カシオから2010年10月に発売されたOCEANUS(オシアナス)の「OCW-T1000」。アナログ電波時計の使いやすさを飛躍的に向上させたこの新作について、東京・羽村にあるカシオの技術センターで、開発者にインタビューを行ってきた。

"劇的な効果"をもたらす新システム

カシオ計算機 羽村技術センター 時計事業部 モジュール開発部 モジュール企画室 岡本哲史さん

スマートな見た目とは裏腹、OCW-T1000には、「実にさまざまなイノベーションが込められています」と、モジュール開発部の岡本哲史さんは語った。そのひとつが、"5モータードライブ"の進化だ。デジタル時計とは違って、アナログ時計の場合は、針を動かすことによって、さまざまな表示を行う。その針を動かすためのモーターを5つ内蔵することで、ストップウォッチやアラーム、ワールドタイマーなどの多機能を、すべて針の動きだけで表現することができる。これが従来のカシオの5モータードライブの特徴であった。

「今回のOCW-T1000にも、合計5つのモーターが使われていますが、モーターと針の組み合わせが従来とは違っています。時・分・秒をつかさどるセンターの針の1本ずつにモーターがあてがわれているため、3本の針すべてを独立駆動させることができるのです。つまり、ストップウォッチやアラームといった他の機能を作動させた場合、通常は時刻表示を行っている3本の針が、それぞれのモードを表示するための針としても機能します」(岡本さん)

実際、OCW-T1000の場合、ストップウオッチモードにおいては、通常の時針が"分"のカウントを、そして分針が"秒"のカウントを、秒針が1/20秒のカウントを行うことになる。アラームやワールドタイム機能においても、この中央に設置された3本の針が、それぞれ重要な役割を担うことになる。

「デジタル時計の長所は、1つの液晶部分にさまざまな機能が表示させられることです。アナログ時計でもセンターの針で複数の機能が表現できれば、デジタル時計に近い、シンプルで見やすい表示が可能になります」(岡本さん)

新機能「スマートアクセス」を採用した「OCW-T1000」(左)。右は、大ヒット作「OCW-S1400」に白蝶貝をあしらった2010年モデル

たしかにOCW-T1000のデザインは、シンプルでわかりやすい。多機能を搭載しながらも、サブダイアルを上下にまとめて、あくまでスタイリッシュに仕上げている。さすがG-SHOCKをはじめとするデジタル時計で強みを発揮してきたカシオらしい、独創的なアナログ時計の作り方といえるだろう。しかも、この新しい5モータードライブの技術は、今回カシオが新開発した「電子式リューズスイッチ」と合わせて、さらなる劇的な効果をもたらすという。それがOCW-T1000の真骨頂ともいえる新システム「スマートアクセス」だ。多機能アナログをいかに使いやすく設計するか。次ページでは、その詳細について説明する。……多機能アナログを使いやすくするテクノロジー