1月14日、ボーイング社の最新鋭機787がANAの羽田 - 北京線に就航し、ついに"国際線デビュー"を飾った。国際線に使われる787は長距離線仕様となっており、1月21日には初の長距離国際線である羽田 - フランクフルト線が就航した。2012年1月現在、787型機を飛ばしているのはANAだけであり、長距離線で体験できるのももちろん同社だけである。

ボーイング787が革新的な12の理由(後編) 【連載】航空トリビア 第1回 格安なエアラインほど定時に出発する理由

「787型機の革新性は、長距離になればなるほど実感できる」と関係者は言う。ならば、787のすごさはどこにあるのか。日本企業が約35%を占めるパーツを担当した点でも希望を与えてくれるこの新型機の革新性を、まとめてご紹介しよう。

その1 全重量の50%にカーボンを仕様

787の革新性の根本にあるのがカーボンファイバー(炭素繊維)複合材を全重量の50%に使用している点。機体のメイン素材を複合材にした飛行機は世界初であり、後述するように、燃費効率の向上、機内の高湿度化、高気圧化、加速度上昇、窓の大型化などは、どれも従来のアルミ合金などの金属素材では成しえなかったことだ。なお、このカーボン素材は日本の東レが供給している。

ANAの長距離仕様の787-8型機。ビジネスクラス46席・エコノミークラス112席の計158席。機体に大きく「787」と書かれているのは、同規模機の767型機と区別がつきにくいからでもある

その2 燃費効率を20%も改善

ANAに第1号機が納品される5年前。2006年6月、シアトルで行われた787の説明会場に設置されていたモックアップ(実物大の模型)

787は当初、「ソニック・クルーザー」という名称でボーイング社から航空業界に提案された。従来より20%も高速化されたマッハ0.95~0.98ものスピードが出るジェット旅客機を想定していたのである。

ところが、2001年9月11日に起こった米国同時多発テロ事件で状況は一変する。航空需要が厳しくなると予測した航空会社の間で、スピードよりも経済性を重視する意向が強くなったのである。そこでボーイング社も高速機をイメージした「ソニック・クルーザー」から「7E7」に名称を変更するとともに、運航コストを20%安くするというコンセプトを打ち出した。その後、名称が「787」と改められ、燃費効率を従来の同規模機より20%も向上できる旅客機として昨秋デビューしたのである。

こちらも上の写真と同じモックアップ。すでに乗った人は分かると思うが、実際の機内もほぼこの通りに造られた。そのボーイング社の手腕には敬意を表さざるを得ない

その3 革命的な飛行距離と加速度を生むエンジン

787の主翼は先細りで上方に持ち上がった形状。これで飛行時の抵抗が最小化される

燃費効率の向上を分かりやすく表す数値が航続距離の延長だ。同規模機で乗客をより遠くまで運べることが、すなわち燃費効率の向上を表すという理屈だ。例えば200席仕様の場合、767-300ER機の航続距離が約9,800kmだったのに対し、同規模機の787-8は約1万4,000kmにもなる。このため、ANAは従来の767では飛べなかった東京(羽田) - フランクフルト線の定期便就航を787で実現したわけである。

そして、その燃費効率の向上に欠かせないのが加速度の劇的な進歩などのエンジン性能の改善だ。燃費効率20%向上にエンジンの性能改善は最も大きく貢献し、このおかげで燃費効率は約8%アップしている。その他、金属素材からより軽量なカーボン素材への転換、風の抵抗を最小化した翼の形状などもあり、787の燃費効率が向上したのである。