ソニーは19日、microSDXCメモリーカードの新製品として、音質面に着目した「SR-64HXA」を発表した。音楽プレーヤー「ウォークマン」などで利用することを想定している。

容量は64GBの1モデルのみ用意し、SDスピードクラスは「10」だ。UHS-Iには対応せず、UHSスピードクラスもサポートしない。3月5日から発売し、価格はオープン、推定市場価格は18,500円前後(税別)だ。製品にはSDメモリーカード変換アダプタが付属する。

写真左の左側は付属のSDメモリーカード変換アダプタ、右側はSR-64HXA本体。写真右はパッケージのイメージ

SR-64HXAは、メモリカードの視点から高音質に貢献できないか、というアプローチで開発がスタート。ソニーの社内において、メディア事業部門とサウンド事業部門がタッグを組み、さまざまなパラメータを変更しながら実験を繰り返したという。

結果、microSDXCメモリーカードから音楽データを読み出す際に発生する、微弱な電気的ノイズが音質に影響することが分かった。技術者の話によれば、主に電源の品質やアナログ回路部分への影響が大きいとのこと。そこで、microSDXCメモリーカードから発生する電気的ノイズの低減に取り組んだ。

データの読み出し時に発生する電気的ノイズのグラフ。ソニーの従来品と比較して、SR-64HXAはノイズレベルが低くなっている

ほかにも、「メモリカードは高速なものがよい」という従来の考えを捨て、オーディオ再生に支障ない範囲に転送速度をとどめている。必要以上に高速性を求めず、信号の安定性をもっとも重視する設計とした。

SR-64HXAを構成するNANDフラッシュメモリやコントローラーといったパーツに対しても、厳密に選別と管理。製造ロットなどによるバラつきが少なく、一定レベルの「音のクオリティ」を維持する業界初のmicroSDXCメモリーカードと自信を見せる。なお、将来的にNANDフラッシュメモリやコントローラーの世代が新しくなった場合も、調整を繰り返して「音のクオリティ」は担保するという。製品としての型番が変わったりするかどうかは未定だ。

実際に聞き比べてみた

従来品のmicroSDXCメモリーカードとSR-64HXAで音を聞き比べてみた。機材は、ハイレゾ対応の「ウォークマン A10」シリーズと、フラッグシップの「NW-ZX2」を2台ずつ用意。1台には従来品のmicroSDXCメモリーカード、もう1台にはSR-64HXAをセットし、あらかじめ保存した楽曲を聞き比べた。ちなみにヘッドホンは、ハイレゾ対応の「MDR-1A」だ。

ウォークマン NW-ZX2を使って、従来品のmicroSDXCメモリーカードに保存した楽曲と、SR-64HXAに保存した楽曲を再生

音質の評価は難しいのだが、SR-64HXAに記録した楽曲を再生すると、ソニーは「音源が本来持つスムーズな音のつながり、澄んだ温情の広がり、粒立ちの良さ、みずみずしさを再現」できるとしている。実際に比較した感想を述べると(SR-64HXAが高音質という先入観はあったかもしれないが)、1音1音がはっきりとして、全体の奥行き感や広がり感が豊かであるように感じた。

試聴に使ったウォークマンとヘッドホンが高品質という見方もあるだろう。ただソニーによれば、他社製の音楽プレーヤーやスマートフォンによる音楽再生、ウォークマン Aシリーズの付属ヘッドホンといった環境でも、従来のmicroSDXCメモリーカードと今回のSR-64HXAで音質の違いが出るだろうとのことだ。逆に、再生機器の品質が落ちる場合、SR-64HXAを使うことで高域の歪みといった「アラ」が目立つかもしれないとも述べた。

当然だが、ソニーとして音質にはっきり言及できるのは、自社製のウォークマンシリーズとSR-64HXAの組み合わせについてのみである。今回のSR-64HXAは、特にハイレゾ対応ウォークマンに最適なメモリカードとしてアピールしていく考えだ。「良い音をたくさん持ち運ぶ」ということで、容量が128GBの製品も検討していきたいとした。