いよいよ本日、インターネットでラジオが聴ける「ラジコ」がタイムフリー聴取に対応した。過去1週間分の番組を後から聴けるようになったことで、ラジオ聴取環境は激変したといえるが、ラジコを考案した関西大学の三浦文夫教授によれば、ラジオの進化にとって今回の動きは「フェーズ3まであるとすれば、やっとフェーズ1が終わったくらい」(以下、発言は三浦教授)の段階なのだという。ラジオは今後、どんなメディアになっていくのだろうか。三浦教授への取材をもとに展望する。

3フェーズで展望するラジオの将来

ラジコを考案し、権利者から許諾を得たりシステムを設計したりと実用化に奔走した関西大学社会学部の三浦文夫教授。音楽や映画など、様々な文化とラジオを通じて出会ったと語る三浦教授は、ラジコを進化させることで、「ラジオを新しいメディアとして再規定」しようとしている

ラジコはPCやスマートフォンを通じ、ラジオ番組をネット経由で聴けるサービス。原型が登場したのは、1995年に大阪で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)だ。このAPECでは複数の会場をネット回線で結び、様々なアプリケーションを実際に動かしていたのだが、その中にラジオ放送も含まれていた。ネットを使って何をするかについては、産学から集まったメンバーが合宿を行って議論したという。当時、電通に在籍していた三浦教授は、このグループにコンテンツサイドの責任者として参加していた。

大阪での先行実験を経て、2010年に本格的なサービスを開始したラジコ。今では月間ユニークユーザー数が約1,200万人に達する規模に成長している。ラジコはこれまで、放送中のラジオ番組をネットで流す同時(サイマル)配信だったが、タイムフリー聴取に対応したことで、これからは過去1週間分の番組をさかのぼって聴くことが可能になる。番組をSNS経由で知人と共有できる「シェアラジオ」の機能も実装されたことから、今後は若年層を含めたユーザー数の増加に期待できそうだ。

三浦教授は便宜上、ラジコの始まりから将来の展望までを3つのフェーズに分けて説明してくれた。フェーズ1はサイマル放送の確立で、フェーズ2はタイムフリー・シェアラジオの実装。フェーズ3はラジコがさまざまなものと連携する“ラジオのプラットフォーム化”だ。この分け方でいくと、タイムフリー聴取が実証実験として始まった現段階は、フェーズ1が完了し、フェーズ2が緒に就いたところと捉えることができる。まず、フェーズ2でラジオが目指すのはどんな姿だろうか。