BPMシステムとワークフローシステムは、業務の流れを効率化するという点で似ているシステムです。しかし、両者は、扱う業務の単位や導入目的、主な機能に違いがあります。そこで、BPMシステムとワークフローシステムの違いについてまとめました。自社に導入するべきシステムはどちらか検討材料のひとつとしてご確認ください。
BPMシステムとワークフローシステムの違い
BPMシステムとワークフローシステムの違いについて、導入目的と主な機能から次の表にまとめました。
比較項目 | BPMシステム | ワークフローシステム |
---|---|---|
導入目的 | 業務プロセスの管理、分析、改善 | 業務フロー(主に申請業務の流れ)の見える化、効率化 |
主な機能 | 【業務プロセスの管理】 【業務プロセスの実行】 【業務プロセスの分析】 |
【業務フローの管理】 【業務フローの実行】 |
表にまとめた違いの内容および、そもそも業務プロセスと業務フローの違いとは何かという点について以下で解説します。
1 業務プロセスと業務フローの違い
BPMシステムでは業務プロセスを扱い、ワークフローシステムでは業務フローを扱います。
1-1 業務プロセス
業務プロセスとは、会社における業務全体の流れのことです。一番大きい単位で「事業単位」を表します。例えば、一番大きな業務プロセスとして事業単位「自動車保険販売事業」を考えましょう。
「自動車保険販売事業」は事業機能として「個人向け保険販売」「法人向け保険販売」に分解可能です。さらに事業機能の「個人向け保険販売」は「ディーラー経由」「インターネット経由」などに分解できます。
これらの分解した業務プロセスごとに、業務プロセスの現状(As-Is)を把握し、改善後(To-Be)の業務プロセスを設計します。
設計した新しい業務プロセスを一定期間実行してモニタリングし、分析して改善点を検討。さらに次の改善業務プロセスを設計することで、継続的な業務プロセスの改善を行う支援をするシステムがBPMシステムです。
1-2業務フロー
業務フローとは、会社における日常業務の流れのことです。業務プロセスに比べると対象の範囲は狭く、日常業務の流れを示すものとなります。典型的な例としては、申請業務があります。例えば、旅費精算業務を業務フローとして考えてみましょう。
担当者:旅費申請
↓
課長:承認
↓
経理部門担当:処理と課長への承認依頼
↓
経理部門課長:承認
旅費精算業務は、このような業務フローで定義できます。紙ベースの業務フローでは、申請の現状把握をしたくてもどこで止まっているかが見えず、いちいち順番に確認していかなければなりません。また、承認処理が必要な上司の長期出張などで、すべての処理完結までに時間がかかりがちです。
ワークフローシステムは電子的に業務フローを管理できるため業務フローに関わるボトルネックを解消できます。
2 導入目的の違い
BPMシステムの導入目的は、究極的には「業務プロセスの改善」です。そのためにBPMシステムは業務プロセスを管理・分析する機能を有し、継続的な業務プロセスの改善を支援します。
一方、ワークフローシステムの導入目的は、「業務フローの見える化と効率化」です。ワークフローシステムでは、どこで申請が止まっているのかすぐに確認できます。また、出張先からでも承認処理ができるため業務フロー全体にかかる時間の短縮化でき、業務フロー全体の効率化が可能です。
3 機能の違い
機能面の違いを端的に説明すると、BPMシステムはワークフローシステムの機能をすべてカバーしています。BPMシステムに備わっている、業務のモニタリングや分析、業務プロセス設計などの業務プロセス改善に役立つ機能は、ワークフローシステムにはあまり見られません。
ただし、これはあくまでも一般的な傾向であり、製品によって細かな違いがあります。BPMとワークフロー両方の機能を盛り込んだ製品もあるため、導入する製品を確認する際は、どのような機能があるのかという点や製品の導入事例を確認してください。
BPMシステムを利用するメリット
BPMシステムを利用する主なメリットを3点紹介します。
1 業務プロセスの根本的な見直しができる
BPMシステムにて業務プロセスの現状を設計図に落とし込むだけで、業務プロセスの根本的な見直しができるようになります。日々の業務を整理したことがない会社の場合、どこに無駄な業務があるか、共通化できるかといった大きな見直しができ、業務プロセスの飛躍的な改善につながることも少なくありません。
2 ビジネス環境の変化に対応しやすい
業務プロセスの設計とモニタリング、分析と改善といったサイクルを回し続けていくと、業務プロセスの変更は定期的に行われます。この体制を整えていると、ビジネス環境が急激に変化した場合にも柔軟に対応しやすくなる点も、BMPシステムを利用するメリットです。
3 ツール統一によるコスト削減
大きな組織では、総務、営業、製造など各部門で違うシステムを利用していて、それぞれのシステムの連携部分を別途開発している場合もよく見られます。BPMシステムを導入することで全社的なシステムの統一化ができ、連携部分の開発コストなどの削減が可能です。
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ワークフローシステムを利用するメリット
ワークフローシステムを利用する主なメリットを3点紹介します。
1 業務フローの可視化
紙ベースの申請業務は、申請書が埋もれてしまうリスクや紛失リスクもあり得ます。業務フローを電子化することでこれらのリスクを回避し、今誰が業務を止めているかもすぐ確認できます。処理が止まっている人に対するフォロー機能としてメールやチャットによる通知機能もあり、何度も電話をする手間もかかりません。
2 業務フローの効率化
ワークフローシステムを社外の環境でも使えるようにしていると、長期出張などで仕事が長く止まる心配もありません。別の人に代理承認を依頼している場合も申請フローの状況表示で確認でき、業務フローをスムーズに進めることができます。
3 セキュリティリスクの低減
紙の書類で申請処理を行っている場合、人によっては出張先で処理しようとして、紙の書類を持ち出す可能性があります。紙の書類を持ち出すと書類紛失などのセキュリティリスクが発生する可能性があり、好ましい状態ではありません。ワークフローシステムを導入することで、セキュリティリスクの低減にもなります。
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BPMとワークフローのどちらを選ぶかの検討ポイント
BPMかワークフロー、どちらのシステムを選ぶかの検討ポイントについて解説します。
1 業務プロセスの改善をしたいならBPM
全社的に業務プロセスの改善を目指したい場合は、BPMシステムを検討しましょう。業務プロセスの継続的な改善をしやすい製品を探し、コスト削減効果と導入・運用コストを比較検討して自社に合った製品を絞り込みましょう。
2 業務フローの見える化や効率化が目的ならワークフロー
主に申請業務において現在紙ベースでの運用になっているのを改善したい、という場合はワークフローシステムがおすすめです。BPMシステムは機能が豊富ですが、業務フローの見える化や効率化が目的なら、少々オーバースペックと言えます。
BPMとワークフローは目的とコストを考えて検討を
BPMシステムとワークフローシステムの大きな違いは導入目的と扱う業務の単位や規模にあります。BPMシステムは業務プロセス全体、ワークフローシステムでは業務プロセスの一部業務の流れ(業務フロー)を扱います。
BPMシステムは全社の業務プロセスを改善したい場合におすすめのシステムです。業務フロー、特に申請業務の効率化を目指す場合は、ワークフローシステムの方が適しています。
導入目的はどこにあるのか、また導入した場合のコスト削減効果と導入運用コストを天秤にかけて各製品の検討を進めましょう。
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