2030年までに電気自動車(EV)専業メーカーになると宣言したボルボ。EVはオンラインのみで販売するとの方針を掲げているので、将来的にボルボ車はネットでしか買えなくなる。そうすると、販売店はどうなってしまうのか。何が変わるのか。日本法人で聞いてきた。

  • ボルボの新型電気自動車「C40」

    ボルボ初のEV専用車種となる「C40」。日本では2021年秋に発売の予定だが、販売方法はオンラインのみだ。今回は「C40」の内覧会でボルボ スタジオ 青山を訪問し、ボルボ・カー・ジャパンに話を聞いてきた

疑心暗鬼のネゴが負担?

まず、なぜオンライン化するのか。その背景には、クルマの買い方に関する消費者の意識の変化があるという。ボルボ広報によれば、近年は「(クルマの商談における)ネゴシエーションが面倒」と考える商品者が増えているとのこと。他人より大いに得をしたいとは思わなくても、他人より損はしたくないと考える消費者が増えているそうだ。それであれば、何台もボルボを乗り継いできたファンでも、初めてボルボに乗るニューカマーでも、同じクルマで同じ仕様ならワンプライスという明確な価格設定を行いたい。そんな考えで、販売のオンライン化に踏み込んだのだという。

ただ、ネット販売となれば、購入者はボルボ(自動車メーカー)にクルマを注文することになるので、その間に入るディーラーや販売店は不要になってしまうのではないだろうか。

  • ボルボの新型電気自動車「C40」

    ネット販売が主流になれば販売店はどうなるのか

日本におけるオンライン販売と販売店網の今後についてはこれから詳細を詰めるそうだが、グローバルの方向性でいくと、ボルボのネットワーク自体はなくならないものの、各店舗の役割は変化していきそうな情勢だという。イメージとしては、クルマを展示し、試乗などにも対応するフルサービスのハブ拠点が主要都市にあって、あとの店舗はショール―ムを持たず、クルマのメンテナンスや修理などを提供する拠点に変わっていくような感じだ。

オンライン化にはメリットとデメリットがある。まずメリットとして、販売店には在庫リスクがなくなる。在庫を抱えなくて済むことになれば、店舗としては資金繰りから見てもプラスだし、新車をたくさん仕入れたはいいものの、売れなくて困るという事態に陥らなくても済む。もうひとつ、販売店にとっては今、優秀なセールスを雇い入れるのが人材難で難しいそうなのだが、ショールームを持つ店舗を集約できれば、それも解消しそうだ。

デメリットとしては、それこそ新車を仕入れて売るという売り上げが立たなくなってしまうので、メンテナンスや修理などで最終的な収益を確保する必要が出てくる。ただ、そもそもの話として、販売店にとって新車販売は「水物」のような側面があり、固定費はメンテナンスや修理で稼ぎ出すのが基本だとも聞くので、新車販売にかけていたコストを削減しつつ、メンテなどで収益を出していければ問題がないのかもしれない。それに、ショールームを持たない店舗が増えたとしても、顧客との長い付き合いの中で新車購入の相談に乗ったり、オンライン販売につなげたりすることはできるはずだから、仕事を生み出していくこともできるはずだ。

ボルボ広報は「(オンライン化で販売店が不要になるかというと)その逆。クルマは乗り始めてからもメンテナンスや修理などが必要な商品なので、絶対に店舗は必要です。オンラインとオフラインのバランスをどう取っていくかに重きを置いています」と話していた。