さて、ここからシャブリの等級について説明していこう。シャブリは以下の4つの等級に分けることができる。

プティ・シャブリ

ビオディナミに取り組むドメーヌ、パスカル・ブシャールのプティ・シャブリ

プティ・シャブリはシャブリ全生産量の約15%を占め、耕作面積は782.7ha。1ha当たりの収穫量は60ヘクトリットル。この等級の土壌はキンメリジャンではなく、それよりももっと新しいポートランディアンと呼ばれる硬い石灰質である。ステンレス発酵で若飲みタイプ。さっぱりと飲みやすく、値段も手ごろなものが多いのが特徴だ。

シャブリ

ドメーヌ・コレのシャブリ

4つの等級の中で、生産量が圧倒的に多く、シャブリ全生産量の67%を占める。耕作面積は3,256.8ha。1haあたりの収穫量は58ヘクトリットル。こちらも基本的にはステンレスのみで仕上げるが、ヴィンテージによっては長期熟成も可能となっている。

シャブリ・プルミエ・クリュ

シャブリ・プルミエ・クリュ。クリマはモンテ・ド・トネール

シャブリ全生産量の16%を占め、耕作面積は776.1ha。1haあたりの収穫量は58ヘクトリットルとなっている。この等級の畑はシャブリ地区に点在しているため、合計79もの畑がある。それらを次の17のクリマ(区画 注1)に大別している。

モン・ド・ミリュー / モンテ・ド・トネール / フルショーム / ヴァイヨン / モンマン / コート・ド・レシェ / ボーロワ / ヴォークパン / ヴォーグロ / ヴォー・ド・ヴェイ / ヴォー・リニョー / レ・ボールギャール / レ・フォルノー / コート・ド・ヴォーバルッス / ベルディオ / レ・ランド・エ・ヴェルジュ / ショーム・ド・タルヴァ

クリマごとにはっきりと味わいの違いが出て、発酵または熟成に木樽を使うことがある。

シャブリ・グラン・クリュ

写真中央がレ・クロのシャブリ・グラン・クリュ

シャブリ全生産量の2%を占め、耕作面積は102.9ha。収穫量は1ha当たり54ヘクトリットル。プルミエ・クリュよりもさらに限られた次の7つのクリマ(注1)で造られる。そしてこのグラン・クリュだけが、シャブリ村内1カ所に集中している。

ブランショ / ブーグロ / レ・クロ / グルヌイユ / レ・プリューズ / ヴァルミュール / ヴォーデジール

木樽で発酵・熟成させるものが多く、長期熟成に耐えうるシャブリの中では最高級品とされている。

注1: プルミエ・クリュのクリマもグラン・クリュのクリマもあくまで"区画"の名前であって"所有者"(造り手)の名前ではない。つまり同じ、例えばレ・クロという区画の中でも複数の所有者がいるということだ。

おもしろいのは、これらの4等級が区画によって格付けされている点だ。私が今まで見てきたボルドーやイタリアなどでは、基本的に自分のワイナリーの目の前に自分の畑が広がっていた。自分の家の前には自分の庭があるのはごく当たり前、という感覚だろうか。ところがシャブリ地区も含むブルゴーニュの場合、自分のワイナリーの目の前に畑はない。

グラン・クリュ以外は、様々な等級の畑が入り混じっているのが分かる

グラン・クリュ分布図

畑はあちらこちらに散らばっていて、「うちはこっちのシャブリの畑に○haとあっちのプルミエ・クリュの畑に○ha」という具合。1つの造り手が点在する複数の畑を持ち合わせていることが多いのだ。グラン・クリュの畑100haのみシャブリの村内1カ所に集中しているが、あとはほんの少しの日当たりや土壌の違いによって変わってくる様々な等級の区画が複雑に入り混じり、一見しただけではとても把握できない。ましてや「ここからここまでがプルミエ・クリュ」なんていう等級別の柵も所有者毎の柵も何もないので、もはや造り手のみぞ知るラビリンスだ。

シャブリの総栽培面積は約5,000ha。前述のように、そのうちの15%がプティ・シャブリ、67%がシャブリ、16%がプルミエ・クリュ、2%がグラン・クリュである。全シャブリの2/3は輸出されており、輸入量ベースでいくと日本は1位のイギリス(23.9%)に続き2位ではあるが6.5%とイギリスには大差をつけられている。このように、イギリスは量においては圧倒的だが、価格では日本のほうが上回っており、シャブリにとって日本は"上客"である。 だが、日本ではグラン・クリュやプルミエ・クリュといった高級品はレストランでの消費がメインと見られ、手頃な価格で楽しめるプティ・シャブリは魅力的だが、その生産量の少なさから日本で見つけられる可能性は低い。シャブリの中では最も生産量の多く、好相性な料理の幅も広いといわれる(プティもプルミエもグランもつかない)シャブリが、我々日本の消費者にとっては手に取りやすいのかもしれない。