ワークスアプリケーションズは6月8日、「日本・ノルウェーの働き方に関するメディアセミナー」を開催。両国のオフィスワーカーを対象にした働き方に関する意識調査の結果を発表した。

調査によれば、日本とノルウェーでは1日の平均労働時間に大きな差がなく、むしろ休日出勤の頻度に関してはノルウェーの方が多いと判明。一方で、「自社の生産性が高い」と感じる人の割合はノルウェーの方が高いことがわかったという。なぜこのような結果となったのか。調査結果の発表後行われたパネルディスカッションで、在日ノルウェー商工会議所 専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏が語った内容を中心に紹介する。

パネルディスカッションで在日ノルウェー商工会議所 専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏が語った

リモートワークやフレックス制度が普及しているノルウェー

ワークスアプリケーションズが実施した「日本とノルウェーにおける『働き方』意識調査」(調査期間:2016年4月18日~5月5日、対象となるオフィスワーカー: 日本346名 ノルウェー120名)によれば、1日の平均労働時間をみると(全体の加重平均をとったもの)日本は9.26時間、ノルウェーは9.02時間と大きな違いはなかった。

また休日出勤の頻度に関して「ほぼなし」と回答したのは日本で75.6%、ノルウェーで47.5%であり、ノルウェーの方が低い割合となっている。全体の加重平均を取っても、日本は0.54日であるのに対し、ノルウェーは1.48日と休日出勤の頻度が高い傾向にあった。

所属企業の労働生産性について、「高いと感じる」もしくは「やや高いと感じる」と答えた人は日本で23.4%、ノルウェーで93.3%となった

一方で所属企業の労働生産性について、「高いと感じる」もしくは「やや高いと感じる」と答えた人は日本で23.4%、ノルウェーで93.3%と大きな違いがある。実際に日本の労働生産性はOECD加盟国34カ国中21位、ノルウェーは2位という結果もあるのだ(日本生産性本部「日本の生産性の動向2015年版」)。

興味深いのはリモートワークやフレックス制度の導入状況の違いだろう。フルフレックスもしくはフレックスが自社で導入されていると答えた人の割合は、日本では34.5%であるが、ノルウェーでは82.5%。リモートワークが認められていると答えた人は日本が20.9%であるのに対し、ノルウェーでは77.5%に達している。

家族と一緒に過ごすため - 休日勤務の背景

なぜこのような結果が出たのか。セミナーで行われたパネルディスカッションで、在日ノルウェー商工会議所 専務理事のミカール・ルイス・ベルグ氏がその理由を語った。はじめに、休日出勤が多い傾向があるという結果について「出勤といってもパソコンがあれば仕事ができるので、職場に行っているわけではない」とその背景を説明。ノルウェーでは、仕事よりも家族と一緒に過ごすことの方がプライオリティが高く、その時間を確保するため、労働時間をアレンジするのだそうだ。

「16時に帰宅して家族と過ごしたあと、自宅で1時間ほど業務メールのやりとりをする。金曜日は15時半に帰宅し、その分、子どもが寝静まった週末の夜に、自宅でプレゼンテーション資料を作る」とミカール氏。リモートワークやフレックス制度が普及しているため、上司と相談しながらライフスタイルに合わせた働き方を選べるという。

実績がシビアに評価される社会

それでは、労働生産性が高い理由をどのように分析しているのか。ミカール氏は「ノルウェーでは長時間労働が評価されるのではなく、早く仕事を済ませて帰宅するということが評価される」と社会的な認識の違いを指摘。また人件費が高いということも、背景にあるという。その上で、転職が普通になっていることも要因としてあげた。

「希望の企業に転職するためには、実績を残さなければいけない。採用担当者は、転職希望者が勤めている企業のマネージャーや社長からヒアリングして、その実績が正しいかを調査してから採用を決めるので、うそはつけない」とのこと。確かにこのような事情があれば、短時間でいかに成果を出すかということに、真剣になるだろう。

"やりがいのある仕事"が仕事の効率を上げる

一方でミカール氏はノルウェーの生産性が高い理由について「人口が少ないわりに、国家油田から石油がたくさん取れるからではないか」という見方も示した。「石油価格が下がっている状況で多くの企業が生き残るためには、教育や研究から生まれるアイデアを応援しないといけない」。いろいろな要因があるにせよ、人口が少なく、国外市場を視野に入れた生き残りを見据えるノルウェーで、柔軟性や生産性がキーワードとなっているのは間違いないようだ。

ノルウェーでは、社会人になるのが平均で26~27歳ごろだという。大学卒業後、ワーキングホリデーや旅行を通じて得た知見や経験も仕事でいかされ、もっとやりたい仕事があれば経験を積んで転職する。「やりがいのある仕事に就くことが、何よりも仕事の効率を上げるのかもしれない」とミカール氏。企業としての生き残り、家族との時間、そして自分の生きがいを追求しようと考えた時、私たちがノルウェーから学べることは多いのではないだろうか。