• ソニーの最新完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」

ソニーは、プレミアムクラスのポータブルオーディオ「1000Xシリーズ」に加わる新しいラインナップとして、完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」を発表しました

2019年夏に登場した現行機種「WF-1000XM3」以来、2年ぶりに発売される“M4(マークフォー)”はどんな製品なのでしょうか。6月25日の発売を前にひと足早く実機を試し、サウンドやノイズキャンセリング(消音)性能のファーストインプレッションとともに製品の特徴を解説します。

ソニー初「LDAC」コーデック対応の完全ワイヤレス

WF-1000XM4は、1000Xシリーズの“第3世代”の完全ワイヤレスイヤホンです。同シリーズのワイヤレスヘッドホンとネックバンドタイプのワイヤレスイヤホンには“M2(マークツー)”がありますが、完全ワイヤレスには“M2”が存在せず、初代「WF-1000X」からひとつ飛ばしてWF-1000XM3、WF-1000XM4と登場したため、「M4なのに3代目」というナンバリングになっています。

  • WF-1000XM4。プラチナシルバー(左)とブラック(右)の2色展開

WF-1000XM4にはいくつかの注目すべきポイントがあります。一般的には「業界最高クラス」をうたうノイズキャンセリング(NC)機能の実力が、現行の“M3”や他社のイヤホンと比べてどれほどスゴいのか? という点に注目が集まるものと思います。そこは筆者も気になるところですが、まずは「ソニー初のLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン」が誕生したことにスポットを当てましょう。

LDACはソニーが開発した、ワイヤレス再生時もハイレゾ相当の高音質体験を実現するBluetoothオーディオのコーデック技術です。音楽プレーヤー(送り出し側のデバイス)と、ワイヤレスタイプのヘッドホン/イヤホン(受信側のデバイス)の両方がLDACコーデックに対応していれば、Bluetoothオーディオの標準コーデックであるSBCの約3倍のデータ量となる転送速度990kbpsで、最大96kHz/24bitのハイレゾコンテンツ(リニアPCM)を高音質なまま伝送できます。

  • WF-1000XM4は、スマートフォンやポータブルオーディオプレーヤーとLDACコーデックを用いたワイヤレス接続に対応し、高音質なハイレゾ楽曲のワイヤレス再生ができる。スマホ画面の型番の上に見えるLDACロゴに注目

1000Xシリーズの兄弟機であるヘッドホン(WH-1000XM4)やネックバンド型ワイヤレスイヤホン(WI-1000XM2)は、既にLDAC対応を実現しています。しかし左右独立型の完全ワイヤレススタイルでLDACに対応するためには、いくつか乗り越えるべき「壁」がありました。ソニーの開発者は今回、以下の2点を達成したことでLDAC対応を実現したと説明しています。

ひとつは、独自開発の「V1チップ」を搭載したことで、SBCの約3倍のデータ量をワイヤレスでも安定して送り出せるようになったこと。V1チップはノイズキャンセリングからBluetoothオーディオ信号の制御まで幅広くこなす統合型プロセッサー(SoC)で、V1チップを含むさまざまなチップも性能がアップ。スマホとイヤホンの間のオーディオ信号の伝送が安定したうえに、左右の信号同期性能(※)も従来のWF-1000XM3から大きく向上しています。

そしてふたつめは、V1チップのパワーマネージメント(省電力)性能がとても高く、他のコーデック使用時よりも消費電力が大きくなるLDACで音楽を聴き続けても、昨今のワイヤレスイヤホンとして十分なスタミナを確保できたことです。

なお、WF-1000XM4は「DSEE Extreme」という、高音質化に関わるもうひとつの技術を搭載しています。LDACが「元がハイレゾ」のコンテンツを高音質なままワイヤレスで送り届けられる技術なのに対して、DSEE Extremeは音楽ストリーミングサービスやダウンロード購入したMP3などの圧縮音源も、機械学習をベースとした技術でアップスケーリングし、ハイレゾに迫る良い音でより手軽に楽しめるようにするもの、という違いがあります。

※編注:WF-1000XM4は日本オーディオ協会がライセンスしている「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴを取得している。同協会ではロゴ使用にかかる技術要件のひとつとして、左右が独立したイヤホンの間の信号のズレ(位相差)を±50マイクロ秒以内に収めることを求めている。

WF-1000XM4のサウンドを聴く

今回は、ソニーのAndroidスマートフォン「Xperia 1」とLDACで接続したWF-1000XM4のサウンドを試聴する機会を得ました。ここからは、筆者のファーストインプレッションをお伝えします。

ZARDのアルバム「ZARD Forever Best ~25th Anniversary~」から『負けないで』(FLAC 96kHz/24bit)を再生してみると、WF-1000XM4は突き上げてくるようなタフで伸びやかな低音に強烈なインパクトが感じられます。ボーカルやリードギターのメロディにもバイタリティが満ちていて、スムーズに立ち上がる高音域はきめ細かく濃厚。音楽の一体感を感じさせる情報量の豊かさが、LDACによるワイヤレス再生の醍醐味であることをあらためて実感しました。

  • サウンドの密度が驚くほどに濃厚だった! WF-1000XM4によるLDAC再生を体験

現行のWF-1000XM3はLDACに対応していないため、単純な比較は難しいですが、サウンドの傾向がクールな印象のWF-1000XM3に対して、WF-1000XM4はウォームで熱がこもっています。クリーンで煌びやかな中高音域を特徴とするWF-1000XM3と比べて、WF-1000XM4は低音がよりスムーズにつながり、音のバランスがとても良くなりました。NCから外音取り込みにモードを切り換えても音の聞こえ方が崩れません。これもWF-1000XM4の魅力だと思います。