空や雲、川、大地…。ディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』(3月12日公開)では、自然も感情を持ったキャラクターのように生きている。そして、まるで本物の映像かと錯覚してしまうほど、リアルに描かれているのだ。このたび、アメリカ・サンフランシスコのピクサー・アニメーション・スタジオを訪れ、撮影監督のシャロン・キャラハンとクラウド(雲)・スーパーバイザーのマシュー・ウェッブに、どのように壮大な自然をキャラクターとして描いていったのか話を聞いた。

家族5人が集まっている『アーロと少年』場面写真

本作は、恐竜だけが言葉を持つ地球を舞台に、弱虫の恐竜アーロと怖いもの知らずの少年スポットの友情の物語。ある日、アーロは川に落ちて流され、家から遠く離れた見知らぬ土地でスポットと出会い、そこから2人でアーロの家を目指す旅が始まる。

撮影監督のシャロン・キャラハン

シャロンは、映画の冒頭であるアーロが農場にいるシーンについて、「彼が川に流されてしまう前の最後の場面だから、優しく感じられるようにしたかった」と説明。「それで、夕暮れ時のノスタルジックに感じられる時間帯にしたの。それは直後に起きる冷たくて残酷な川への転落と、激しい対比になるのよ」と話し、転落のシーンについても「照明と色を大きく変化させたの。できるだけ怖くしたかったし、衝撃的で感情に訴えるものにしたかった」と語った。

また、翌朝、アーロが川下の方で目覚める場面については、「不安を感じさせるために、動いている雲の影や抑えた色を使った」と説明。さらに、「このシーンの深い峡谷は、彼の故郷の環境と対比的になるようにデザインしたの。故郷からできるだけ遠くに来たと感じられるようにね」と明かした。家族と離れ離れになったアーロの孤独な気持ちを、自然の描写からも表現している。

クラウド・スーパーバイザーのマシュー・ウェッブ

マシューも「風景もキャラクターも一つであり、感覚的に感じられるものではならなかった」と言い、「自然は悪役的な役割を担っている」と説明。「背景を恐ろしくリアルに描くことで、アーロが危険を感じていることに真実味が生まれる」とリアルな描写の重要性を語った。いつ何が起きるか分からない自然の怖さを描くことで、ひとりぼっちのアーロの恐怖心を表現したのだ。特にマシューが注力したのが3Dの雲で、すべての雲が3Dというのは本作が初めてとのこと。「3Dの雲は、本当に生きているようなリアルな感覚が生まれる」とその効果を熱弁した。

そして、アーロの成長も雲に反映されているという。マシューは「アーロがスポットを救うシーンでは、雲が分かれて太陽が見え始める。そして、翌朝にはとても晴れた朝になっている」と例を挙げ、「すべてがストーリーの感情面をサポートしている」と語った。

実写のように感じられるほどリアルな自然の描写に、アーロの内面や心情を反映させた本作。アニメーションの限界に挑戦した『アーロと少年』の美しい自然にも注目が集まっている。

夕日が美しいシーン

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