日産自動車がコンパクトカー「ノート」をフルモデルチェンジして発売する。パワートレインは日産独自の電動化技術「e-POWER」(シリーズハイブリッドシステム)のみで、発売日は2輪駆動が2020年12月23日、4輪駆動が2021年2月の予定。価格は2輪駆動で202.95万円からだ。日産にとっては売れなければ大変なクルマだが、新型ノートはどう変わっているのか。

  • 日産の新型「ノート」

    フルモデルチェンジした新型「ノート」の実車を日産スタジアム(神奈川県横浜市)で見てきた。日産の新しいロゴを含め、すっきりとしていてクリアな外観がカッコいい。ちなみに写真の4連LEDヘッドライトはオプションで、通常はハロゲンだ

中身も外見もがらりと刷新

ノートは日産が2005年に発売したハッチバックのコンパクトカー。これまでに累計で146万台を売り上げた人気車種だ。現行型(2世代目)の登場は2012年で、今回は約9年ぶりのフルモデルチェンジとなる。2代目ノートは2016年に「e-POWER」を初採用し、販売台数を大いに伸ばしたモデル。2018年には、日産のクルマとして50年ぶりに日本における登録車販売台数ナンバーワンを獲得した。

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    新型「ノート」(2輪駆動)には価格の低い順に「S」「F」「X」の3つのグレードがある。価格帯は202.95万円~218.68万円。ボディサイズは全長4,045mm、全幅1,695mm、全高1,505mm(Xは1,520mm)だ。幅と高さは現行型(2代目)と同等で、全長は50mm短い

今回の新型ノートで日産は、新規開発のプラットフォームを採用し、パワートレインのe-POWERを2世代目へと刷新した。内外装も大きく変わった新型ノートだが、中身も別物だ。日産 第1製品開発部 チーフビークルエンジニアの渡邊明規雄さんの説明は以下の通り。

「新型ノートの開発において、新しい『次世代上級小型車向けプラットフォーム』を採用したことは1つのハイライトです。ボディを高強度化・高剛性化し、サスペンション、ステアリングの剛性も上げることで静粛性を向上させ、走りを進化させました。e-POWERはモーター、インバーター、ジェネレーター、バッテリー、制御の全てで設計を見直し、よりEV(電気自動車)に近い力強く上質な走りを実現しています」

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    ガソリンで発電専用エンジンを回し、作った電力でモーターを駆動してクルマを走らせるというのが「e-POWER」の仕組み。電気で走るという意味ではEVと同じなので、トルクフルで力強い走りや俊敏な加速などが楽しめる。写真は新型「ノート」のボンネットを開けて撮影

e-POWERを搭載する新型ノートはEVのように静かに走るはずだが、その仕組み上、ときどきはエンジンを回して発電する必要がある。普段が静かだから、エンジンの始動音・稼働音は余計に気になりそうなものなのだが、日産はエンジン音をなるべく乗員に聞かせないような工夫を施した。

まず、エンジンを回す頻度を抑えた。以前のe-POWERでは、なるべくバッテリー残量を残しておくため頻繁にエンジンを回していたのだが、日産は現行モデルの走行データを分析するなどし、走行に必要な最低限の条件をあぶりだした。これにより、「本当に必要なときにだけエンジンをかける制御」(渡邊さん)が可能になったという。

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    新型「ノート」(フロントモーター)の性能は最高出力116馬力(85kW、現行型から5kWアップ)/2,900~10,341rpm、最大トルク280Nm(同26Nmアップ)/0~2,900rpm。燃費(WLTCモード)は最も良好な「F」グレードで29.5km/Lだ

もう1つの工夫は、エンジンをかける「タイミング」に関するもの。なんと、新型ノートはホイールで道路の状態をセンシングしていて、エンジンを回すタイミングを見計らっているのだ。具体的には、ロードノイズが少なくて、ほかの音が目立ちそうな場面ではなるべくエンジンを回さず、ロードノイズでほかの音がまぎれそうな場面では積極的にエンジンを回す。新型ノートは空気の読めるクルマなのである。

  • 日産の新型「ノート」

    タイヤサイズは「F」と「S」が15インチ、「X」が16インチ。ホイールはオプション1種類を含む計3種類だ。写真の新型「ノート」はオプションの16インチアルミホイールを装着

パワートレインとプラットフォームのほかにも進化した点はたくさんある。例えば「操作性の向上」(ある一定のコーナーを走行しているときのハンドル修正量が現行型の半分に)、「取り回しがよくなった」(最小回転半径4.9m)、「運転支援装備が充実」(追加装備多数、プロパイロットは地図情報を活用するナビリンク機能を新規採用)などだ。

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    新型「ノート」の運転支援装備

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  • 車内も変わっているが、驚いたのはナビなどを表示する画面とメーターが一体となっているところ。これは日産が「モノリス」と呼ぶ統合型ディスプレイで、2021年発売予定のEV「アリア」でも採用が決まっている

「ヤリス」と「フィット」は強敵だが…

さまざまな部分で日産の気合いが伝わってくる新型ノートなのだが、ライバルは強力だ。トヨタ自動車には「ヤリス」、ホンダには「フィット」という小型車があり、それぞれの新型が2020年2月に登場したばかりなのである。

  • 日産の新型「ノート」
  • 左からトヨタ「ヤリス」、ホンダ「フィット」、日産の新型「ノート」。これから始まる(小型車)三国志、誰が劉備か曹操か

三つ巴の戦いは見ている分には面白い。ただ、ちょっと気になるのが価格差だ。ヤリスとフィットにはガソリンエンジンモデルとハイブリッド(HV)があり、当然ながらガソリン車はHVに比べて安い。なので、ヤリスの価格幅は139.5万円~229.5万円、フィットの価格幅は155.76万円~232.76(ともに2輪駆動車)と上下に広いのだが、ノートにはHVしかないので価格幅は202.95万円~218.68万円と狭い。スタートプライスで不利な感じがするのだ。

なぜ、値段の安いガソリンエンジン搭載モデルを用意せず、e-POWERのみとしたのか。このあたりについて日産広報に聞くと、前提として、現行型ノートでは7:3くらいの割合でe-POWERの方がよく売れていたとのこと。さらに、ガソリン車3割の多くは法人需要が占めていたそうだ。そして、ガソリンとe-POWERの2種類を今後も作り続けていくとなると、どうしてもコストがかかる。そんな背景から、e-POWERへの一本化ということになったという。

クルマの買い方も多様化していて、現金一括の顧客が減る一方、通常のローンや残価設定ローンを選ぶ顧客は増えているそう。残価設定ローンを使えば、現行のe-POWER搭載車はガソリン車と総額で見るとそう変わらない値段で買えるらしい。

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    新型「ノート」には「AUTECH」バージョンもある

最終的に同じような金額を支払うのであれば、e-POWERに乗りたいというのが人情なのではなかろうか。日産はそんな風に考えたもののようだ。これには納得できる。日産が先日発売したSUV「キックス」に乗ってみて再確認したのだが、e-POWERで味わえる電気の走りは気持ちがいいからだ。それに、ヤリスとフィットのハイブリッドと比べれば、ノートがとりわけ高いという印象は受けない。むしろ、安いという感じさえするほどだ。

いろいろと大変そうな日産ではあるが、新型ノートが現行型同様に売れてくれれば、同社としても一息つけるのではないだろうか。

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