●作品の舞台は?

細田 舞台は横浜市です。それも、みなとみらいのような中心地ではなく、磯子区とか金沢区のあたりの海側。家族にとって重要なことが過去に起きた、そういった理由があって、舞台に選びました。

●これまでも家族をテーマにした作品を描いていたが、『未来のミライ』では家族をどこまで描ききれたか?

細田 作り続けているということは描けていないということで(笑)。家族というテーマは、ひとつの作品で終わるモチーフではないなと思っています。『サマーウォーズ』は親戚がアクション映画の主人公だったら、『おおかみこどもの雨と雪』は子育てをするお母さんだったら、『バケモノの子』は出てくるキャラクターがみんな父親で、血がつながっていなくてもみんな父親になれるんじゃないか、といった物語。

『未来のミライ』はきょうだいを描いています。僕は一人っ子なので、きょうだいの感覚はわからないんですが、僕の息子に妹が生まれた瞬間、母親の愛をめぐる争奪戦です。愛をめぐる狂おしいほどのやりとり(笑)。人間って愛なしでは生きられないんだなと、愛を奪われた人間はこんなひどいことになるんだなと思ったんです。ここで愛を失ったとしたら、どう考えて、どういう答えを見つけるんだろう、と考えました。

家族を描くって今日的だし、家族そのものが時代とともに変化している。だからこそ描いていくし、興味が尽きないモチーフだなと思います。

●海外展開について

齋藤 『サマーウォーズ』ではドイツのベルリン国際映画祭に呼んでいただいたり、『バケモノの子』ではスペインのサンセバスチャン国際映画祭でははじめてアニメ映画がノミネートされたり、細田監督が歴史ある映画祭で評価されていることは、ほんとうに光栄なことだと思います。

最初は配給する国も多くはなかったんですけど、徐々に公開できるようになっていきました。よくTV放送や配信する国も含めて、100カ国、200カ国と数字を積み上げることが多いですけど、細田監督は映画監督なので、映画をきちんと公開してくれることが前提だと思っています。それくらい映画というものにこだわっています。『未来のミライ』は、現在57カ国から上映のオファーを頂いていますが、これからも増えていくと思います。

●『未来のミライ』は現在、どういったスケジュールで進行している?

細田 上映時間が約100分なので、これまでの作品よりもちょっと短いんです。なので、絵コンテもはやくできましたね。いまは作画を進めながら、声の演技をしてくださる方のオーディションを続けています。

齋藤 作品の完成はギリギリを目指しています。今回はもしかしたら上映時間が100分を切るかもしれません。だからといって、すぐに作品が完成するわけではないんです。尺が少ない分、予算も少ないと思うかもしれませんけど、そうでもありません。全スタッフが全力で作っていて、より純度が高い、表現したいものが凝縮されている作品になっています。一番いい形で作るのがスタジオ地図の使命ですし、細田監督もより高みを目指してにじり寄って作っていくと思います。あとは続報をお待ち下さい。

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