エアアジアグループ(所在地:マレーシア)は2013年に撤退した日本市場に7月1日、再び帰ってきた。「エアアジア・ジャパンは第2部で完結」と語る同グループのトニー・フェルナンデスCEOは、合同出資社である楽天やノエビアホールディングスなど日本企業4社とともに、航空業界の「ゲームチェンジャー」を目指す。

左からアルペン代表取締役社長の水野泰三氏、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、エアアジア・ジャパン代表取締役社長の小田切義憲氏、エアアジアグループCEOのトニー・フェルナンデス氏、ノエビアホールディングス代表取締役社長の大倉俊氏

ハブは未定だが、羽田就航も視野に

新生エアアジア・ジャパンをイメージした機体デザインからトニー氏が登場

エアアジア・ジャパンは2011年にANAと合弁で設立し、2012年8月に成田―新千歳などに就航したが、業績不振や方向性の違いにより2013年に合弁を解消。同年に日本市場から撤退した。エアアジア・ジャパンの代表取締役兼最高経営責任者であった小田切義憲氏は2013年にANAを退社。同年よりエアアジアにて準備会社を率い、この7月1日に改めてエアアジア・ジャパンの代表取締役社長として、日本再上陸を発表した。

新会社の資本金は70億円(予定)でエアアジアが49%出資する。そのほかの出資比率は、オクターヴ・ジャパン インフラストラクチャーファンドが19%、楽天が18%、ノエビアホールディングスが9%、アルペンが5%となっている。なお、航空法の定めで外国企業は日本の航空会社に3分の1以上出資できないため、議決権ベースではエアアジアは33%の制限内に収まる予定。

現状、一時的な登録として中部国際空港(セントレア)を拠点にしているが、新会社のハブ空港は未定となっている。発着枠に限りがある羽田には確保でき次第就航を目指しているが、東京に限らず、地方の魅力を訪日外国人や同じ日本人に知ってほしいという想いもあわせて、就航時には東京以外での展開を考えているという。

トニー氏は2015年6月からの就航を目指したいとコメントしており、初めは新造機体2機での運航を予定。2015年中には4機に増やし、その後は1年に5機ずつの投入を計画している。また、LCCで問題になっているパイロット不足に対しては、就航開始時はエアアジアグループ内での流動を検討しているが、今後はスタッフの養成にも積極的に取り組んでいくという。

企業家同士でスピード感ある運営を

トニー氏は、「同じような考えの人とやるべきだということを学んだ。私たちは意思決定が早い。そうした意味では、企業家の集まりでやりたいと思った」とコメントしており、今回の出資メンバーには友人でもある楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏も加わっている。

三木谷氏は、「一株主という立場でエアアジアの発展に貢献」とコメント

出資理由として三木谷氏は、「世界的に見て、LCCは旅行業界を盛り上げている。特に東南アジアではLCCは約50%にまで台頭しているが、日本では3%しかない。現在、日本では2020年までに訪日外国人を2,000万人にまで増やすために、本気で取り組みを始めている。さらに上を行くにLCCは重要であり、それは日本の経済発展にもつながりうる」とコメントしている。

また三木谷氏は、「『楽天トラベル』以外にもグループ内には電子書籍サービス『楽天kobo』などがある。例えば、この楽天koboを機内サービスとして利用してもらうなど、ITを使ったサービスを共同で考えていきたい」などと語っている。「機内販売や国際線の免税店などを通じた付帯事業にも力を入れていく」(小田切氏)というように、格安以外のサービスも視野に入れて、日本での再出発を計画している。

蜷川デザインでさらに鮮やかに

エアアジアの機体といえば、鮮やかな赤色が基調のデザインだが、2015年の新造機体には、写真家で映画監督でもある蜷川実花さんがデザインした機体が登場する予定。現在はまだ案段階だが、蜷川さん自身は、「乗る人が楽しくなるようなデザインにしたいと思っています。ただ、これほど大きなデザインをしたことがないので、『実物はどんな感じになるんだろう』とわくわくしています」とコメントしている。

「Now Everyone Can Fly!」「Fun & Friendly」に代表されるエアアジアグループの経営理念に基づき、新しいパートナーとともに日本市場へ再参入を果たしたエアアジア・ジャパン。2015年には、18カ国208路線を展開するアジア最大のLCCグループのメンバーとして、日本に新しい風・新しい力を送り込むことが目指されている。

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