ボルボ・カー・ジャパンは新型電気自動車(バッテリーEV=BEV)「EX30」を発表した。2023年11月中旬に注文の受け付けを開始し、年内に2,000台の受注を獲得するのが目標だ。プレミアムブランドがBEVで2,000台を、しかも2カ月弱という短期間で販売するというのはかなり野心的な目標だが、実車を取材してみると「実際に売れてしまうかも?」という気もした。

  • ボルボ「EX30」

    ボルボの新型BEV「EX30」は売れるのか!

売れそうな理由①:日本にジャストフィットなサイズ

日本で売れそうだと思う一番の理由はEX30のサイズ感だ。ボディサイズは全長4,235mm、全幅1,835mm、全高1,550mmなのだが、この数値、まるで日本の道幅や駐車場(特に機械式の立駐)のサイズに合わせて作ったかのような絶妙なまとまり感がある。EX30の発表会に登壇したボルボ・カー・ジャパン新社長の不動奈緒美さんも、EX30のことを「日本人のために開発されたような」クルマだと話していた。

  • ボルボ「EX30」
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  • 「EX30」はボルボ史上最小のBEVだ

売れそうな理由②:ライバル不在?

日本の自動車市場を見渡してみると、「小さなBEV」というジャンルでEX30のライバルとなりそうなクルマは見当たらない。日産自動車「サクラ」は軽自動車だからジャンルが違うし、日産「リーフ」やフィアット「500e」とも客層は重なりそうにない。

EX30はいわゆる「Bセグメント」のクルマだ。日本で増えているBEVは、ほとんどが「Cセグメント」に属するクルマ。EX30は日本のBセグBEV市場で先行者利益を享受できそうな雰囲気がただよっている。

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    BセグのBEVは今のところ競合がほぼいない

売れそうな理由③:値段が安い?

日本に入ってくるEX30は「Ultra Single Motor Extended Range」というモデル。69kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しており、フル充電で480kmを走行可能だという。この距離は欧州参考値であり、日本仕様の航続距離は「おそらく、もう少し伸びるのでは」というのがボルボ・カー・ジャパン広報の見立てだ。

  • ボルボ「EX30」
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  • モーターの能力(動力性能)は最高出力272Ps、最大トルク343Nm

値段は559万円。補助金を使えば400万円台になりそうな価格設定だ。CセグBEVが軒並み600万円を超える値付けとなっている中で、EX30の価格は安いと感じたのだがどうだろう。

EX30はサブスクでも乗れる。料金は月額9.5万円。申し込み金や頭金は不要で、車両保険を含む任意保険、通常のメンテナンスプログラムに加え、登録時の諸費用や利用期間中の諸税も含まれる。契約期間は最長24カ月。3カ月前に申し出ることにより、ペナルティなしで解約することもできる。サブスクの台数は300台。年内2,000台の受注目標にはこの300台も含まれる。

  • ボルボ「EX30」

    「EX30」のボディカラーは「ヴェイパーグレー」「オニキスブラック」「モスイエロー」「クリスタルホワイト」「クラウドブルー」の5色展開。サブスクはモスイエロー100台(申し込みの受け付け開始は10月2日)、クラウドブルー200台(同10月16日)の計300台だ。黄色いクルマは好きだけど、下取り価格が気になって購入に踏み切る勇気が出ないという人はけっこういそうな気がするが、サブスクならそのあたりの心配なしで乗ることができるはずだ

EX30にはモーターとバッテリーの組み合わせが異なる3つのタイプがある。日本に入ってくるのは最も航続距離が長いタイプだ。ほかに「リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリー搭載のシングルモータータイプ」と「リチウムイオンバッテリー搭載でモーター2基を積む高性能タイプ」があって、これらも2024年には日本にやってくるものとみられる。LFPバッテリー搭載モデルは間違いなくもっと安い値段になるから、来年以降もEX30の販売は安泰なのでは、という感じがする。

売れそうな理由④:環境意識の高い人に受けそう

現時点でBEVを購入しているのはどんな人なのだろうと想像してみると、新しいものが好きな人やクルマのランニングコストを抑えたい人などさまざまなユーザー像が思い浮かぶが、おそらく環境意識の高い人もBEVに惹かれているはずだ。EX30はリサイクル素材を多用したり、製造工程でのCO2排出を低減したりすることで、ボルボ史上最もカーボンフットプリントの少ないクルマになるという。

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  • インテリアは「集約化」を徹底。これにより素材の使用量を減らしながらシンプルかつクリーンな室内を実現している。運転席の目の前にはメーターがなく、車速などは中央の縦長タッチパネルで確認するタイプだ

ほかにも見どころの多いEX30だが、少し取材しただけでもこれだけ「売れそうな理由」が見つかるクルマなわけだから、年内2,000台の受注も夢ではないのではないかと思える。