鉄道フェスティバルの日、会場となった日比谷公園には、グッズなどを求める鉄道ファンが早朝から長い列をなしていた。これだけのファンに愛されていれば、鉄道の将来も安泰かという気になるが、実際には先の若桜鉄道のように、赤字の中で何とかして生き残りの道を模索している事業者は多い。そもそも、輸送機関としての鉄道はこの先伸びるのか、それとも縮んでいくのか。

鉄道フェスティバルには全国から50を超える鉄道事業者・関連企業が出展。毎年2日間で10万人以上を動員するイベントとなっている

国交省・北村さんの上司の陶山基さん(鉄道局企画室)に聞いてみると、「輸送人員で言えば、全体としては現在ほぼ横ばい傾向ですので、人口予測等から考えると、このまま放っておいたら間違いなく右肩下がりです。特に地域別に見ると大きな違いがありまして、首都圏はまだ増えているのですが、地方は『ひどい状況』と言わざるを得ません」という答えが返ってきた。1987年から2005年までの18年間で、地方鉄道の輸送人員は約19%減少したという。これはあくまでも地方鉄道全体の平均値なので、さらに急激な利用減に直面している事業者もあるということだ。

もちろん、国も手をこまねいているわけではなく、鉄道施設を自治体が所有して事業者に無償で貸し出すことで路線を維持する、いわゆる「上下分離方式」を支援するための法改正などを行っている。しかし、今後ますます需要の減少が続くと予想される中、制度面・財政面の支援だけを頼りとして地方鉄道が存続できるかには疑問も残る。少なくとも、地域にとってその路線がどういった意味を持ち、もし無くなったら将来地域の姿はどう変わってしまうのかといったことを、地元の人々が主体的に考えていくことが否応なしに求められていくだろう。

そのとき、鉄道や経営の専門家の力も当然必要となるが、議論の出発点となるのは、その路線を必要とし、愛している、地元の「鉄男・鉄子」たちである。もちろんファンの力だけでどうにかなる問題ではないが、鉄男・鉄子のいない地方に鉄道が残ることはない、ということは間違いなく言えるだろう。

そんな背景があるからかどうかはわからないが、陶山さんによれば、「鉄男・鉄子」をタイトルに冠した今回の企画は、国交省鉄道局の幹部からも注目されているという。今後の展開については現時点では全くの未定ということだが、今回寄せられた投稿が真摯なものばかりだっただけに、今後も何らかの形で存続させていきたい意向だ。

11月末には初代新幹線車両「0系」が引退する。JR西日本では記念撮影用のプレートをブースに設置した(右)

鉄道総研が開発した、架線なしでもバッテリーで走行できる「Hi-tram」。ブースでは今年3月まで札幌で行った走行試験の映像を上映した(上)

全国の非電化線でおなじみのキハ40気動車を、新しいジョイフルトレインとして改造した「みのり」。JR東日本ブースではリフォームのプロセスを紹介した

海外に輸出された日本の鉄道車両を紹介した展示も、来場者から注目を集めていた。産業としての鉄道を考えた場合、海外のほうが伸びしろははるかに大きい

昨今の鉄道ブームに加え、CO2削減要求の高まり、社会の高齢化の進行などを受け、鉄道の魅力や必要性がいままさに再発見されつつある。単なるブームだけではなく、社会全体として公共交通のあり方を考える契機になれば、鉄道の将来も少しは確かなものにできるかもしれない。