10月4日、CEATEC JAPAN 2012で行われるカンファレンスの1つとして、「スマートテレビの普及促進に向けて-関連政策の最新動向及び今後の展望」という講演が、総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課 課長補佐の岡本樹生氏により行われた。

今後普及が見込まれる新しいサービス「スマートテレビ」だが、政府、そして通信・放送行政を担当する総務省は、これに対してどのような展望を持っているのだろうか。

総務省が考えるスマートテレビとは

総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課 課長補佐 岡本樹生氏

そもそもスマートテレビとはどういったものなのかについてだが、岡本氏は「放送とWebの連携」「多様なアプリケーションコンテンツの提供機能」「端末間の連携機能」という3つの要素を備えることが、スマートテレビの1つの形だとしている。

まず「放送とWebの連携」というのは、テレビがインターネット機能を持ち、Webブラウジングなどを行えるという単純な意味ではない。放送コンテンツ自体がWebとの連携を考慮したものとなり、放送とWebとをシームレスに利用することで、個々のユーザーニーズに対応できるような形だという。

「多様なアプリケーションコンテンツの提供機能」は、放送・通信事業者だけでなく、サードパーティーを含めた多くの事業者が、一定のルールの下で多様なアプリケーション・コンテンツを提供できることを示す。そして「端末間の連携機能」は、デバイスやOSに依存せず、どこのメーカーの端末とでもシームレスに連携できることを指している。

国際的な標準化の推進が、スマートテレビの可能性をひろげる

岡本氏は、これらを実現する方法の1つとして「HTML5」を取り上げた。

HTML5は、W3C(Webで使用される各種技術の標準化を推進する団体)にて、2014年の勧告化を目標に検討が進められている、HTMLの次世代規格である。主な特徴は以下の通りで、スマートテレビのプラットフォームとしても期待できそうな内容だ。

・動画や音声の再生機能がブラウザに実装され、Flashなどのプラグインが不要
・アプリの実行機能が含まれ、OSに依存しない環境を実現
・PC向けだけでなく、テレビやカーナビ、携帯端末への拡張を検討
 (多くの端末でブラウザが共通化され、ワンソース・マルチユースが可能)

岡本氏は、「2010年に、我が国の提案により、第1回W3C Web and TVワークショップが日本で開催され、Webとテレビの連携について検討が始まった」と述べている。これまでに3回のワークショップが開かれており、欧米企業などが積極的に参加し、議論が活発化。2012年6月には、W3Cの後援を受け、日本で国際シンポジウムを開催した。加えて、2012年10月29日~2012年11月2日に行われるW3Cの技術総会(TPRC)では、HTML5に対する日本からの提案が行われる予定となっている。

提案の内容は、放送に関連付けられる大量のコンテンツの中から災害関連情報を抽出し、テレビやモバイル端末に分かりやすく表示する技術や、視聴者の安全に配慮したプライバシー/セキュリティ関連技術などを盛り込む、といったものになるようだ。

ところで、日本の国際競争力を高めるための知的財産戦略を考える「知的財産戦略本部」がまとめた「知的財産推進計画2012」の中には、次のような記述がある。

「テレビ放送の視聴に加え、インターネットを経由した双方向の映像視聴や各種サービス・アプリケーションの利用が可能となる、いわゆるスマートテレビに関して、各種の実証実験を通じ、我が国が先行して主導的な役割を担える領域を中心に技術規格を標準化し、国内外への普及を促進する」

上記のHTML5に対する提案も、この戦略に沿ったものだろう。近年、世界で販売されているテレビ受信機のうち、国内メーカーが占めるシェアは年々低下している。しかし、岡本氏によると、次世代の放送とWebが連携したサービスはまだこれからで、現時点で勝敗は決していないとのこと。また、グローバルな競争を見据えた早期のサービス開始が必要との考えも示した。

標準化を推進し、また標準化の内容に日本の意見を盛り込むことは、ユーザーの利便性に加え、国際競争力の向上のためにも必要だといえるだろう。

既存のテレビとスマートテレビとの関係

講演後、岡本氏に、気になった点を2つほど伺ってみた。1つは、総務省ではHTML5を採用したテレビをスマートテレビと考えているのか。もう1つは、スマートテレビは現在のテレビを過去のものにしてしまうのかという点だ(スマートフォンの普及により、従来の携帯電話が時代遅れ扱いされているように)。

それに対して岡本氏は、「HTML5はスマートテレビの1つの形に過ぎない。しかし、ガラパゴス化を防ぐという意味でも、国際的な標準化の推進は必要。また、スマートテレビの各種機能は、一度にまとめて採用されるわけではなく、少しずつ搭載されて行く。携帯電話の世界のように、今までのテレビが急に時代遅れになることはないだろう」と答えてくれた。