定番商品あってこそのビジネスモデル

発表会の冒頭で中村社長は、モスバーガー事業の原点は「おいしさ」であると明言。「定番商品をもっとおいしく」し、「抜群なおいしさを追求」していくと言葉を続けた。

モスフードサービスの中村社長

キャンペーンに関する考え方としては、これまでは期間限定商品で来店の動機付けを狙っていたが、これからは定番商品を土台とした来店のきっかけを豊富に用意し、顧客の認知や理解促進につなげていく。これはつまり、「季節限定の商品があるから来店する」という観点からの顧客訴求ではなく、定番商品を含むあらゆるきっかけを顧客に提供し、「面」としての訴求を図るということだ。

一般的に、季節限定商品には「点」として販売額を上昇させる効果があると考えられている。「点」というのは、売上の上昇効果が限定的だからだ。販売額を維持しようと季節限定商品を出し続ければ、見た目の販売額を前年比で上昇させることは可能だ。しかし、定番商品の販売額が低減しているのであれば、全体として見た場合の商品力は低下していると判断できる。

季節商品に特化しては「点」の顧客訴求になってしまう

モスの戦略にブレは感じなかった

モスバーガーの戦略は揺るがない、という決意を感じたのもこの会見であった。同業他社が単価アップや集客増を目指した期間限定商品の乱発に奔走する中で、モスバーガーの戦略はブレないことを中村社長は明言した。「定番商品の質を上げること、そして価格は変えない」。つまり、相対的に商品の価値は上がっているという説明だった。

原材料や人件費などのコストは上昇傾向にある。また、今回の発表にもあったが、国産小麦粉の使用はコスト増の要因となる。そのコストは誰が負担するのだろうか。質疑応答の中で中村社長は、「コストはサプライヤー側で負担する。店舗やFC(フランチャイズ)オーナーには転嫁しない」と語った。つまり、全社数値としてのコスト増ではあるが、店舗には負担させない、ということである。FCオーナーにとっては朗報に違いない。