6月28日と29日に、イギリス・ロンドンで行われた野外音楽フェスティバル『Hard Rock Calling 2008』。エリック・クラプトンやポリスらを迎えて行われた本イベントは、現地で大きな話題を呼んだ。日本では、WOWOWが『HARD ROCK CALLING~ロンドン最大級の音楽イベント~』と題し、このイベントの模様の一部を8月27日(21:00~22:50)に放送。そこで、オンエアに先駆け、現地でナマ体感したメイン・ステージの様子とアンディ・サマーズの独占コメントとともに紹介します!

あまりにも豪華すぎるJAM。ちなみに、ボーカルはシェリル、J・メイヤー、クラプトンの順番で回した。ギターソロ部分はJ・メイヤーが担当。ライブのプレミア感を改めて感じた

ロンドンのド真ん中で開催されるイベント『Hard Rock Calling』とは?

遂にやってきた、ロンドン! もちろん旅の目的はビール……ではなく、『Hard Rock Calling 2008』の取材だ。このイベントは、マドンナの移籍で一躍有名になった世界最大手のイベント興行会社LIVE NATIONとHard Rock Cafeが主催する野外音楽フェスティバル。今年で3回目となるが、前回までは会場名にちなんで『Hyde Park Calling』と銘打っていた。

イベントは超満員!

さて、そのハイドパークだが、ロンドナーたちにとっては心の拠りどころとも言える場所。ロンドン中心部にドドーンと広がるこの公園は音楽イベントだけでなく、さまざまなイベントが催され、週末だけでなく平日でも人々がくつろぐために訪れる。日本でどこかと訊かれるとピンと来ないが、ニューヨークで言えばセントラルパークといったところか。

そんな場所で開催されるということで、ロンドン中から注目を集める『Hard Rock Calling』。しかも、今回のヘッドライナーはエリック・クラプトンとポリス! 30~50代のドンピシャ世代はもちろん、10~20代の新たなファン層の興味も引き、前売りチケットの売り上げはなんと約7万枚! 7000~8000人集まれば成功と言われる音楽フェス業界において、ケタ違いの業績を記録しているのである。

グラミー賞複数回受賞のJ・メイヤーとシェリルが会場を温める

6月29日。午後2時の開場とともに、観客が集まってきた。まずはビールで一杯やる人、レジャーシートを広げて日光浴する人……。奇しくも、その週のイベント情報誌『Time Out London』に書かれた"ある程度年を重ねたオーディエンスがレジャーシートを広げてそう"という紹介記事さながらの光景が広がる。やがて午後3時になり、メイン・ステージと2ndステージで、同時に『Hard Rock Calling』は幕を開けた。が、ピクニック気分の観客の半数は未だ立ち上がらず、家で音楽を聴いているようなリラックスぶり。だ、大丈夫か……!?

ところが、グラミー賞常連のジョン・メイヤーが登場したあたりから、オーディエンスのノリも本格的なライブ仕様になってきた。エリック・クラプトンとシェリル・クロウと同じ日のステージに立つことに対して恐縮の意を表したジョンだが、のっけから『Waiting On The World To Change』で観客を惹きつけ、ラストの『GRAVITY』、『SAY』を歌うころには大半のオーディエンスがステージ近くに群がっていた。恐るべし、ジョン・メイヤー!

とにかく若い層に人気のジョン・メイヤー。近くにいたイギリス娘も「I like him!!!」と余裕で10回は絶叫。角度によっては石原良純に見えなくもないけど……ま、それはいっか

続いて、シェリル・クロウが登場すると、女性オーディエンスが一斉に殺到! 中にはシェリルもどきのファッションに身を包みながら踊りまくるファンもいたりして、つくづくシェリルの女性吸引力を実感……。特に、大合唱となった『If It Makes You Happy(イフ・イット・メイクス・ユー・ハッピー)』での盛り上がりは、彼女のロック・ディーバとしての存在感を裏付けていた。

さすがはベテランのシェリル・クロウ。ステージ上での貫禄もたっぷり。彼女がMCで「一緒に歌って! でないと撃つわよ」と言った時は、本気で撃ちそうな迫力だった(笑)

こうして会場も十分温まったころ、時計の針は午後8時を差していた。いよいよ、1日目のヘッドライナー、エリック・クラプトンの登場である!

なんだかめっきり老けたクラプトン…でも"ギターの神"ぶりは健在!

すーっとステージに現れたかと思うと、エリック・クラプトンは『Tell The Truth(テル・ザ・トゥルース)』をプレイし始めた。相変わらずの淡々とした仕事ぶり! ほとんど顔色も変えず、派手に動き回ることもせず、MCといえば「Thank you!」くらい。そんなアッサリ系のステージは実にクラプトンらしいのだが、残念なことにどうも見た目が依然より格段に老けている……。中途半端に伸びた白髪ヘアーがよくないのか(!?)、燻し銀ぶりは消え、ちょっと疲れた爺さんにしか見えないのだ。

ひたすら"仕事"に打ち込む、ちょっぴり聖子ちゃんカットなエリック・クラプトン。せっかく音楽は魂が込められていて最高にカッコいいのに、見た目が……お、惜しい!

とはいえ、さすがは老けてもクラプトンだ。"ギターの神"と言わしめたその腕は一向に衰えることなく完璧! ステージの左右に設置された大スクリーンにも、幾度となくクラプトンの指先がアップで映し出される。そのギタープレイを堪能しようとしたのか、ライブ前半のオーディエンスは比較的静かに彼の音楽に聴き入っていた。

しかし、14曲目からオーディエンスは積極的にライブへと参加していった。『Wonderful Tonight(ワンダフル・トゥナイト)』、『Layla(いとしのレイラ)』、『Cocaine(コカイン)』と立て続けに往年の名曲を披露するクラプトン。サビの部分ともなると、観客の大合唱でクラプトンの声がかき消されてしまうほど、最高潮の盛り上がりを見せた! が、やっぱり淡々としているクラプトン。あっさりステージの脇へと消えてしまった……。しかも、全然戻ってこない。

えっ、これで終わり!? ……と思ったら、再び現れたクラプトン。しかも、この日の出演者で、過去にも彼と競演経験のあるシェリル・クロウ、ジョン・メイヤー、ロバート・ランドルフも次々とステージへ現れ、全員で『Crossroads(クロスロード)』を! 最後には全員で肩を組み、それぞれとハグするクラプトン。アンコールでの思わぬサプライズJAM、最後の最後でクラプトンが見せたアツさに、オーディエンスから上がった歓声がしばらく消えることはなかった。