70年代に放送された伝説的特撮テレビシリーズを最新の映像技術で完全リブートした特撮ヒーロー映画『ブレイブストーム』が、11月10日より全国ロードショー公開されている。本作は1971年の『シルバー仮面』と1973年の『スーパーロボット レッドバロン』という宣弘社が制作した2つのテレビシリーズから、キャラクターの名称や基本的な設定のみ継承しつつ、大胆なまでのアレンジを加えてまったく新しいヒーロー映画の創造に挑戦している。かつてシルバー仮面やレッドバロンを愛したファンだけでなく、海外で作られたアメコミヒーローや巨大ロボットが活躍する大作SF映画に親しんでいる若いファン層にも十分にアピールする、良質のエンターテインメント作品がここに誕生した。

本作の公開を記念し、11月12日にTOHOシネマズ上野にて主要スタッフとプロデューサー、脚本、監督などを務めた岡部淳也氏が舞台あいさつを行い、駆けつけた多くの観客に映画の見どころを熱く語り合った。

後列左から、春日光一、タモト清嵐、松崎悠希、岡部淳也監督、前列左から、壇蜜、渡部秀、大東駿介、山本千尋、吉沢悠

『ブレイブストーム』のあらすじ

『ブレイブストーム』の物語は、すでに地球がキルギス星人によって侵略され、地球人の大半が滅びてしまった未来世界から始まる。春日博士の遺児である春日兄妹は、恐ろしい侵略ロボット・ブラックバロンが完成する以前の時間に遡り、キルギス星人の侵略が阻止された"もうひとつの未来"を築く作戦を敢行。

長男・光一、長女・ひとみは次男・光二に強化服「シルバー」スーツを、三男・光三には人間に化けた宇宙人を見破るスキャングラスを、末っ子の次女はるかにはサイキック能力を授け、過去(=我々のいる現代)へと送り出した。光二、光三、はるかはロボット工学者・紅健一郎博士に接触し、巨大ロボット・レッドバロンの製造を依頼。そこで健一郎博士が出した条件とは、弟でボクサーの健を操縦者に選ぶことだった。

突然の出来事に戸惑い、激しく反発する健だったが、やがて地球の危機を救う使命を受け入れ、レッドバロンの操縦席に座ることになる。しかし、すでに地球ではキルギス星人の刺客・戦闘サイボーグ「ボーグ」の暗躍が始まっていた。はたしてシルバースーツを着た光二とレッドバロンを操縦する健はキルギス星人を倒し、地球の新たな未来を作り上げることができるのだろうか……?

大東駿介、過去の嫌なことも含めて今の自分

シルバースーツを装着し、キルギス星人、チグリス星人、ボーグと激しい戦いを行った春日光二役・大東駿介は「今まで演じたことのない役に挑戦しました」と、子どものころに憧れたヒーローを演じることができた喜びを語った。

映画にちなみ、「もしも過去に戻れるならどうする?」というMCからの問いには「過去に戻ることができて、嫌なことをやり直してしまったら、今の自分を作っている感情もなくなってしまうんじゃないか」と答えつつ、「強いて言うなら、小学3年生のとき、朝礼のときに漏らしまして(笑)。それが恥ずかしくて……」と意外なカミングアウトを行った。続けて「でも、そういう経験があったからこそ、今でも失敗した子どもたちに優しくできているのかもしれない」と、やはり過去をやり直すのではなく、失敗や恥ずかしいことも含めて今の自分なのだという前向きなコメントで周囲を感心させていた。

これまで多くの話題作に出演し、確かなキャリアを積んできた大東だが、初めて特撮ヒーローを演じるにあたっては「過去に戻ったり、凄い力を身に着けたりという部分を、自分の中でしっかりと考えてみようと心がけました」と、これまでの演技経験を踏まえて、リアリティのあるヒーローを演じたいと語っていた。

光二が"変身"する強化服シルバーについても「スーツにある『傷』というのは、光二がこれまでどんなに過酷な戦いをしてきたかの証なので、スーツを作ってくださったブラスト造型部のみなさんと一緒にこだわりぬいて、細かい部分から考えさせてもらいました」と、スーツに刻まれた傷ひとつにも強いこだわりを持ちながら作っていったことを明かした。

最後に、映画の見どころについて「岡部監督の頭の中のおもちゃ箱をひっくり返したような面白い作品。ただただ、楽しんでいただけたらうれしいです」と語り、さまざまな人たちに映画を観てほしいと語りかけた。

渡部秀、過去に戻れるなら壇蜜と同級生に!?

血気盛んなボクサーで、自分の腕を試すために地下格闘技場で戦うダーティな面を持ち合わせる紅健(くれない・けん)役の渡部秀は、「どんな過去に戻りたいか」という問いに対して、「実は壇蜜さんと同じ、秋田県出身なんです。もしも過去に戻れるとしたら、壇蜜さんと同級生になりたい! 一緒に登下校してみたい」と、10歳違いの壇蜜との学校生活を夢見るコメントで、周囲の笑顔を誘った。

現在、渡部は京都で製作しているドラマ『科捜研の女』にレギュラー出演中。撮影現場で聞く関西弁について渡部は「地元の方が何気なく関西弁を使っているのを聞いて、ああ、カッコいいなあなんて思っています。だから大東くんがふと『ホンマ?』とか言ったりすると、いいなあって(笑)」と、しみじみ大阪出身の大東をリスペクト。

映画の見どころについては「健と光二の関係性に注目してほしい。一見、完璧な光二とダメダメな健の2人が、共に戦っていく中で成長していくかを観てほしいです」と、2人のヒーローがどのように対立を経て絆を深めていくのかという、ドラマ部分に注目してほしいと語った。

もちろんアクションシーンについても「ボクサーの役なので、少し前から準備させていただいたんです。シルバースーツを着た光二と生身のボクサーである健が初めて出会って、戦うシーンも注目してほしい!」と、役作りのために激しいトレーニングをした成果ともいえる、光二との対立場面にも注目してほしいとアピールした。

山本千尋はシルバースーツに興味津々

春日兄妹の末っ子で、瞬間移動などのサイキック能力を備えるはるか役・山本千尋は「過去でダメだったこと、よかったこと、全部踏まえて今の自分になっていると思います」と、大東と同じく過去に戻ることをよしとしない考えを示したが、「一つありました。この作品の撮影中に戻って、シルバーのスーツを仮面だけでも被らせてもらったり、レッドバロンの操縦席に座りたかった!」と、撮影中には周囲に遠慮して言いだせなかった要求を披露。

すかさず大東から「シルバースーツは思った以上に怖いからね。前がぜんぜん見えないし、音も聞こえないし。最初は恐怖心との戦いだった」と、スーツとマスクを着用してのアクションの難しさを語った。ちなみに山本はこの舞台あいさつ終了後、念願の「シルバー」マスクを被ることができたという。

また、3歳から中国武術を始めたという山本の特技を生かし、映画でも剣を使った激しい立ち回りのシーンが登場する。その見事な身のこなし、剣さばきにはスタッフ、キャスト一同が目を見張ったという。山本は「少しではありますが、アクションをさせていただきました。岡部監督とお話をして、今回は中国カラーを抜いて刀でカッコよく決めようと。今回の映画は他の方々も撮影前から体づくりをしていたり、本気で臨んだ作品だと感じています。その本気がみなさんに伝われば」と、自分だけでなく他のキャスト陣も本気でアクションに取り組んでおり、迫力ある場面に仕上がっていることを強調した。

タモト清嵐、オーズに変身失敗!?

シルバースーツのメンテナンス、およびバージョンアップした「R2」スーツを開発するなど、春日兄妹の頭脳的存在として活躍した春日光三役・タモト清嵐は、あいさつの順番が来た瞬間「変身! セイヤッ!」と、隣の渡部が主演を務めた『仮面ライダーオーズ/000』の変身ポーズと決めゼリフを披露し、周囲を驚かせた。

タモトによれば「一回目の舞台あいさつのとき、大人しかったと言われたので……」という理由だったのだが、渡部からは「人の変身ポーズを雑にイジってきたな!」と厳しいツッコミ。観客にウケるどころか、突然すぎてドン引きされてしまったショックが大きく残ったタモトは、「過去に戻れるならいつ?」という問いに「いま早急に思うのは、この舞台あいさつを最初からやり直したいですね(笑)」と弱々しく語り、この自虐的なコメントによってようやく大きな笑いを誘うことができた。

春日光一は『宇宙刑事ギャバン』に憧れて…

崩壊しつつある世界で、弟、妹たちに地球の未来を託す春日ひとみを演じた壇蜜は、過去に戻れるならという質問に対して「1日だけ時間を戻してほしい。なぜなら某通販サイトの特別セールの日が今日なんですが、それを知らずに昨日、柔軟剤を購入してしまったんです。昨日、クリックしようとする自分に『ちょっと待て!』と声をかけたいです!」と、お得なお買い物のチャンスを逃したことをまばゆいばかりの笑顔で後悔する一面を見せた。

キルギス星人の手先となって光二(シルバー)と激戦を繰り広げた戦闘サイボーグ"ボーグ"を演じた松崎悠希は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』など海外の映画で活躍する国際俳優。映画の中ではスキンヘッドのコワモテキャラだったが、ステージでは髪も眉も伸びてマイルドな二枚目となっていた。「過去に戻れるなら?」という問いには「子どものころ、サンタさんのプレゼントがいつもお菓子だったんですね。あるとき、もうお菓子はやめてほしいってサンタさんに手紙を書いたんです。本当はスーパーファミコンがほしかったんですが、クリスマスの日に枕元にあったのは、羽毛布団でした。具体的に指定しておけばよかった!」と、サンタクロースの到来を信じる純粋な子ども時代を懐かしく回想していた。

ブラックバロンに対抗するスーパーロボット・レッドバロンを開発する紅健一郎博士を演じる吉沢悠は「海外の映画界で活躍されている松崎さんと共演して思ったのですが、僕も学生時代にもっと英語を勉強しておけばよかったかな」と、過去に戻って英語の勉強をやり直したいと発言。

しかし松崎から「でも、吉沢さん英語お上手なんですよ」と褒められ「いやいや~」と照れる一幕もあった。本格的な特撮映画に出演することについては「現場ではグリーンバックでの演技が多くて、自分たちもこれが完成作品ではどんな映像になっているか、楽しみにしていました。試写のとき、日本でこんな特撮映画ができるのか、と驚いたので、ご覧になるみなさんの反応も楽しみです」と、作品の出来にかなり満足している様子だった。

劇中人物と同じ芸名を持つ春日光一は、本作が映画初出演ながら見る者に強いインパクトを残す渋い存在感の持ち主。岡部監督いわく「40過ぎの大型新人」という春日は、「過去に戻ってやり直せるなら?」という質問を受け、「ケガの多い人生でしたので、子どものころに戻れたらあまり危険なことをしないようにしたいですかね。『宇宙刑事ギャバン』に憧れて、屋根の上から飛び降りて両手を骨折したこともありました」と、少年時代から活発で、何度も怪我を繰り返していたことを明かした。さらには「役者として演技するのが初めてということもあり、岡部監督が出番もセリフもあまりくれなかったのが気になりますので、過去に戻ってそこをやり直したい」と、本作の出番が短かった不満を岡部監督にチラリと漏らす場面も見られた。

本作では監督・プロデュース・編集・脚本と一人何役もこなした岡部淳也氏は、「もう30年以上こういう仕事をしているのですが、技術的なことも含めて『こういう風に作ったらいいんじゃないか』という思いがあって、この映画ですべてそれを出すことができた」と、映像業界での長いキャリアの中でやりたかったことをすべてぶつけた映画だと明かした。さらに「これが当たってくれれば、こういった形で次も映画が作れると思っています。今日観て面白かったら、いろいろなところで宣伝をしていだたければ」と、『ブレイブストーム』が多くの人々に楽しんでもらえることを願いつつ、次の作品につながるよう応援を熱く呼びかけていた。