これまで2回に渡ってiTunes Storeの新機能を解説する中で、クラウド関連の機能追加と、iOSデバイスからの使いやすさの向上について紹介した。この2点はいずれも"使いやすさ"のバージョンアップといえるものだったが、今回紹介するのはより"音楽を楽しむ"ための機能。今回登場した「コンプリート・マイ・アルバム」と「Mastered for iTunes」によって、音楽コンテンツがより充実したものになるのだ。
第1回、第2回も合わせてお読みください。
・第1回 - 『iTunes in the Cloud』と『iTunes Plus』
・第2回 - iOSデバイスから使いやすくなったiTunes Store」
購入済み楽曲の収録アルバムは差し引き価格で購入可能
iTunes Storeの良いところのひとつに、アルバムに収録されている曲の中から好きなものだけを選んで購入することができるという点がある。ヒット曲は欲しいが1枚分のアルバムを買うほどではないというアーティストの場合は、この方法で購入コストを抑えることができる。
しかしアーティストの側としては、やはりアルバムをひとつの作品単位として聴いてもらいたいと考えているのが多数派だろう。そのために曲をある程度書き、曲順を考えてまとめたアルバムという形で発表しているのだから。1曲だけ抜き出して聴くよりも、アルバムで聴いたときに感銘を受けたという体験はないだろうか。それこそがアーティストが本来、あなたに聴いてもらいたかった作品の姿だ。
iTunes Storeの新機能、「コンプリート・マイ・アルバム」はこれまでにiTunes Storeで購入した1曲から、その曲が含まれる「アルバム」を購入するまでのハードルを少し下げてくれる機能だ。例えば1曲だけ購入した曲を含むアルバムがあれば、これを表示してまとめて購入できる。しかもそのとき、購入した分の価格を割り引いてくれるのだ。
それでは、実際にコンプリート・マイ・アルバム機能を使ってみよう。
まずiTunesの「購入したもの」からiTunes Storeで購入した曲のリストを表示してみよう。この中でアルバムに収録されているうちの1曲をダウンロードした曲を探して、「Ping」ボタンをクリックしよう。
iTunesの「iTunes Store」-「購入したもの」でリストを表示すると、アルバムの中の1曲だけがある場合がある。この場合は種ともこの「伝えて -pass it on」という曲が、「カナリヤとおひさまとそれから」というアルバムに収録されている曲だ。この「Ping」ボタンをクリックしてみる |
Pingボタンをクリックするとコンテキストメニューが表示され、下半分の「iTunes Storeで表示」のメニューの中に、アーティスト名やその曲を含むアルバム名が表示されているはずだ。ここでアルバム名を選ぼう。
するとiTunes Storeのアルバムページにジャンプする。このとき、アルバムアートの下に「コンプリート・マイ・アルバム」と表示され、購入済の1曲分が差し引かれた価格が表示されているはずだ。
コンプリート・マイ・アルバムは、シングルで曲を購入してその曲を含むアルバムを購入する場合にも一部適用される。この場合は、アーティスト名でアルバム一覧を表示して、その曲が入っているアルバムを探してみよう。ただしこちらの機能はすべてのアルバムに適用されるわけではなく、適用外になる場合もある。
アーティストの意図した音でアルバムを聴く「Mastered for iTunes」
さらに今回、より良い音楽を楽しむために用意されたのがMastered for iTunesだ。
この機能は、アーティストが「聴いてもらいたかった音質」にするために、iTunes専用マスタリングを施した楽曲だ。まだ一部の曲でしか採用されておらず、表示もアルバム解説部に一部あるだけで特別な差別化はされていない。価格もこれまでの曲と同じだ。アルバム機能と同様、これもアーティスト側が想定していた形で音楽を楽しんでもらうための機能といえるだろう。
Mastered for iTunesで提供される「The Girl With the Dragon Tatoo」のサウンドトラック。曲やアルバムの表示部にMastered for iTunesの表示はないが、メモにその旨が書き込まれている |
その他の対応曲はミュージックの「ミュージック ナビリンク」の中にリンクがあり、クリックすることで一覧で表示できる。まだ数えるほどしかないが、今後はこの曲数が増えてくるだろう。
ナビリンクの中に「Mastered for iTunes」という項目がある。これをクリックすると…… |
Mastered for iTunes対応アルバムがまとめられている。これからはこの形で提供される曲も増えてくるだろう |
アーティストの意向を反映した音楽の聴き方への回帰
iTunesの登場は音楽の買い方を変えたと言われる。アルバムとしてアーティストを楽しむ文化ではなく、ヒット曲だけを買って消費するものに変えてしまったという批判だ。今回のこれらの機能でアップルはもう一度音楽の聴き方を変えようとしているのかもしれない。デジタル時代にふさわしいマスタリングを施した曲をアルバムで聴く、この2つの機能から見えてくるのはそんな音楽の聴き方だ。アーティストの意志を反映した方向への変化は、かつてのような「文化」を取り戻せるだろうか。ひとつ言えるのは、音楽をより楽しめる変化であるということだ。消費するのではなく、音楽を楽しむ。そんな聴き方をしてみてはどうだろうか。
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