5月27日にAMDの基調講演レポートをお届けしたが、明らかに情報が不足しているというか、いろいろ漏れもあるので、このFollow upも兼ねて、もう少し突っ込んだ話をお届けしたい(Photo01,02)。

  • 左はNaviのパッケージ、右がRyzen 9のパッケージ

    Photo01:左はNaviのパッケージ、右がRyzen 9のパッケージである。ちなみにダイサイズを測定できる写真も撮影済だが、ちょっと出先で処理ができないので、これは帰国してから

  • Photo02:裏面。さすがにNaviはBGAの数が半端ない

第3世代Ryzenについて - 16コアはあるの?

基調講演ではRyzen 7 3700X/3800XとRyzen 9 3900Xの3つのSKUを紹介したあが、実際にはこれらに加えて、Ryzen 5も7月7日に発売となる。現時点で公開されている情報を表1にまとめた。

製品名 コア数 スレッド数 Base Clock Boost Clock キャッシュ TDP 価格
Ryzen 9 3900X 12 24 3.8GHz 4.6GHz 70MB 105W 499ドル
Ryzen 7 3800X 8 16 3.9GHz 4.5GHz 36MB 105W 399ドル
Ryzen 7 3700X 8 16 3.6GHz 4.4GHz 36MB 65W 329ドル
Ryzen 5 3600X 6 12 3.8GHz 4.4GHz 35MB 95W 249ドル
Ryzen 5 3600 6 12 3.6GHz 4.2GHz 35MB 65W 199ドル

さて、いろいろとAMDの関係者(複数)に確認したのだが、現時点では情報統制が掛かりまくっているようで、何を聞いても「Stay Tuned」と返ってきて、じゃあ何のために発表会を開いたんだかという状態ではあるのだが、いくつか有益な情報も入手できた。

発表されたRyzen 9は6コア+6コアの構成だが、例えば4コア+8コアのような非対称構成はとらないとのこと。ただし、「んじゃ将来は4コア+4コアとか8コア+8コアがあるのか?」は「Stay Tuned」

また、CCXは引き続き4コアベースとなる。これを拡張する意味はないという。そのため、CPU ChipletはCCX×2+L2(32MB)+Infinity Fabric I/Fという構成になる。発表されている以外の内部構造、例えばDecode部は4命令/cycleか、5命令以上に拡張しているか、などはすべて「Stay Tuned」

今回、Threadripperに関する言及はなかったが、第3世代のThreadripperについて話を振ると「Stay Tuned」。ただし、AMDは引き続きHEDT(High End Desktop)のマーケットに取り組んでいくし、ここで既存のユーザーを見捨てたりはしないとのこと。

TDPは現状、65W/95W/105Wの3つのレンジだが、より低い45Wなどがあり得るか、あるいはConfigurable TDPが有効かについては「Stay Tuned」

製品ラインナップについて、Ryzen 5/7/9はあるが、Ryzen 3のSKUやAPUの構成を聞いても「Stay Tuned」

このほか、熱伝導物質(つまりダイとヒートスプレッダの間を埋めるもの)は引き続きハンダと明言された。これはRyzen 9だけでなくすべてのSKUで共通だ。

ちなみに「Ryzen 9 3900Xが499ドルでRyzen 7 3800Xが399ドルってことは、CPU Chipletが1個100ドルということでいいのか?」と聞いたところ、「いやそういう問題じゃなくて(笑)。もちろんマーケティング的に価格を決めてるのであって、そこまで単純ではない」という返事であった。

EPYCについて - Zen2ベースの「Rome」

こちらもあまり詳細は明らかになっていないのだが、Zen2コアを利用したRome CPUは、既存のNaplesプラットフォームでそのまま利用は可能である。ただ、可能ではあるのだが、PCI Express Gen4やCCIXなどはサポートされない。こうしたものを使いたければ、Romeプラットフォームに刷新する必要があるという。これはまぁ当然だろう。

このRomeプラットフォームであるが、予想通りメモリチャネル数は増えるようだ。どこまで、というのは明らかにされなかったが「もっと沢山のメモリを使える」(Forrest Norrod氏)そうだ。

ちなみに、同社がCrayとともに米オークリッジ国立研究所に導入を予定するスーパーコンピュータシステム「Frontier」に絡む話であるが、AMDがFrontierに先駆け、2020年からローレンスバークレイ国立研究所に納入するNERSC-9ことPerlmutterというシステムは、AMDのMilan CPUとNVIDIAのVolta-Next GPUを組み合わせたシステムになる。

MilanはRomeの次となるZen3世代のプロセッサだ。ではFrontierに採用されるCustom EPYCはこのZen3世代がベースなのか、それともZen4なのかを確認したところ「Zen3ではない」という返事であった。

またCustom CPUのポリシーについて「われわれはIntelとは異なる」という返事が返ってきたのも面白かった。IntelのCustom CPUとは、シリコンそのものは標準品だが、動作周波数とか消費電力、Featureとかを細かくカスタムできる特注品という扱いである。

ところがAMDは、全く異なる製品(PS4とかXBOX Oneなどがその代表例だ)を作ることをカスタムとしており、EPYCでも原則はそうしたものを指すそうだ。じゃあ、Custom EPYCは具体的にどうなる? という話はもちろん「Stay Tuned」なので説明はなかったが、なかなか興味深い話である。