AMDはNext Horizon Gamingイベントを開催し、ここでZen 2ベースのRyzen 3000シリーズとRadeon RX 5700シリーズを正式に発表した。一部製品を除くと、7月7日に一斉に発売となっている。ぞれぞれのDeep Dive(深掘り)についてはまた後程お届けするとして、まずは全体像を紹介したいと思う。

Ryzen 3000シリーズ

基本的な構成は、Zen世代からそれほど大きく変わっていないが、「MicroOp Cacheが倍増」「AGUが3つに増強」「FPUがすべて256bit幅に増強」といったあたりが変更点となる(Photo01)。

  • Photo01:L3については後述

分岐予測に関しては、従来のPerceptronベースのものに加えて、Pageベースのものを新たに実装。またBTBそのものも大幅に増強された(Photo02)。FPUは4つのFPUユニットをすべて256bit幅に増やして、AVX256への対応を行っている(Photo03)。ALUそのものは、AGUが1個増やされた程度だが、In-flightできる命令数を増強している(Photo04)。

  • Photo02:TAGEはPerceptronと全く異なる分岐予測のメカニズムであり、これを併用することでより分岐予測の効率を高めたとのこと

  • Photo03:これにあわせてLoad/Storeも256bit幅に増強された

  • Photo04:AGUそのものはLoad/Storeどちらも可能なものが3つという、いわば対称型の実装で、このあたりはIntelのCoreと異なるところ

Load/Storユニットは、帯域の強化と合わせてDTLBの強化も行われている(Photo05)。またキャッシュ周りについては、新たにいくつかの新命令が追加された(Photo06)。

  • Photo05:ちなみにL3へのPrefetchは? と確認したところその機能はないとのこと。理由はL3が(L2との)Victim Cacheとして動作するから、という話であった。確かにこれでPrefetchを掛けると、ややこしいことになる

  • Photo06:プラットフォームとしてのサポートはまだ先だが、アーキテクチャ的にはNVDIMMへの対応がこんな形で始まっている

ところでZen2世代では、Chiplet Architectureを取った。CPU Chiplet(CCD)とI/O Chiplet(cIOD)間の接続は、Infinity Fabricを利用しているが、この接続はCCDあたり32Bytes/cycleとなっている。

このCycleは、プロセッサの速度ではなく、Infinity Fabricの速度(fclk)をベースとしている。これはMemoryとの速度を考えれば当然であるのだが、結果としてCCD間のL3における転送速度は、メモリと同等ということになり、それほど高速とは言えない。おそらくはこれが理由でその頻度を減らすためにL3の容量を倍増した、ということだと思う。

  • Photo07:ちなみにInifinity FabricとMemory、Memoy Controllerはいずれも異なるClock Sourceを利用する。これはOverclock動作にいろいろと関係してくるが、このあたりはDeep Diveの方で

ちなみにダイサイズそのものはまだ公開されていないのだが、CCXあたりのサイズは31.3平方mmとされる(Photo08)。Computexで撮影したものから推定(Photo09)すると以下のようになる。

  • パッケージ :41.0mm×41.0mm
  • CCD :10.7mm×7.4mm(79.2平方mm)
  • CIoD :14.2mm×9.9mm(140.6平方mm)
  • Photo08:性能がコアの数に応じてスケーラブルに伸びる、とする

  • Photo09:左の台湾の10元硬貨(直径26mm)を基準に判断した

さて、速報の通り、Next Horizon Gamingイベントでは16コアのRyzen 9 3950Xも発表された。749ドルという価格はなかなか面白い。

筆者の感覚ではあるが、Ryzen 9 3950Xの749ドルという価格はそれほど高価ではない。というのは、ほぼRyzen 7 3800Xの倍の構成で、値段が2倍弱だから。これはまぁリーズナブルと思う。

  • Photo10:Ryzen 9 3950Xを示すLisa Su CEO(の左手)

逆に言えば、超絶バーゲンプライスなのがRyzen 9 3900Xな気がする。Ryzen 7 3800Xからたった100ドル増しで購入できて、性能の上げ幅もずっと高いからだ。AMDがこのあたりのセグメントに力点を置いているのがよく分かる。

ついでに言えば、749ドルというのはThreadripperより少し安め、というあたりも実にリーズナブルだ。逆にこれからThreadripperが投入されるのであれば、もう少し上の価格帯で供給されるだろう。

ちなみにRyzen 9 3950Xはおそらく選別品を利用しての構成になるので、ある程度の数を確保するために、出荷が9月とほかの製品より遅れる。これは無理もない。

余談をもう1つ。Ryzen 3000シリーズは、定格でDDR4-3200までのサポートとなる。ではメモリオーバークロックはどこまでいけるか? というと、DDR4-4200は軽々、DDR4-5133までは行ける(ただしそれなりに設定が必要)とのこと。

またDDR4-3733を超える場合、Infinity Fabricとの速度の比率を2:1にする必要があるとか。で、AMDのおすすめはDDR4-3600 CL16だそうである(Photo11)。あと、今回のRyzen 7/Ryzen 9に関してはすべてWraith Prismが付属するという話であった(Photo12,13)。

  • Photo11:Deep Diveセッションの資料から。なかなか意欲的な話である

  • Photo12:TDP 105Wでも大丈夫? と確認したところ問題ないとのこと

  • Photo13:Ryzen 9のパッケージ。Wraith Prismが入るためか、結構大きい

ついでに、どさくさ紛れ(?)であるが、ローエンドにRyzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gも今回追加された(Photo14)。ただこちらは引き続き12nmプロセスの製品である。

  • Photo14:7nmのAPUはまだ先になる