多くの人の支持を集めることが人気のバロメーターである一方、常に評価の目にさらされる宿命にあるのが著名人たち。それぞれの職業観の中で、どのような言葉を支えにして苦境を切り抜けているのか。連載「わたしの金言・名言」は、著名人たちが心の拠り所としている言葉を聞く。

第16回は、18日に第2話が放送される読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『約束~16年目の真実~』(毎週木曜23:59~)で主演を務める中村アンが登場する。今作は、連続殺人犯となった父の無実を信じて刑事となった主人公・桐生葵(中村)が、16年ぶりに故郷に戻ってきた途端、ある失踪事件が起きるところから始まるオリジナルの心理サスペンスドラマ。第2話では、葵が、望野町に観光に来ていたと思われる梅崎若菜(向里祐香)の遺体を発見。その遺体の口にはビー玉が詰められており、香坂(横山裕)をはじめ捜査第一係の面々は、16年前の事件の模倣犯だと考えるが、葵は反論して……というストーリーが描かれる。

そんな中村が大切にしているのは、恩師である学生時代の部活の顧問がかけてくれた「自分という軸」にまつわる言葉だという。

  • 中村アン

    女優の中村アン 撮影:宮田浩史

■トレードマークの長い髪に込めていた思い

私は高校・大学でチアリーディング部に所属していたのですが、このお仕事を始めるとき、顧問の先生が「あなたが決めたなら、最初は無理することもあるかもしれないけれど、“自分という軸”をぶらさずにやりなさい。軸がぶれると、まわりの人も見ている人も、あなたがどんな人か分からなくて悩むし、迷うから」と言ってくださったんです。確かにその通りだなと思って、お仕事を始めてからずっと、悩んだり焦ったりしたときも、まわりに流されそうになったときも、自分の軸をしっかりぶらさず持っておくことを大事にしています。

バラエティ番組に出始めてから5年ぐらいは、「中村アンはこういう人間です」としっかり認知していただけるまで、具体的には道で「あ、中村アンだ」とすぐ気付いてもらえるレベルになるまでは、絶対にトレードマークの長い髪を切らないとか、“中村アン像”がぶれないように貫いてきました。今はそのイメージから逆に解放されて、また違うステージに挑戦している段階ですが、引き続き自分の軸をぶらさず歩んでいきたいなと思っています。

■チアリーディング部での経験が自分を作った

自分の性格やベースが作られたのはチアリーディング部。私はキャプテンだったので、周りを見ること、調和を取ること、そして諦めないことの大切さをそこで学びました。昨年、座長として舞台に初挑戦したとき、「これって、部活かも」と感じたんです。最初はうまくやれるか不安もあるのですが、毎日会うとだんだん皆の心が開かれていって、助け合える関係になっていくところが部活に似ているなと懐かしくなって。一緒に過ごすうち、気がついたら皆のことが大好きになっていて、大人の青春を味わえました。

顧問の先生からいただく言葉はいつも人生の支えになっていて、「迷うときも、まずやってみないと道は開けないよ」ともよく言われていました。昨年の初舞台もそうですし、現在放送中のドラマ『約束~16年目の真実~』のように主演作のお話をいただいたときも、先生の言葉を思い出して、せっかくチャンスをいただけるなら飛び込んでみようと、前向きに考えるようにしています。洋服は迷うぐらいなら買わないのですが(笑)、お仕事でトライするのは結構好きですね。

  • 中村アン
■中村アン
1987年9月17日生まれ、東京都出身。TBSドラマ『グランメゾン東京』(19)、TBSドラマ『DCU~手錠を持ったダイバー~』(22)、映画『名も無き世界のエンドロール』(21)など多くの話題作に出演し、2022年の『DCU~手錠を持ったダイバー~』では第4回アジアコンテンツアワードの助演女優賞にノミネートされるなど、その演技力が日本国外からも評価されている。2023年は『イチケイのカラス スペシャル』、『キッチン革命』、『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、『ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜』、『大奥 Season2「幕末編」』、『僕の手を売ります』と6本のドラマに出演したほか、『笑ってもいい家』で舞台に初挑戦し、主演を務めた。