ライター、エッセイストの小林久乃です。冒頭からタイトルを否定するようなことを言ってしまいますが、個人的には身長の低い男性が好きなのです。自分の身長が160cmなので、それに対して1㎝でも高ければいいし、極端に言えば低くても全然OK。そんな趣味なので、最近の男性タレントさんたちを見ていて思うのは

「体格がいいな~~」

ということ。人気がある人たちをふっと思い出しても、身長は180cm前後のモデル並み。仮に低くてもいわゆる『細マッチョ』はマスト。なぜ、みんなそんなに体格が良くなったのか? 推論を立ててみました。

ただスリムなだけでは、人気獲得は苦戦……

清原翔

1980年代に生まれたタレントさんたちを、嵐世代としよう。当時は165㎝前後の人たちが珍しくなかった。二宮和也さんや(まだ現役タレントだった)滝沢秀明さんの、共演女優たちとの身長差。あの雰囲気は非常に愛しいものだった。

それが令和になった2020年。先月CDデビューを飾ったSixTONESさん、Snow Manさん、清原翔さん、金子大地さんなど最近の若手の人たちは身長が高い。総務省が発表した日本人男性20歳の平均身長が、172.3㎝もあるのがうなずける。

これは思うに、彼らの親世代である1970年代生まれが運動部花形世代であったことがひとつの原因ではないだろうか。ちなみに私もその世代生まれなのだけど、体育授業はもちろん、運動部に入部することが美徳とされているような中高時代を過ごした。運痴である私は、本当に辛かった。でもおかげで団塊ジュニアたちは現代っ子に比べると、だいぶ体力がついているとどこかで読んだ。自分の体力を振り返っても、確かにそうかもしれないとうなずく。そしてその血を脈々と受けて育った、平成ベビーたちは、スクスクと大きめに育っているのではないかと思う。元スポーツ選手の子どもが、運動神経や体格に恵まれているパターンに現象が似ているではないか。そうか、だから最近の男性は好体格なのか。 振り返ると、これまでのタレントさんに求められるものは、男女ともに小顔、スリムであることが最低条件だった。ここに"高身長"のいい男条件がバブル期以来、再び返り咲いて加わっている。そして理由はこれだけで終わることはない。

筋トレブームの余波が芸能界へまだまだ続く

竹内涼真

現在放送中の『テセウスの船』(TBS系)の視聴中。何気ないシーンで竹内涼真さんの着ているロンTから、胸筋がうっすらと浮き上がっていることを発見した。彼はプロサッカー選手を志すほどのスポーツマンだったから、理由も分かる。

でも上記に挙げたタレントさんたち、割と竹内さんクラス、いやそれ以上に筋肉もついた体型である。特にSnow Manさんは昨年、音楽番組で『腹筋太鼓』という技を披露するほどの筋肉集団。まず『腹筋太鼓』という、一度聞いたら忘れることのないネーミングもすごい。ここだけで脳内が迷子になる。さらに本番では上半身を45度くらいに反った状態で、回転しながら太鼓を叩いているではないか。もう中国雑技団も彼らにはかなわない、そう唖然としながら放送を見ていた記憶がある。体も顔も良くて、身長もあったら無敵以外の何者でもない。ちなみにデビュー曲『D.D.』のサビ、アイドルっぽくて好きだ。

元来の骨格を無駄にすることなく、さらに自分を追い込んで彫刻するように筋肉で体をデザインしていく、現代男性タレントたち。撮影現場でスタイリストさんが、

「男性タレントのリース先が、スポーツ選手と同じようなブランドになってきた。Tシャツもビッグサイズが主流だしね」

と話していたことを思い出す。蓄えていく脂肪が男性の勲章だった時代の終わりを感じた。芸能人だからといって浮かれて、飲んで、遊んでいては置いていかれる。筋トレも彼らにとっては、仕事の一環になったのだろう。平成ベビーたちの意識は、港区女子以上に高くなりつつある。

なんだか笑いも少ない原稿で恐縮だけど、ここ最近の現場で私が感じたことをまとめてみた。さり気なく、自分好みの体型がどんどん減っている悲しさの訴えも含ませて、この辺で推論終了。

小林久乃

ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。地元タウン誌から始まり、女性誌、情報誌の編集部員を経てフリーランスへ。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事も持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には10万部を超えるベストセラーも。最新刊は『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。