2019年4月30日に幕を下ろす「平成」。マイナビニュースでは、「平成」の中で生み出されたエンタメの軌跡をさまざまなテーマからたどる。この「平成を駆け抜けた番組たち」は、平成の幕開けと同じ時期にスタートし、現在まで30年にわたって続く番組をピックアップ。そのキーマンのインタビューを通して、番組の人気の秘密を探っていく。

第8回は、平成2(1990)年4月にスタートした、フジテレビ系オムニバスドラマ『世にも奇妙な物語』。あのテーマソングに、タモリの淡々とした語り口が聞こえてくれば、誰もが奇妙な世界に引き込まれるほど定着しているが、約30年にわたって膨大な数のエピソードを生み続けることができる理由は何か。

番組を立ち上げたフジテレビの石原隆取締役と、元共同テレビで現在は尚美学園大学の教授を務めながら、最新作『’18秋の特別編』(11月10日21:00~23:10)でも制作に携わる小椋久雄氏に、思い出話に花を咲かせてもらいながら伺った――。

  • 石原隆氏(左)と小椋久雄氏

放送予定のドラマが急きょ中止で…

――現在の『世にも奇妙な物語』が始まる前に、深夜で『奇妙な出来事』という前身番組があったんですよね。

石原:はい。『奇妙な出来事』は89年10月に深夜の30分枠で始まったんですが、そのもっと前に『フローズンナイト』という単発番組があったんですよ。週末の午後帯に、不可思議でファンタジーなオムニバスドラマを2時間で3本立てでしたかね。その企画と監督を務めたのが小椋さんです。当時フジテレビに「深夜の編成部長」というシステムがあって、3代目を私がやっていたときに、『フローズンナイト』のようなオムニバスドラマをぜひやりたいということで、『奇妙な出来事』を始めたんです。

――それからわずか半年後に、『世にも奇妙な物語』として木曜8時に進出されましたが、ホラー要素もある番組をゴールデンに編成するということに、議論はなかったのですか?

石原:もともと木曜8時はドラマを編成する予定だったんですが、90年の年が明けて1月か2月に、それが中止になってしまい、なにか番組を探していた中で、先輩の編成部員から「石原が深夜でやってる『奇妙な出来事』って面白いじゃん」って言われて、急きょ決まったんですよ。

――そして、ストーリーテラーは『奇妙な出来事』の斉木しげるさんから、『世にも奇妙な物語』でタモリさんになりました。

石原:タモリさんは当時、NHKで『驚異の小宇宙 人体』というサイエンス番組をやっていたんです。暗いスタジオに立って、カメラ目線で視聴者に向かって語りかけるスタイルのMCで、それを見て知的な雰囲気でいいなと思ったんです。こういう番組のストーリーテラーというのは、アメリカのSFドラマシリーズ『トワイライト・ゾーン』も作家が務めていましたし、なんとなくインテリなイメージがあったものですから、タモリさんがピッタリだなと思いました。ただ、当時若手の僕らがとても話をできる相手ではないですし、急きょ決まった番組なので時間もなく、難しいだろうと思っていました。失礼を承知で事務所の方にダメ元でお願いに行ったら、たまたまマネージャーさんが『奇妙な出来事』の大ファンでいらっしゃって、その流れで引き受けてくださったという、非常に幸運な決まり方をしたんですよ。

  • ストーリーテラーのタモリ (C)フジテレビ

何曲もの中から決まったテーマソング

――『世にも奇妙な物語』の世界観を演出するのに欠かせない、あの「タラララン♪」のテーマソングですが、これは番組のために書き下ろされたのですか?

小椋:そうです。蓜島邦明さんが作った「ガラモン・ソング」ですね。蓜島さんは、ゲーム音楽を中心に作曲されている方で、落合(正幸監督)さんから才能がある面白い人がいるというのを聞いて本人にお会いして、何曲もメロディーを変えて作ってくれました。大御所の方だと、1曲作ってこれで決まりというのが多いと思うんですけど、向こうも楽しんでいろんなものを作ってくれて、その中からあの曲に決まったんです。

――作曲はどのようにオーダーしたんですか?

小椋:「見終わった後に、頭の中に残る感じがほしい」「毎週曲がかかると怖い時間がやってくるというイメージを植え付けたい」とお願いしたと思いますね。

――1990年の放送開始以来、膨大な作品の歴史の中で、印象に残っているエピソードを伺いたいのですが…。

小椋:最初の頃はタモリさんご自身に、ドラマの中に役で出てもらっている回がいくつかあるんですよ。片岡鶴太郎さんが出た『帰れない』(90年)で、帰れないおじさんが毎晩集まって飲んでるおでん屋の屋台の店主がタモリさんだったり(笑)

石原:(明石家)さんまさんの『偶然やろ』(91年)とかもそうですね。ヒッチコック監督のカメオ出演のように、「タモリさんを探せ」みたいな狙いもありました。