JR北海道は10日、留萌本線留萌~増毛間の鉄道事業廃止について発表した。社内で検討を重ねた結果、鉄道を維持していくことは困難との結論に至り、留萌市長・増毛町長へ2016年度中の鉄道事業廃止を説明したという。

留萌本線の終点、増毛駅

留萌本線は深川~増毛間を結ぶ路線(営業キロ66.8km)。うち留萌~増毛間(営業キロ16.7km)は1921(大正10)年11月5日に開業した。現在、同区間の列車本数は13本(下り6本・上り7本)で、留萌駅を除く8駅すべて無人駅となっている。

同路線は国鉄時代から、石炭産業の衰退による沿線の過疎化と自動車の普及によって鉄道の需要が大幅に減少していた。1978(昭和53)年に貨物輸送が廃止され、1980年に急行列車も営業廃止に。JR発足後も利用者は減少の一途をたどり、留萌~増毛間の2014年度の輸送密度は39人(1列車あたり約3人)だったという。

加えて災害の多い線区とされ、とくに箸別~増毛間において、斜面から線路に流入した雪や土砂などによって列車が乗り上げ、脱線する事故が2度(2005年3月・2012年3月)にわたり発生。今年も2~4月の2カ月間、雪崩や斜面の土砂崩壊の恐れがあることから、留萌~増毛間の列車が運転見合わせ(タクシー代行)となっていた。同区間では並行して路線バスも運行されており、1日22本と鉄道より本数が多く、留萌市内の市立病院や高校にも立ち寄るなど沿線住民の重要な生活の足とされている。

JR北海道は留萌~増毛間の収支状況に関して、「営業収入は平成25(2013)年度で700万円に対して経費は25倍近く要していると推計され、差し引きすると年間約1億6,000万円以上の赤字」で、「鉄道が地域の交通手段としての役割を担うには大変厳しい現実」とした。一方、安全確保のための防災工事費は数十億円に及ぶ見込み。同区間の今後について社内で検討を重ねたが、鉄道での維持は困難との結論に至ったという。

なお、留萌本線留萌~増毛間の鉄道事業廃止後の地域振興に関して、「できうる限り協力して参る所存であります」とJR北海道は発表している。