俳優の吉沢亮が主演するフジテレビ系ドラマ『PICU 小児集中治療室』(毎週月曜21:00~)が、10日にスタートした。駆け出しの小児科医・志子田武四郎(吉沢)が先輩医師・植野元(安田顕)と共に、どんな子どもでも受け入れられるPICU(=小児専門の集中治療室)を作るため、そして、1秒でも早く搬送できる医療用ジェット機の運用を実現するために奔走する姿を描く作品だ。

吉沢が見せる迫真の演技に、SNSでは「しこちゃん先生の涙にもらい泣き」「目で語る表情が素晴らしい」など反響が集まったが、起用した側も「想像以上だった」という金城綾香プロデューサー。その魅力や印象に残るシーンを語ってもらった――。

(※以下に第1話のネタバレがあります)

  • 『PICU 小児集中治療室』に主演する吉沢亮 (C)フジテレビ

    『PICU 小児集中治療室』に主演する吉沢亮 (C)フジテレビ

■本人いわく「このドラマはお芝居しないようにするのが大事」

今作の発表の際、吉沢について、「眼差しは力強く、そして堪えるような繊細なお芝居は稀有なものだと思います」とコメントしていた金城P。実際に撮影に入り、それは想像以上だったという。

「思い描いていた以上に、すごく魅力的な主人公になってる感じがします。もっと弱い主人公になるかなと思っていたんですけど、ちょっとしたしぐさや細やかさで、生の“いま“を生きている人になっていく。例えば、台本に書いてないし、演出からも特に言ってないのに、先輩が話しているときに後で後輩として物を片付けているとか、誰かの発言にびっくりした表情を顔に出さないようにしようとするお芝居とか、全くカメラに映ってなくても、『志子田先生は毎回、びっくりしたり、勉強したり、怒られてシュンとしたりしてるんだな』というのを1秒たりとも切れずやっている感じするので、彼を追いかけていけば、このシーンがどんな場面なのかということが分かるんです」

また、「我々として『このシーンは子どもの病状の説明のため』と考えていたシーンも、志子田先生が子どもに向ける表情やしぐさで、『ここは志子田先生が自分にはできないことが多いけど、患者のケアだけは一生懸命やろうと思ってるんだ』いうことが伝わってきたりします」と、キャラクターの輪郭が浮かび上がってくる場面になった。

そうした芝居の作り方に驚き、クランクイン当初、本人に「めちゃくちゃいい志子田先生ですね」と声をかけると、「このドラマはお芝居しないようにするっていうのが大事かなと思っています」と回答したのだそう。

金城Pは「“はい、ここで患者を診る”とか、“ここで優しい顔をする”という形で芝居を決めるのではなく、志子田先生がそこにいたらどうするかということを軸に置いて、自然にやっていることが全てハマってるっていう感じがして、めちゃくちゃ素晴らしいなと思いました」と、改めてキャスティングに手応えを感じた。

■ドラマ制作人生で一番涙が出そうになったシーン

そんな吉沢の演技で、第1話から印象的だった場面を2つ挙げてもらった。1つは、後半で救急搬送されてきた女の子・鏡花の汗をぬぐうシーン。

「台本に『志子田、何もできず、鏡花の汗をぬぐう』と書いてあるんですが、台本を作っているときはもう少し慌てた感じになると思ったんです。そこで吉沢さんは、慌ててるけど子どもを安心させようと表情に出さないようにする、だけどやっぱり動揺を隠しきれない、それでも何とか隠そうとする…という志子田先生になっていて、私も泣きそうになって見ていました。あのシーンは、周りがみんなそれぞれの仕事をしてる一方で、自分はできることがないから汗をぬぐっているわけなんですけど、この主人公がすごく優しい人だというのが分かる場面でした」

  • 救急搬送されてきた女児の汗をぬぐう志子田(吉沢亮) (C)フジテレビ

もう1つは、鏡花が亡くなった後のミーティングで、「なんで何もなかったように、淡々と話せるんですか…? おかしくないですか、人が1人、死んじゃったんですよ…」と涙で訴えるシーン。

「泣きの芝居は、こちらとしても見せ場だと思って作っているので、実は難しいシーンだと思うんです。台本に『涙が止まらない』と書いてあるので、そこにいる全員がいいシーンになると分かってるから、それよりも輪をかけていいシーンになるということは、めったにないんです。それでも、私がドラマ制作に携わってきたこれまでの中で、一番涙が出そうになった場面で、あの芝居を同じ近くの空間で見られたのが、役得だと思ったくらいでした。ご本人に『今日、素晴らしかったですね』と言ったら、なぜか『いや、すいません』と言って帰っていったのですが、とても謙虚な方だなと思いました」

  • ミーティングで思いを述べる志子田 (C)フジテレビ

■いつの間にこんな見事な役作りを…

第1話からそこまでキャラクターを作り込んできたことから、相当準備をして臨んでいると想像するが、「吉沢さんは、現場ですごい台本を読み込んでるということもしないし、いろんな人と役について議論するタイプでもないので、そんなに準備されているようなところが見受けられないんです。最初にオファーさせていただいたとき、『こんなお話でこういうキャラクターにしたいんです』と打ち合わせすることがあったんですけど、こちらを質問攻めにされることもなく、『北海道っていいですよね』みたいなすごく柔らかい会話で終わって(笑)。いつの間にこんな見事な役作りをしてきたのか、聞いてみたいですね」と感服。

その上で、「皆さんご存じだと思いますが、吉沢亮さんは本当に素晴らしい役者さんなんだということを、今回の作品でいろんな方が再認識してくださるといいなと思います。日本はこんな抜群に素晴らしいお芝居をされるとんでもない20代の若手俳優さんを抱えて、未来は明るいなという思いがしています」と熱弁した。