イベントで発表を行ったAMD副社長兼組み込み事業部長のARUN IYENGAR氏

米AMDは9月9日(米国時間)、米国サンフランシスコ市でプレスイベントを開催。組み込み向けCPU/APUのロードマップを発表した。ロードマップに新規に含まれた製品は4つ。現在のAMDの組み込み向けAPU/CPUであるG、Rシリーズの後継製品2つ。および、組み込み向けGPUと新たにARMの64bit CPUコアを採用したSoCである。

AMDの組み込み系ロードマップ。性能重視の市場向けには、Bald EagleとHierofalcon、低消費電力向けには、Steppe Eagleを用意し、組み込み向けGPU向けには、マルチチップモジュールのAdelaarを投入する

これらは2014年の出荷が予定されており、APU/CPUに関しては28nmプロセスでの製造(製造はおそらくグローバルファウンダリーズ)が行われる。

新規に追加されたARMコア採用のSoC「Hierofalcon」(開発コード名、ハヤブサの一種)は、ARMの64bitアーキテクチャARMv8に準拠したCPUコアCortex-A57を採用し4コアまたは8コアの製品を用意する。AMDは、すでにサーバ向けARMv8プロセッサ製品としてSeattleを発表しているが、こちらは、組み込み向けの製品。おそらくはSeattleの設計をベースにコア数を減らし、組み込み向けとした製品と思われる。

Hierofalconは、64bit ARMプロセッサCortex-A57を最大8コア搭載する。10GbitのイーサーネットやPCI Express(Gen3)を統合。既発表のSeattleの組み込み版とされる

AMDによれば、組み込み向けの多くの製品がARMアーキテクチャであり、AMDとしては、組み込み向けなどの非PCビジネスの拡大をねらっており、そのためにも必要な製品だとしている。

調査会社資料によれば、2013年の組み込み市場ではx86とARMで全体の80%を占め、2016年には、これが82%にまで向上するという。また、市場全体も成長している

現在のRシリーズの後継となるのは、「Bald Eagle」という開発コード名で呼ばれる製品。すでに情報が公開されているデスクトップ向けAPU「Kaveri」をベースにした製品とみられ、CPUコアにSteamrollerコア、Radeon HD 9000シリーズのGPUを搭載する。CPUコアは2または4コアでTPDは17~35Wとなる。

Bald Eagleは、HSAに対応した最初の「組み込み向け」APU。GCNベースのRadeon HD 9000を搭載し、CPUとGPUでおなじ仮想メモリを扱える。デスクトップ向けのKaveriを組み込み向けに改良したものと思われる

最大の特徴は、異種CPU接続のための仕様であるHSA(Heterogenias System Architecture)に準拠し、GPU側でもCPUが扱う仮想メモリアドレスを利用してメモリアクセスが可能になるなどの点だ。

HSAは、AMDやARMなどが創設したHSAファウンデーションで定義する異種CPUシステムのアーキテクチャ仕様。8月のHot Chipsで現状などが報告された。このBald Eagleは、HSAに準拠したはじめての組み込みプロセッサになる予定。

Bald Eagleがロードマップとして2014年前半の出荷とされたことは、ベースとなるKaveriの出荷に見込みがついたと予想できる。

これに対してGシリーズの後継となる「Steppe Eagle」(開発コード名、ソウゲンワシ。Steppeはロシア語の草原。日本でいうステップのこと)は、従来モデルと同様にJaguarベースのAPUを搭載するが、低消費電力化を進め、動作クロックを高めて性能を向上させている。製造プロセスは28nm。TDPはGシリーズが6~25Wだったのに対してSteppe Eagleは5~25Wとなっている。

Bald Eagleは、HSAに対応した最初の「組み込み向け」APU。GCNベースのRadeon HD 9000を搭載し、CPUとGPUでおなじ仮想メモリを扱える。デスクトップ向けのKaveriを組み込み向けに改良したものと思われる

主な改良点はおそらくクロックあたりの消費電力で、より低電力で動作するようになったようだ。GPUにはRadeon HD 8000を搭載するが、Bald EagleのようにHSAには対応していない。これは、CPUや内部バスなどのHSA対応がJaguarでは行われていないからだと思われる。

組み込み向けディスクリートGPUの「Adelaar」は、マルチチップモジュール上にGPUとGDDR5メモリを搭載した製品。モバイルPCI ExpressモジュールやいわゆるGPUボード(PCI Express)の形態の製品も用意される。

このAdelaarを含め、Bald EagleのRadeon HD 9000、Steppe EagleのRadeon HD 8000はAMDがGraphics Core Next(GCN)と呼ぶ世代の製品に属する。

Adelaarは、GCNベースのGPUで、小基板の上にGPUと2ギガバイトのGDDR5メモリを統合する。一般的なPCI ExpressカードやモバイルPCI Expressモジュール(MXM)も製品として用意される

PCアーキテクチャベースの組み込み製品は少なくない。またARMプロセッサを採用する組み込み系システムとx86系の組み込みシステムで市場全体の8割に達している。AMDとしては、x86系とARMで組み込み向け製品のロードマップを強化し、この分野でのビジネスを拡大したい考えだ。