LIVE NATIONスタッフが語る出演交渉の裏側

イギリスきっての音楽イベント『Hard Rock Calling』(6月28、29日にロンドンで開催。同イベントの詳細レポート記事はこちら。なお、このイベントの模様は8月27日にWOWOWで放送)。エリック・クラプトンやポリスら大物アーティストが多数出演したその舞台裏では、きっととてつもない苦労があるに違いない! そこで、出演交渉を担当した世界最大手のイベント興行会社LIVE NATIONのプロモーター、トビー・レイトン=ポープ氏にインタビューを敢行した。

LIVE NATIONのプロモーター、トビー・レイトン=ポープ氏

――出演交渉はいつごろからスタートしたのでしょう?

レイトン=ポープ : 「去年の10月ころからだね。11月には、クラプトンが快諾してくれたよ。実は、『Hard Rock Calling』はイギリスで最もエコなフェスなんだ。駐車場がないから、客はみんな公共交通機関か徒歩で会場に来るしね。それが決め手となり、彼は数あるフェスの中でこのフェスを選んだと思う。ポリスに関しては、クラプトンが決まった後にオファーした。彼らはイギリス最後の公演だということもあり、音楽的な歴史もあるハイドパークでの当イベントを選んでくれたようだ。オファーの2日後にはOKの返事をもらったよ」

――『Hard Rock Calling』もそうですが、御社はマドンナやU2、Jay-Zらとビジネス契約を結ぶなど、ビッグ・アーティストとの交渉に長けています。秘訣は何ですか?

レイトン=ポープ : 「金だね(笑)。あと、大事なのは信頼関係を結ぶことさ。例えば、今回のようなイベントやライブ・ツアーの場合だと、トイレの清潔度やステージングの安全度など、ファンにとって納得のいく会場と内容になっているかにも注意を払うんだ。何かあると、ファンはプロモーターではなく、アーティストを責めてしまうからね。そういうところまで配慮することで、信頼を損なわないようにしてるよ。それから、チケットをSOLD OUTさせる能力――これも大きいと思うね」

――出演アーティストは、収益の何パーセントをギャラとして取っていくのですか?

レイトン=ポープ : 「それは言えないな(笑)。確かなのは、たくさん……日本の平均値以上だってことさ。もちろん、アーティストによっても配分は違うけどね。例えば、シェリル・クロウだったら、ロンドンでライブをした時の集客数を基準に、今回彼女の名前で売れるチケット数を想定し、それに相当するギャラは出すようにするとか……。値段の決め方としてはそんな感じだね。逆を言えば、グラストンベリー・フェスティバル(英国でほぼ毎年行われる世界最高のロック・フェス)みたいに、出演者を発表する前にチケットが売り切れるフェスの場合は、出演料をもっと安く抑えられるというわけさ」

――契約に際して大変だったことは? 例えば、アーティスト側の要求への対応など……。

レイトン=ポープ : 「要求はあまりにもたくさんあったね(笑)。詳しくは話せないけど……例えば、テレビやインターネット放送の許可をもらうのは、すごく難しい交渉なんだ。特に、お抱えカメラマンがいるビッグ・アーティストは、まったく知らない媒体が撮影するとなると、撮り方や仕上がりに不安を感じるらしい。ポリスなんかは最初、そこを非常に渋っていたね。ま、それ以外にもいろいろあったんだけど……僕らにやれることはやったよ」

核心部分での明言は避けつつも、わりとオープンに交渉の裏話を語ってくれたレイトン=ポープ氏。彼のコメントを念頭に置きながら、8月27日放送の『HARD ROCK CALLING~ロンドン最大級の音楽イベント』(WOWOW)を見ると、また一味違った楽しみ方ができるかも!?