林遣都が1人3役を演じて話題となったフジテレビ系スペシャルドラマ『世界は3で出来ている』(6月11日放送)が、7月の同局番組審議会の議題にあげられ、専門家の委員から称賛が相次いだ。11日に放送された『週刊フジテレビ批評』(毎週土曜5:30~)で、その模様が紹介された。

林遣都

3密を避けるため、リモートによる打ち合わせと最小限のスタッフ・出演者で撮影を行い、“ソーシャルディスタンスドラマ”と銘打った同作。林演じる三つ子の、アフターコロナ、ウィズコロナの今を切り取ったリアルな物語で、「緊急事態宣言解除後に再会した3人の姿を通じて、ほんの一瞬でも生きることの楽しさ、おもしろさ、光を感じていただければ」という思いで企画された。

脚本を朝ドラ『スカーレット』の水橋文美江氏、演出・プロデュースを今年の正月に放送されたスペシャルドラマ『教場』の中江功氏が担当。同局の動画配信サービス・FODで、見逃し配信されている。

テレビドラマを研究する早稲田大学の岡室美奈子教授は「脚本・演出・編集・演技すべてにおいて、素晴らしかったというふうに思っております。ゲリラ的に面白いものを作るというのは、かつてのフジテレビが最も得意としていたところだと思います。そういう精神がまた見えたということが、本当に私はうれしかったです」とコメント。

脚本家の井上由美子氏は「NHKをはじめとしてコロナ禍をテーマに何本ものドラマが制作されてきました。表面的な企画の特殊性に引きずられず、林遣都くんの演技力を楽しむことができました。普通のドラマとしていかに面白く、かつ深いドラマを作るかに力を注いでいた点で、他より一歩抜きん出ていたのかなと思います」と評価した。

また、ノンフィクションライターの最相葉月氏は「ショートショートで知られる作家の星新一のことを思い出しました。星新一は作品を書くにあたって自らにいくつかの制約を課していました。その星が言っていたのは、制約があるほうが想像力を発揮させられるのだということだったんですね。お互いに向き合って話ができない、距離を置かなければならないといった制約は、想像力を自在に発揮する格好のチャンスでもあったのかなと思います」と分析。

放送作家・脚本家の小山薫堂氏は「面白いと思いましたし、新しいと思ったんですが、それ以上に人ってこんなことができるんだという勇気をもらった気がします。社会に与えたその勇気こそが、このドラマの最大の価値じゃないかなと」と解釈した。

そして、日本科学未来館の毛利衛館長は「珍しく(委員の)ほとんど全員がポジティブにこれをとらえたのは、こういうこともあるんだとすごくうれしく思いました」と喜んでいた。