ディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』(3月12日公開)の主人公の恐竜アーロは、象の動きを参考に作られたという。このたび、アメリカ・サンフランシスコのピクサー・アニメーション・スタジオを訪れ、どのようにキャラクターを作り上げたのか、アニメーターのケヴィン・オハラとマイク・ヴェンテュリーニに話を聞いた。

アニメーターのケヴィン・オハラ(左)とマイク・ヴェンテュリーニ

はじめに2人は、キャラクター作りの過程を写真を交えて説明してくれた。恐竜の動きを分析するために彼らが研究したのは、恐竜と同じように大きくて重い象。象を研究することで、どの動きも4つの基本のポーズから作られていることがわかり、アーロもこの4つのキー・ポーズを基本に動きを作り出していったという。そして、さらにアレンジを加え、さまざまなアーロの動きを表現。弱虫のアーロが成長していく姿を描いた。

――最初、アーロはとても弱虫ですが、どんどん頼もしく成長していきます。その変化が伝わるように、特に強調して描いた点を教えてください。

マイク・ヴェンテュリーニ(以下マイク):最初はアーロを弱々しく、臆病に感じさせたかった。それで僕らは、彼の足を内股にして少しヨロヨロさせ、頭でっかちなようにし、彼の首を少し曲がっているようにポーズさせた。彼が弱く感じられるようにね。そして、映画の終わりまでには、彼は首をまっすぐ上げて、もっと自信を持って見えるように変えていったんだよ。

ケヴィン・オハラ(以下ケヴィン):そうそう。彼が若い時は、こういう風に内股になっているんだ。

マイク:肩をすぼめたり、肩を引いたりね。また最初は、彼が走ったり、歩いたりしているのが、ぎこちなく見えるようにした。そして、映画が進むにつれて、彼はもっとうまく、力強く走り始めるんだ。僕らは、どういう走り方を使うかということや、どのシークエンスで、そういう変化を見せるかについてよく話し合ったよ。

――アーロが川に流されるシーンは躍動感がすごくて印象的です。その時のアーロはどのように作られたのでしょうか。

マイク:アーロがスポットを追いかけているところを見ると、彼はとてもぎこちなく、足がもつれて川に落ちるんだ。あれは僕らが描いた最初のシーンで、彼の目がどれほど大きく見開き、そこに恐怖感を入れられるかということで、表情の表現に力を注いだよ。何がチャレンジングだったかというと、彼をアニメートするためには、どのように水が動くのかを知る必要があったこと。そこを理解するために、スペシャル・エフェクト部門と何度もやりとりしないといけなかった。それは、僕らにとって、大きな技術的チャレンジだった。

ケヴィン:あのシーンの作業を始めるという時に、スタッフの何人かは急流のいかだ下りの旅に出掛けた。その時に、激流にいるというのはどういう感じかを経験するため、僕らの何人かは川に放り出されたんだ。川の中にいるのがどういう感じかということや、水の温度、息ができないこととか、それで知ることができたよ。

――アーロを小さなスポットとからませるということで、アーロのすごく細部まで気をつけて描いたということはありますか?

マイク:それは、僕らが乗り越えないといけない技術的なチャレンジだった。アーロが頭にスポットを乗せている時、すごく近づいて見ることになるので、うろこの膨らみが感じられるようにしないといけない。スポットがアーロに触れている時は、触っているところの表面がリアルに感じられないといけないんだ。だから、普段はやらなくてもいいような多くの細部をアーロに入れ込まないといけなかった。手の指紋といったディテールを。

――アーロに関して、監督から強く言われたことはありますか?

マイク:彼は、アーロが怖がっているということが伝わるようにと、僕らに求めていた。だから僕らは、その恐怖をキャラクターの演技で表現しないといけなかった。彼が11歳の少年だということをいつも意識していた。そして、映画全体を通して、彼の内面的変化や人間的成長に一貫性があるようにするために、多くの時間を費やしたんだ。

――この映画での新たな挑戦は何でしたか?

マイク:たぶん、セリフがないことかな?

ケヴィン:そうだね。アニメーターにとってのひとつのチャレンジは、セリフがないということだよ。アーロとスポットという2人の主要キャラクターは、共通言語を話さない。すべての演技はパントマイムを通してやらないといけなかった。だから、感情を表現するのが大変だった。

本作は、言葉を話す恐竜アーロと話さない少年スポットの友情の物語。アニメーターにとって大きな挑戦だったという"言葉なしの感情表現"が、観客の感動を呼ぶ。

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