エフセキュアは、日本を含む欧米・アジアの9カ国で行ったインターネットの安全性に関する意識調査の結果を発表した。この調査は、世界中の消費者と企業に対してアンチウイルスソリューションを提供する同社が、日本、香港、インド、米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの9カ国で、それぞれ200人のインターネット個人利用者を対象に、セキュリティ意識とその実態について調査を行ったものである。

近年、インターネットを悪用した犯罪が増加し、その手口もフィッシング詐欺、ウイルス感染、スパイウェアなど多岐にわたる。一方で、セキュリティの脅威となるOSやアプリケーションの脆弱性も報告も毎日のように行われている。インターネット利用者にとって、PCの安全性を保つセキュリティ対策が重要な課題である。

この調査では、日本のインターネット利用者はセキュリティの必要性は認識しているものの、他国と比べてセキュリティ対策の知識が少なく、インターネットを安全に利用する自信を持っていない人が多い傾向にあることが明らかになった。以下、具体的な調査結果を見ていく。

88%の人がアンチウイルスソフトをインストール済み

まずは「PCは、アンチウイルスソフトによって守られていると思う」との質問に対し、図1のような結果が得られた。

図1 Q:PCは、アンチウイルスソフトによって守られていると思う

68.5%のユーザーがアンチウイルスソフトによってPCがインターネットの脅威から守られていると思っている。次いで、「自分のPCにアンチウイルスソフトをインストールしている」という質問に対しては、図2のような結果となった。

図2 Q:自分のPCにアンチウイルスソフトをインストールしている

実際に88%の人がアンチウイルスソフトを導入している。しかし、「安心できるインターネットライフを送るためにはウイルス対策だけでは不十分である」との質問には、「非常に同意できる」、「同意できる」を合わせ77%になり、アンチウイルスを信頼しながらも、悪意を持ったWebサイトへの不安感も存在している(図3)。

図3 Q:安心できるインターネットライフを送るためにはウイルス対策だけでは不十分である

他国では、アンチウイルスを重要視しているのに対し、日本人は約半数が安心して利用できるWebサイトのほうが大切だと考えていることも判明した。

インターネットの安全利用に最も不安感を持っているのは日本人

インターネットを使ったクレジットカード決済の安全性については、肯定的な意見(42%)が否定的な意見(14.5%)を大きく上回った。しかし、「自分がオンライン決済を行うときのセキュリティ対策に強い自信を持っている」と回答した人は、わずか4.5%にとどまっている(表1、図4)。

表1 Q:自分がインターネットを使ってオンライン決済を行う時のセキュリティは万全だと思う

非常に同意できる 同意できる どちらともいえない 同意できない まったく同意できない
日本 4.5% 38% 42% 15% 0.5%
他国平均 10.1% 43.4% 30.6% 10.6% 5.5%
米国 12% 51% 30% 4% 3%
カナダ 12% 49% 29% 6% 5%
香港 11% 35% 37% 15% 2%
インド 9% 45% 23% 16% 6%
イタリア 9% 44% 33% 9% 5%
ドイツ 4% 24% 33% 24% 15%
フランス 12% 50% 29% 6% 5%
イギリス 12% 49% 31% 5% 3%

図4 表1の結果をグラフ化。「非常に同意できる」とした回答者の低いのは、日本、ドイツであった。アジアでも低い傾向がみられる

これ以外には「フィッシング詐欺を見分けることができる自信がある」と回答した人も、調査対象国中最低の4%、「自分の子供がインターネットを利用しても安全だと思う」との質問に対しても、肯定的な回答をした人は8%のみで、調査対象国中最低で他国平均(27%)のわずか3分の1であった。

セキュリティに関する知識は最低クラス

セキュリティの脅威にあたるマルウェアに対する知識は対象国中最低ランクとなった。「セキュリティの脅威ではないもの」に対する質問には次の結果となった。

表2 Q.インターネット セキュリティの脅威ではないものはどれでしょう?(正解は「スパルタン」、赤字は最高、青字時は最低)

ワーム フィッシャー トロイの木馬 スパルタン ボット わからない
日本 5.5% 3.5% 3.5% 9% 6.5% 72%
他国平均 6.3% 6.4% 2.9% 24.6% 18% 41.9%
米国 4% 4% 2% 31% 15% 44%
カナダ 5% 5% 3% 38% 11% 38%
香港 18% 12% 4% 4% 15% 48%
インド 7% 8% 6% 21% 16% 43%
イタリア 2% 6% 3% 16% 36% 36%
ドイツ 3% 3% 1% 54% 14% 25%
フランス 5% 8% 2% 6% 22% 57%
イギリス 6% 5% 2% 27% 15% 44%

日本では、正しく回答できた人はわずか9%と、香港(4%)、フランス(6%)に次いで低く、「わからない」と回答した人(72%)は香港(48%)より24ポイント高く、他国平均(42%)の2倍近くとなった。最も正解率が高かったのはドイツであった。

アンチウイルスソフトは入れたものの、プログラムをつねに最新の状態に保つこともセキュリティ対策上、重要となる。この点について質問したところ、「非常に同意できる」と回答した人は19%で、「同意できる」(36%)と合わせても55.5%にとどまり、「よくわからない」との回答が34.5%となり、この点についても今後の課題を残す結果となった。

他国と比べ、仕事の書類より個人の情報の消失を懸念

「自分のPCから失いたくないもの」を3つあげてもらったところ、図5の結果となった。

図5 Q:自分のPCから失いたくないものを3つあげるとすればなんですか?

他国平均と比べると「個人情報に関するファイル」と「メールアドレスと電話番号」がともに15ポイント近く高く、逆に「仕事の書類」、「機密書類」の2点が20ポイント前後低い結果となった。日本人は個人の情報を大切にする反面、仕事関係の情報消失は意識が低い。