フジヤエービックが主催するポータブルオーディオのイベント「春のヘッドフォン祭2015」が、東京・中野サンプラザで5月16日・17日に開催された。100を超えるオーディオ関連企業が参加し、新製品発表会も行われるなど、注目度が高いイベントだ。見どころは多かったが、特に印象に残った製品・イベントをジャンルが重複しないよう6つピックアップ、ここに紹介したい。

SENNHEISER HD 630VB

まずは、オーディオファン向け高級機としてゼンハイザー初の密閉型ヘッドホン「SENNHEISER HD 630VB」を確かめに。ひと足早くミュンヘン「Hi-End Show」で発表され話題となっていたところ、未エージングかつ1台かぎりながらヘッドフォン祭でも展示された。

行列に並ぶこと10分、初めて手にする実物はハウジングが大きめで、内側ネット部分のビビッドなオレンジが印象的。イヤーパッドは見た目よりふんわりとしており、装着感は悪くないが、軽さがあとひと息ほしかったところ。

音はフラット傾向で解像感は高く、低域の制動もいい。全体的にはゼンハイザーの名にし負う緻密な音づくりが印象的だが、ハウジング左側に回転させると低音をブーストできるダイヤルを用意するなど、低域への配慮も感じ取れる。もっとも、ダイヤルを上限まで回転させても"それなり"の強調レベルであり、それがゼンハイザーというメーカーの良心なのだろう。

ゼンハイザー初のオーディオファン向け密閉型ヘッドホン「SENNHEISER HD 630VB」

ハウジング左側のダイヤルを回すと低音をブーストできる。ブーストレベルが強すぎないところに、ゼンハイザーらしさを感じる

Just Ear

MDR-EX800STやMDR-EX1000など数々のソニー製インナーイヤーモデルを手がけてきた、ソニーエンジニアリングの松尾伴大氏が責任者を務める「Just Ear」。カスタムインイヤーモニター、通称「イヤモニ」の新進ブランドとして今年4月にスタートしたばかりだが、秋のヘッドフォン祭 2014に参考出展した際にかなりの人気を集めた実績がある。

早速試聴を……と思いきや、今回も整理券を配るほどの盛況ぶり、時間の都合で断念せざるを得なかったが、直接松尾氏に質問することができた。

気になっていたのは、商品の購入方法。イヤモニは耳型の採取が必須条件なだけに、地方在住者にはどのように対応するのかとの問いには、「対話で音の好みをうかがう事情もあり、東京・青山での来店対応のみ」とのこと。他のイヤモニブランドは、耳型採取を宅送で扱うところもあるが、現在その予定はないという。引き渡し時もフィッティング確認を行うため、来店してもらうとのことだ。オープンから1カ月経過していないにもかかわらず、「海外からのゲストにも複数来店いただいている」と潜在顧客が世界レベルで存在することもあり、人気は当面続きそうだ。

Just Earブースの試聴風景。さすがに耳型はとらないが、イヤーピースがS/M/Lの3種類用意されていた

耳型採取とフィッティング確認のため、店舗へ2度は足を運ばねばならないが、海外顧客を思えばラクかも?

Microshar G3

イベントには国内外のポータブルアンプが多数展示されていたが、どれもじっくりと試聴したものばかり。まだ見ぬ(聴かぬ)製品は……と物色していたところ発見したのが、「Microshar G3」。幅61×高さ13×奥行き102mmというカードケース大のコンパクトなきょう体に、ESSの32bit DAC「ES9018K2M」を搭載。LPCMは最大384kHz/32bit、DSD 12.2MHzの再生にも対応するという充実ぶりだ。

アコースティックギターの曲で試聴したが、SNの高さのみならず低域の制動がよく、オリジナル回路を採用したというヘッドホンアンプ部の個性が感じられた。「オールハンドメイド・イン・USA」を標榜するメーカーの製品だけあって、小粒でもピリリと辛い骨太の仕上がりだ。Microshar G3は、ポーカロ・ラインが国内販売代理店をつとめている。

オールハンドメイド・イン・USAのポタアン「Microshar G3」。店頭予想価格は92,000円前後、Lightning-USBミニBケーブル(MS-iD2USB1)は30,000円前後(ともに税別)

別売のLightningケーブルでiPhone 6と接続し、ハイレゾ対応オーディオ再生アプリ「ONKYO HF Player」で試聴した