それではSINEのサウンドを聴いてみよう。今回リファレンスの環境にはiPad Pro 9.7インチと、ラディウスのプレーヤーアプリ「NePLAYER」を用意した。NePLAYERでは接続したDACのスペックがアプリの画面上でわかるようになっている。CIPHER LightningケーブルのDACは確かに48kHz/24bitの音声信号までネイティブで受けることができるようだ。48kHzを超えるリニアPCM音源やDSD音源はすべて48kHzのリニアPCMに変換されて再生された。

iPadのLightning端子に接続する

トロンハイム・ソロイスツ楽団とニーダロス大聖堂少女合唱団による『MAGNIFICAT/Et misericordia』(キム・アンドレ・アルネセン作曲)では、声の輪郭がとてもキリッとしていて精悍な印象を受ける。コーラスのハーモニーが静寂な空気の中へ滑らかに溶けていく。平面駆動型ヘッドホンの真骨頂だ。空間表現は水平方向へワイドに広がる。低音のアタックは鮮やかだが、沈み込みはやや浅めな手応えだった。

原田知世のアルバム「恋愛小説2~若葉の頃」から『September』では、バンドの演奏がとても自然につながる。ボーカルの解像感がきめ細かく、質感が柔らかい。それでいてギターのカッティングは粒立ちが良く、音像も鮮明だ。シームレスで一体感あふれるグルーブは平面駆動型のヘッドホンならではの味わいと言える。ボーカルは口元が立体的に描かれ、リアリティにハッとさせられる。電子ピアノなどメロディラインの音色も鮮度が高い。弾力感のあるエレキベースの低音が歯切れの良い正確なリズムを並べていく。

CDリッピングのソースも聴いた。ライ・クーダーの「Jazz」から『Big Bad Bill Is Sweet William Now』ではクリアなメロディラインと、小気味良く弾むリズムセクションとのバランスがとてもよい。アーティストの存在を間近に感じるようなリアルな演奏だ。アコースティックギターの柔らかくきめ細かい音の質感が鮮やかに引き出される。明るく煌びやかな管楽器の高音がスパイスとして良い効果を与えている。元気で楽しく聴ける演奏だ。Lightning直結のメリットはハイレゾ音源に限らず、CDリッピングやApple Musicのような定額制音楽配信コンテンツなど、様々な音楽ソースをiOS機器で楽しむ際に実感できそうだ。