおいて、1テスラ(1万ガウス)を超える磁束密度を生み出す構造により高効率再生を実現するbeyerdynamicの独自技術”テスラテクノロジー”を採用したオープン型ステレオヘッドホン。本製品は、ドイツ自社工場にてハンドメイド生産が行われているとのこと。オーバーヘッドおよびイヤーパッド部分は、マイクロベロアとマイクロファイバーによる高い装着感と快適性を実現し、長時間リスニングでも疲労が少ないという。モバイル用途でも気兼ねなく持ち出すことができる専用のキャリングケースも付属する。テスラドライバーを搭載した密閉型ステレオヘッドホン「T70」シリーズもラインナップされている。


今回は、実売価格にして5万円前後のヘッドホンを紹介したが、音質や装着感などいずれも甲乙つけ難く、仕様的にも各種素材やパーツなど贅沢極まりないものとなっている。皆さんも、趣味趣向や活用したいシチュエーションなどにより、自分だけのお気に入りのヘッドホンを優雅に楽しんでみてはいかがだろうか。この価格帯より上位のモデルには、数十万円という超高級製品が待っているわけだが、一般ユーザーからするとかなり縁遠い世界といえる。ご興味があれば、ぜひそんな奥の深いヘッドホンの世界をさらに探求してみるのも面白いかもしれない。

内山 秀樹(uchy)/ウチヤマ ヒデキ
ライター/サウンドクリエイター/ITコンサルタント

10代の頃より、楽器メーカーの製品開発やインストラクションなどに参加。既存の製品にも多くのコンテンツなどを提供する。現在はフリーランスとして、PC誌/音楽誌への執筆活動をはじめ、作曲、編曲、WEBプロデュース、ITコンサルティング、ゲームサウンド製作、学校講師など多岐にわたる幅広い活動を展開中。