BPMとは業務改善の一手法です。ここでは、BPMの具体的な手法や目的、対象業務などを基礎知識として説明した後、BPMを導入するメリットやPDCAサイクルとの関係、BPM導入時の検討事項についてご紹介します。
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BPMとは
BPM(Business Process Management)は、業務のプロセスを役割分担している関係者で共有することで、業務の成果を向上させる業務プロセス管理手法のひとつです。業務プロセスを構成する「手順・役割分担・ルール」は、PDCAサイクルで常に見直しと改善を続けることで、業務プロセスを最適化します。
1 BPMの目的
BPMの目的は、継続的な業務改善により、組織全体が目まぐるしく変化するビジネス環境に対する柔軟な対応力をつけることです。業務の改善点を検討して新しい業務プロセスを考えるのは現場の担当者であり、ボトムアップで業務プロセスを改善する「組織力」も高められます。
2 BPMの対象業務
BPMの対象業務は、企業の柱となる基幹業務プロセスと、総務や人事など間接部門が担当している支援業務プロセスに大別できます。
また、全社データを利用する経営管理プロセスもBPMの対象業務です。企業の規模や必要性などにより、全社で一気にBPMを取り入れるか、一部の業務からBPMを取り入れるかは、会社の事情によって検討します。
BPMを導入する4つのメリット
BPMを導入するメリットは主に4点あるため、順番に解説します。
1 本質的な課題の発見
BPM活動によって業務プロセスは可視化され、どのような作業によって業務プロセスが成り立っているかが分かりやすい形でまとめることが可能です。
可視化された業務プロセスを確認すると、業務全体のネックとなっている作業や冗長な作業が明確になり、本質的な課題が発見しやすくなります。類似の業務プロセスをまとめてみると、共通化できそうな部分も見つけやすくなり、業務全体のコスト削減ができる場合も少なくありません。
2 業務プロセスの追加や変更を柔軟に行える
BPM活動をするには、継続的に業務プロセスの追加や変更が必要です。そのためBPMでは、柔軟な業務プロセス変更を前提としています。このような理由から、ビジネス環境が大きく変化した場合もその変化を柔軟に取り入れることが可能に。新規ビジネスの立ち上げも効率的に行えます。
さまざまな技術が日進月歩で進化していく現代において、業務プロセスを柔軟に変更できることは大きなアドバンテージです。
3 業務改善のツール開発コストを削減できる
BPMを導入する場合は、BPMを継続的に続けることが可能なBPMシステムを導入するのが一般的です。BPMシステムは業務プロセスの追加や変更を前提としていて、プログラムを組まずに対応できる製品もあります。そのため、業務改善するたびに必要だった専用のツールの開発コストも不要になります。
4 部門間の合意形成がしやすい
部門をまたがる業務プロセスを変更すると、そのたびに部門間の調整が必要となります。
しかし、BPMシステムを使って業務プロセスを改善していくと、各部門の関係者間で問題点の検討や業務プロセスの改善などの情報を共有しながら進めることに。その結果、関係者同士の相互理解が生まれ、スムーズに業務プロセス改善を進められるようになります。
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PDCAサイクルとBPM活動
PDCAサイクルでは、以下の4フェーズを順番に回すことによって業務の継続的な改善を推進します。
- 計画(Plan):前回の改善点を取り込み、何を実行するかを計画するフェーズ
- 実行(Do):計画した業務を実行するフェーズ
- 確認(Check):実行結果を取得して振り返るフェーズ
- 改善検討(Action):データ分析と振り返り結果から改善点を検討するフェーズ
PDCAサイクルの各フェーズと具体的なBPM活動について、順番に見ていきましょう。
1 業務分析と業務プロセス設計(Plan)
業務プロセスを明確にするため、BPMN(Business Process Model & Notation)という業務フローの記述法を用いて、業務分析を行います。
初めて業務分析を行う場合は、業務フローから改善できる部分や共通化して省略できる部分がないかなどを精査して、業務プロセスを設計しましょう。2回目以降の計画フェーズでは、前回の改善検討結果を反映します。
この際、業務プロセスの実行結果の目標値も設定しましょう。「〇時間以内に業務完了」「前回の結果よりも〇%の生産性向上」など、業務プロセスによって目標とする値は異なるのでその都度検討してください。目標値を設定することによって業務の実行結果の計測と改善点の分析が可能となります。
2 業務プロセスの実行とモニタリング(Do)
業務プロセスの設計が完了したら、設計した業務プロセスをチームで共有して業務プロセスを実行するフェーズに移行します。
業務の実行時は、実行結果のモニタリングも必要です。モニタリングでは、設計フェーズで立てた目標を達成しているかどうかが判別できるデータをはじめとして、さまざまなデータを取得するように設定します。
業務プロセスの実行とモニタリングには、BPMに特化したBPMシステムを利用すると便利です。BPMシステムは、業務プロセスの共有化や実行とモニタリングを自動化でき、これらにかかるコストを節約できます。
3 モニタリングと振り返り(Check)
定期的に業務プロセス実行のモニタリング結果をデータとして出力し、業務の実行状況を振り返るのが、業務プロセスの実行結果を確認するフェーズです。このフェーズは、毎週・毎月など集計する期間単位に出力と振り返りを繰り返します。
振り返りでは、計画フェーズで立てた目標を達成しているかどうかを確認し、業務ノウハウのアウトプットをする、といった作業が必要です。
4 結果の分析と改善点の検討(Action)
チェックフェーズで出た結果と振り返りの内容から、結果の分析をするフェーズです。
BPMシステムでは、案件単位や担当者単位で業務の実行結果を集計・分析する機能がついている製品もあるので、それらの機能を活用して改善点の検討を行います。ここで問題点の摘出と改善点の検討を行い、次の計画フェーズに取り込める形でまとめます。
BPMを支える2つの技術
BPMを推進するにあたって、重要な技術を2種類紹介します。
1 BPMN
BPMNとは、業務フローを整理して関係者間で共有認識を持つための業務フロー記述法のひとつです。BPMNによって業務フローを整理することで、業務がどのように流れていくかが分かりやすくなります。
BPMNの記述レベルは2段階。レベル1は、業務実務者の合意形成やシステム開発者に要件を伝えるために使います。レベル2は、レベル1の内容をIT技術でシステム化するための設計情報にまで分析した情報を記載し、システム化のインプット情報として利用します。
2 BPMシステム
BPM活動を推進するためのサポートをするBPMに特化したシステムのことをBPMシステム、あるいはBPMSと言います。
業務プロセスの改善を継続的に進めるために必要な機能を揃えており、業務プロセス改善によるコスト削減効果を高めるのに欠かせないシステムです。提供形態としては、パッケージソフト、クラウドなどがあります。
BPM導入時の検討事項3点
BPM導入時には、いくつか検討しておくべき事項があります。ここでは、検討事項として3点解説します。
1 BPMの運用範囲
BPMの運用範囲は、最初に考えておくべき検討事項です。BPMを全社で一斉に取り入れるか、一部の業務だけにするのか、それとも試験的に一部の業務に適用した後全社展開するのかなど、さまざまなパターンがあります。また、既存システムがある場合は、どのように組み入れるかも慎重な検討が必要です。
2 BPMシステムの選択
ひと口にBPMシステムと言っても、製品ごとに得意とする機能は異なります。業務プロセスの可視化が得意な製品、業務プロセスの管理や分析が得意な製品、既存システムとの連携がしやすい製品など、特徴はさまざまです。
自社にはどのBPMシステムがフィットするのか、製品の説明資料を取り寄せるか、BPMシステムを提供している会社に問い合わせてじっくり検討しましょう。
3 従業員へのBPM教育
BPMを利用する従業員への教育も重要です。BPMは、従業員がボトムアップで業務改善を継続していかなければ成果が出ません。BPMそのものの意味や必要な作業、BPMシステムの使い方といった教育を丁寧に進めていくことで、初めてPDCAサイクルが回って継続的な業務改善が可能になります。
BPMを理解した上でBPMシステムを選択しよう
BPMは、継続的に業務プロセスを改善していくための手法です。BPMシステムは、BPM活動をIT技術で支援するシステムで、業務改善によるコスト削減には欠かせないツールとも言えます。
最適なBPMシステムを選択することで、継続的な業務改善のサイクルを回し続けることが可能となります。BPMシステムやツールのおすすめ製品を知りたい方は下記記事も参考にしてみてください。
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