Mozilla FoundationのFirefox担当ディレクタMike Beltzner氏が5月10日 (米国時間)に、PC向けWebブラウザの次期メジャーアップグレード版となる「Firefox 4」の製品計画を説明した。最新ロードマップによると、2010 Mozilla Summit (2010年7月7日-9日)前の6月にベータ版をリリースし、ベータ版のアップデートを重ねて10月ごろにリリース候補版、そして年内の最終版提供を目指す。

今回の計画アップデートではFirefox 3.xの提供計画にも大きな変更があった。これまではFirefox 4への過渡的な機能追加・機能強化を行うFirefox 3.7を今年第2四半期末ごろにリリースし、年末にFirefox 4を登場させる予定だった。Firefox 3.7で最優先されている課題はプラグインに関するトラブルの解決である。この見直しはすでに完了しているが、計画していたユーザーインターフェイスの改良が遅れている。そこでバージョン3.7の機能強化のカギである“Out of Process Plugins”機能などをFirefox 3.6.4として提供することに変更。そのほかの機能強化や新機能はFirefox 4に盛り込む。今後はFirefox 3.6.xのアップデートとFirefox 4の開発が平行して進む。

Firefox 3.7の機能強化のカギである“Out of Process Plugins”機能をFirefox 3.6.4として提供

Firefox 4は6月にベータ版リリース。アーリーアダプタとメインストリーム・ユーザー両方のフィードバックを取り入れながら、14日-21日の短い間隔でベータ版のアップデートを繰り返す計画。10月ごろのRC1、年内の最終版リリースを目指す

Firefoxのベータプログラムはこれまでアーリーアダプタをターゲットにしていたが、Firefox 4ではメインストリーム・ユーザーからの意見も取り入れる。Mozillaはアーリーアダプタのこれまでの貢献に満足しているものの、実際に最終版をリリースしたときにメインストリーム・ユーザーならではの意見や反応に驚かされることが多々あったという。メジャーアップグレードとなるバージョン4では、想定している全てのエンドユーザーの反応をベータ段階で取り入れていく。それも従来の計画でのバージョン3.7提供をとりやめて、より長いベータ期間をバージョン4開発に設けた理由の1つだ。

Firefox 4開発においてMozillaは「高速」「権限:ブラウジング、データや情報の取り扱いにおけるユーザーのフルコントロール」「パワフル:新たなオープンWeb標準サポート」の3つの目標を掲げている。

Firefox 4は、JavaScriptエンジンに「JagerMonkey」を搭載する。TraceMonkeyがコードをトレースできないとインタプリタに立ち往生してしまう問題を解決するプロジェクトから誕生したもので、オープンソースのJavaScript JITであるNitroからアセンブラをインポートしている。このほか64ビット・サポート、Direct2Dを用いたハードウエアアクセラレーションによるレンダリングなど、今日のハードウエア向けの最適化も行われる。

"高速"には動作の高速化だけではなく、効率的なナビゲーションの実現も含まれる。現在の標準テーマ案では、ホームボタンがタブの左端に置かれるなど、コントロールボタンを減らした非常に簡素なデザインになっている。Webアプリケーションのぺージへのすばやいアクセスを実現するアプリケーションタブの採用、ユーザーに適切な注意を促す通知機能など、シンプルなインターフェイスでスムースなナビゲーションを実現する変更が検討されている。

現時点でのFirefoxの標準テーマ案。コントロールボタンが少ない簡素なデザイン。メニューバーは左上のFirefoxボタンからのドロップダウンメニューにまとめられている

タブの左端はホームボタン。幅の狭いタブは、Webアプリケーション専用のアプリケーションタブ。タブを画面の下の方に配置できるオプションも検討しているという

ユーザーコントロールについては、コントロールパネルのWebサイトタブで、パスワードやCookiesの記録、位置情報の提供、アドオンの使用の許可、ポップアップの許可などをWebサイト単位でユーザーがコントロールし、その状況をひと目で把握できるようにする。ユーザーデータはFirefox Syncを用いてバックアップ・共有が可能。またカスタマイズ管理用のインターフェイスも刷新され、アドオンの検索、アドオンのレビューやスクリーンショットへのアクセスが容易になる。なお、アドオン導入後にアドオンを有効にするためのFirefoxの再起動が不要になる見通しだ。

Webサイトに提供するデータ、許可する機能やサービスをサイトごとにユーザーがコントロール

アドオン・マネージャー

HTML5およびWeb技術については、WebSocketsサポートによる双方向通信アプリのサポート、HTML5パーサの実装、アニメーションAPI、フルスクリーンAPI、高品質なビデオ/オーディオ再生、ジェスチャーおよびマルチタッチのサポートなどが挙げられた。一方で、IndexedDB、WebGLによる3D機能の実装は暫定的な計画にとどまっている。