コロナ禍で、リモート制作のショートムービーや演劇、ドラマが次々に生み出される中、フジテレビが「ソーシャルディスタンスドラマ」と銘打った作品に挑戦した。自宅からのリモートではなく、スタジオで撮影するが、密を避けるため、出演者・スタッフともに最小限の人数という制約の中で制作する新たな試みだ。

そんな今作『世界は3で出来ている』(11日23:00~23:40)を企画し、プロデュース・演出を手がけるフジテレビ ゼネラルディレクターの中江功氏にインタビュー。制作の裏側や1人3役に挑んだ林遣都の魅力、そして今回の取り組みで得たものとは――。

  • 『世界は3で出来ている』に出演する林遣都 (C)フジテレビ

    『世界は3で出来ている』に出演する林遣都 (C)フジテレビ

■編成がすぐに「やりましょう!」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言中、『カメラを止めるな!』チームや行定勲監督らがショートムービーを、三谷幸喜氏が『12人の優しい日本人』の読み合わせを配信し、NHKも新作ドラマを放送するなど、映画・演劇・ドラマの完全リモート制作による作品が話題を集めた。

そんな中で、「私が入社したときのフジテレビって、何でも一番に手を出していた記憶があり、そのDNAが“こういう状況で何もしないまま(緊急事態宣言の)解除を迎えるわけにはいかない”と、遅ればせながら何かできないかと考えました」という中江氏(以下同)。

ゴールデンウィークが明けてすぐ、編成の担当者に口頭で企画のイメージを伝えると、「すぐに『やりましょう!』となったんです。それから企画書を作って動き出すまで、1週間かからなかったですね」と、今回のプロジェクトが始動した。

一卵性の三つ子という設定を1人3役で演じる林遣都へのオファーでは「我々がやるのは、パソコンの画面を通してのリモートドラマではなく、出演者1人の普通のドラマなんです」と今回の意義を力説。その後、すぐに「やりたい!」と返事があり、出演が快諾された。

■1日に100回以上の衣装替えも

こうしてトントン拍子で準備が進み、異例の早さで撮影がスタート。通常の撮影と同じく、リハーサルから本番という流れで撮っていくが、役者は林1人のみであるため、3人いるシーンは事前に録音した自分の声と林が会話していく。これを3人分やるのだ。

また、編集で合成するため、1人の役ごとに撮影するのではなく、シーンごとに順を追って撮影。「勇人(次男)を撮ったら、そのままの画で泰斗(長男)を撮って、それが終わったら三雄(三男)を撮って…という繰り返しです。だから林さんは衣装替えが本当に大変だったと思います。1日100回以上着替えていましたからね」

こうして手間をかけて撮影した結果、「最初は1日くらいで撮影できるかなと思っていたんですけれど、当然そんなのは無理で、結局3日間かかりました」とのこと。この撮影が終わった後も、合成の編集にひと苦労だ。

「こういう企画を思いつきでやったらいけないなと、あらためて思いました(笑)」と苦笑いするが、その勢いがあったからこそ実現した取り組み。編集を進めると、「初めての試みでしたけど、面白いですね。やっぱり、林遣都さんがすごいです。本当に3人の役者がやっているようにしか見えなくて、これは彼の力でしかないですね」と絶賛する。