今年4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出したことを機に、携帯電話キャリアがスマートフォンなどの端末を大幅に値引き、「実質0円」など極端に安価で販売することが事実上禁止された。しかしながら実質0円販売は、数こそ減少したとはいえ現在も継続している。その理由はどこにあるのだろうか。

「実質0円」販売が事実上禁止となった背景

安倍晋三首相の携帯電話料金引き下げ発言をきっかけとして、昨年末に総務省のICTサービス安心・安全研究会が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」。その結果を受け、今年4月に総務省は「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出した。

昨年実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受け、「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」が打ち出された

このガイドラインについて改めて確認しておくと、携帯電話回線の契約と、スマートフォンなど端末の販売を一体化することで、月々の通信料を割り引き、端末価格が大幅に値引きされたように見せる従来の商習慣が、MVNOの新規参入を阻害するなど問題となることから、割引額を適正な額にするべきというものである。これはつまり、キャリアの「実質0円」販売を事実上認めないという総務省の宣言でもあるのだ。

実質0円販売というのは、2年間携帯電話回線を継続的に契約し続けてもらう代わりに、月々の通信料を一定額割り引き、端末の実質負担金を0円にするというもの。現在は携帯電話の普及率が100%を超えるなど飽和傾向にあることから、特に2014年の春頃までは、番号ポータビリティ(MNP)による他社からの乗り換えでユーザーを奪うため、乗り換えユーザーを優遇して端末価格が実質0円をはるかに割り込み、何万円ものお金や商品券がもらえるなど割引販売が過熱化。社会問題として多くのメディアに取り上げられるほど、問題視された。

それゆえ総務省はガイドラインを基にして、高額端末が実質0円を割り込む(つまり購入したユーザーがお金をもらえる)価格や、実質数百円程度になるキャリアの割引・キャンペーン施策を見つけては、次々と行政指導を実施してきた。実際、ガイドラインを打ち出した直後の4月5日には、NTTドコモとソフトバンクに対して行政指導を実施。4月15日にはKDDIに対し口頭注意を実施したほか、10月7日にもやはり、ガイドラインを基に3キャリア(沖縄セルラーを含む)に行政指導を実施している。

こうした総務省の一連の施策によって、実質0円販売は行政から事実上禁止され、携帯電話販売の現場でも高額端末が実質0円、あるいはそれに近い価格で販売されるケースは大幅に減少した。しかしながら、実質0円販売が完全になくなったのかというと、実はそうではない。現在も一部の店舗の店頭で「実質0円」をうたって販売するケースが散見されるのが実情だ。