長らく、Macにはセキュリティソフトは不要と言われてきました。実際、今でもこの意見を信じているユーザーも多いと思います。Apple自身、セキュリティソフト不要と公式にアナウンスをしていた時代もあったようです。
この意見は、現在のMacにも該当するのでしょうか?
コンピュータのOSもハードウェアも進化していますが、ウイルスやマルウェア側も恐ろしいことにものすごい進化を遂げ続けています。
この記事では、そのあたりの事情も踏まえつつ、Macでセキュリティソフトが不要と言われ続けてきた理由、現在のMacOS搭載機が直面するセキュリティ面のリスクなどを解説していきます。
セキュリティソフトの導入を迷っているMacユーザーの方は、ぜひ参考にしてください。
Macにセキュリティソフトは不要と言われる理由
MacのOSが「OS X」になった頃からでしょうか。「Macはセキュリティ面に優れているからセキュリティソフトは不要」と考えられてきました。
その理由を、3つほどピックアップしてまとめていきます。
OS自体の堅牢性
一つ目の理由として、「MacOS自体の作りの良さ、素性の良さ」が挙げられます。
OSの核心部分は各種保護の概念を実装していた「UNIX系OS」をベースに開発が行われたため、OS本体の保護、アプリケーションソフトとの動作などの分離、ファイル等々のアクセス権のきめ細やかで厳密な制御などの機能を完備。
各種の攻撃からコンピュータの動作を守る仕組みが、OSという基本部分に最初から組み込まれているのです。セキュリティ面において、非常に優秀なOSに仕上がっていると言えるでしょう。
一般的に、このようなOS側の管理を厳格に行なうとユーザーの使い勝手には制限が生まれてしまうものなのですが、そういった影響を極力抑えるような工夫がMacOSには施こされています。
セキュリティソフトに相当する機能を標準搭載
Windows 10や11には「Windows セキュリティ」というセキュリティ機能が標準搭載されていますが、同様の機能がMacOSにも備わっています。
これにより、不正なプログラムなどのインストールをブロック可能です。
公式アプリストアの審査が厳格
iOSのアプリストアにも共通する内容ですが、Apple社が運営する公式アプリストアは審査が厳格であることが知られています。
まれにマルウェアを含む不正なアプリがすり抜けて登録されてしまうこともありますが、Googleが管理しているAndroid OS向け公式アプリストアと比較すると、その件数ははるかに少なくなっています。
つまり、誤って危険なソフトを導入してしまうリスクが最初から大きく抑えられているというわけですね。
MacOSをターゲットにしたウイルス制作者が少なかった
こちらはやや消極的な理由ですが、実はウェイトとしてはかなり大きくなり得るものです。
かなり以前から、コンピュータOSのシェアにおいてMacOSは下位に甘んじていました。そのため、多くのウイルスやマルウェアは、より利用者の多いWindowsをターゲットにして作られてきたのです。
相対的に利用者数が少ないMacは、相対的にウイルス・マルウェアのターゲットにはなる機会が少なかったという歴史があります。
また、Windowsをターゲットにして作られたウイルスはMacOSでは動きません。結果的に二重の意味でMacにはウイルスに感染しにくいというバックグラウンドがあったということです。
実は危険!Macがウイルスに感染する6つのリスク
上記で解説したように、Windowsと比較するとMacはセキュリティ面で優れていると言えますが、実際にはMacOSもウイルスやマルウェアに感染する可能性があります。
OS本体のセキュリティは堅固であるものの、完璧ではありません。Apple自身がMacOSにウイルス対策のセキュリティ機能を搭載していることが、その証のひとつになるのではないかと思います。
公式アプリストアに登録されたアプリのリスクは低いですが、パソコンには公式アプリストア以外からソフトウェアを導入する可能性もあります。
また、Macの台数が増えたことにより、MacOSを狙うウイルス・マルウェアの数も増え続けています。これからはMacもウイルスに感染する可能性があることを前提とした使い方をした方が良いでしょう。
続いては、Macがウイルスやマルウェアに感染するリスク要因について、具体的に解説していきます。基本的には、Windowsパソコンと同様のリスクに直面していると考えてください。
各種ソフトウェアからの感染
Appleの公式アプリストアに掲載されているアプリは、厳格な審査を通過しています。そのため、他社の公式アプリストアにあるソフトよりも安全性は高いと思われます。ですが100%完璧ではありません。最近はApple社の審査をすり抜ける不正アプリも少しずつ出てくるようになりました。
また、他の経路から入手したソフトウェアを導入することもあるでしょう。
MacOSが備える防護機能の裏をかこうとする試みは、常に行なわれ続けています。Apple社もこれへの対抗策を打ち続けていますが、どこまで行ってもこの点はイタチごっこ状態で、残念ながら100%完全な防護にはならないのが現状です。
メール経由での感染
コンピュータウイルスがこの世に登場して以来、電子メールは感染経路として定番中の定番になっています。
最近の主流はフィッシング系に移行していますが、未だに怪しい添付ファイルを付けたメールも一定数飛んできます。
かつてはこういった経路でやってくるウイルスもWindowsをターゲットにしたものがほとんどでしたが、今は状況が変わっています。Macなら安心安全、とは言い切れなくなりました。
Webサイトアクセス時に感染
特定のWebサイトに設置された不正リンクのクリックを促し、コンピュータにマルウェアを流し込もうとする攻撃も、あちこちで使われています。
まともなサイトならこういった攻撃にぶつかることはまずありませんが、そういったサイトに似せて作られた不正サイトも多数登場しています。少し怪しげなサイトには、こういった攻撃がごくごく普通に存在すると考えた方が良いでしょう。
怪しげなファイルを勝手にダウンロードさせようとする、極めて質の低いWeb広告などもあるようです。
ネットを利用していれば、こういった攻撃にいつ何時ぶつかるか予想は付きません。
各種メディアを経由しての感染
多くの場合、マルウェアはネットワーク経由で入り込んできますが、それだけが感染経路ではありません。他者とのデータ交換に便利なUSBメモリやSDカードなどの媒体は、実は有力な感染経路の一つです。
データを渡す元のマシンが不正なソフトに感染していた場合、そこからデータコピーに使う媒体はウイルス・マルウェアを含んでいる可能性がとても高くなります。
ネットワーク経由での感染
一部のウイルス・マルウェアは、ユーザーが何らかの操作を行なわなくても、外部から強制的に入り込みます。
今の時代、インターネットに接続しているデバイスは、基本的に外部からの攻撃に晒されるものなのです。これに対する防護は、今の情報端末には必須の「装備」です。
ウイルス・マルウェア以外のリスクも
現時点におけるMacのリスクは、ウイルスやマルウェア感染よりも、こちらのパターンが主なものと言って良いかもしれません。
具体的には、「フィッシングサイト」などの各種個人情報を狙う不正なWebサイトや、サポート詐欺などの不正なWeb広告などです。中には、リンクのクリック一発でメールアドレスを盗むものもあります。
MacOSが備えるセキュリティ機能は、こういった脅威の検出には対応していません。
ウイルスやマルウェアに感染したらどんな危険性があるのか
Macもウイルスやマルウェアに狙われていることは間違いなく、そういった不正なプログラムに入り込まれてしまうと、以下のような不具合が生じる可能性があります。
Macの動作が不調をきたす
ウイルスやマルウェアは、本来想定されていない無用なプログラムです。これらが裏で動くということは、その分Macのパワーを食い潰すということを意味します。他のソフトに対して悪さをしなかった場合でも、Macの動作は重くなるのです。
また、マルウェアが他のソフトに何らかの干渉をした場合、動作不良等を引き起こします。マルウェアに感染すると、さまざまな不調に見舞われる可能性があるわけです。
ランサムウェアなどがデータを破壊する
こちらの方が、致命的な影響をもたらすと言えるかもしれません。ランサムウェアなどのウイルス・マルウェアは、大切なユーザーデータを破壊することがあります。
OSやアプリの復元は、ライセンスさえ持っていればあとからいくらでも可能ですが、ユーザーが作ったオリジナルのデータは二度と元に戻せない可能性があります。
バックアップの設定に関してユーザーデータや環境設定の内容を優先すべきなのも、こういった事情が理由の一つです。きちんとしたバックアップは、ランサムウェアに対する最高の防御手段と言えるでしょう。
自分のMacが新たな感染源になる
多くのウイルスは、感染したデバイスを新たな起点にして更なる感染拡大を図ります。感染してしまったMacから、ウイルスを添付した迷惑メールが大量に発信されてしまうといった具合です。
ここが、ネットワークに接続しているデバイスの最も怖い点と言っても良いでしょう。被害が自分だけではなく、広範囲の他者に広がってしまう可能性が高いのです。
Macが乗っ取られて悪用されるリスク
遠隔操作ソフトを仕込まれると、Macを乗っ取られて何らかの目的に悪用されるリスクが生まれます。実際、多くのDDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack:分散型サービス拒否攻撃)には、乗っ取られたマシンのクラスター、「BOTネット」が使われています。
そこまで行かない場合でも、例えばWebカメラを接続してある端末がジャックされると、ユーザーの私生活が覗き放題となってしまいます。
個人情報を盗まれる
かつては、パソコンに保存している個人情報と言えばメールアドレスとそれに関連する情報程度のものだったかもしれません。しかし、今や手元の情報端末には非常に幅広い個人情報が集まるようになっているはずです。
ウイルスやマルウェアの作成者が真っ先に狙うのは、そういった個人情報です。クレジットカード情報、ネットバンキングのログイン情報など、直接お金に関わる情報もMacに保存されていたりするのではないでしょうか。
各種ネットサービスのサインイン情報なども、以前よりはるかに重要度を増しています。例えば、Amazonのワンクリック購入用にクレジットカード情報を登録している場合、Amazonのサインイン情報を盗まれるとクレジットカードも芋づる式に悪用され放題になります。
こういったリスクは、ウイルスやマルウェアに感染することだけで生まれるものではありません。最近は迷惑メールの内容も、直接マルウェアを送りつけてタイプではなく「フィッシングサイトへの誘導する」タイプのものが主流となっています。
Mac対応のおすすめセキュリティソフト4選
ここまで解説してきたように、今やMacであってもセキュリティ対策が必要な時代です。
そして、ウイルスなどのリスク対策は、「MacOSが備えるセキュリティ機能の不足を補える製品」を選ぶこと。ですので、選ぶべきセキュリティソフトもウイルス対策ソフトのような単機能製品ではなく、より多機能な「総合セキュリティソフト」ということになります。
その観点からおすすめできるセキュリティソフトは、以下の3本です。
ノートン 360
ノートン 360は、今ある一般ユーザー向けセキュリティ製品では最も多機能な1本です。このソフトがあれば、現在考えられるセキュリティ対策がほぼ網羅できると言っても過言ではありません。
機能面だけでなく、マルウェアの検出力の高さ、誤検出の少ない安定した動作といった点も優れており、使っていて安心感のあるソフトと言えるでしょう。
難点と言えそうなのは、価格が他製品に比べやや高い点でしょうか。と言っても、豊富な機能をきちんと活用できれば、1本ですべてをまかなえる分コスパが良い製品です。
以下の記事では、ノートン 360の性能を実機で検証しています。併せてご確認ください。
マカフィー リブセーフ
家族やデバイス数が多い方におすすめなのが、マカフィー リブセーフです。
マカフィー リブセーフには3年版と1年版の2つのライセンスがありますが、どちらもインストール台数は無制限。同居している家族のデバイスをすべて保護できるので、家族が所有するPC・タブレット・スマホの数が多い方はぜひ検討してみてください。
5台分のVPNライセンスやパスワードマネージャーなど、基本的な防護機能+αの機能も充実しています。
以下の記事では、マカフィー リブセーフの性能を実機で検証しています。併せてご確認ください。
ESET HOME セキュリティ エッセンシャル
ESET HOME セキュリティ エッセンシャルは、高い防護能力と安定感、そして非常に軽い動作を実現するセキュリティソフトとして近年存在感を増しています。
また、他の製品と比較して価格が手頃なのも嬉しいポイント。以下のキャンペーンページからは、3年5台版が21%OFFの9,000円(税込)で購入できます。
ユーザインタフェースの作りも分りやすく、使いやすさという点からもおすすめできる製品です。
以下の記事では、ESET HOME セキュリティ エッセンシャルの性能を実機で検証しています。併せてご確認ください。
ウイルスバスタークラウド
ウイルスバスタークラウドは日本国籍会社が開発元の総合型のセキュリティソフトで、個人情報を守る「情報漏えい対策」機能を利用できる点が大きな強みです。
保護したい個人情報(マイナンバー・住所・電話番号など)を「守りたい情報」として登録しておくことで、これらの情報が知らないうちに第三者に送信されてしまうことをブロック。
この機能を使えば、お子さまが知らず知らずのうちにSNSなどで住所などを送信してしまうことも防げます。
指定したフォルダの中身をより強固に保護する機能も搭載されており、大切なデータのセキュリティレベルを上げたい方にもおすすめです。
以下の記事では、ウイルスバスタークラウドの性能を実機で検証しています。併せてご確認ください。
まとめ
MacはOSの作りが優れていることもあり、ウイルスやマルウェアに感染しないという「安全神話」的なものがありました。
しかし、現在はWindowsパソコンなどと同じセキュリティリスクに直面しています。
MacOS自体が優れているのは事実ですが、これまでウイルス・マルウェアの被害が少なかった理由の一つに「Macユーザーの少なさゆえ攻撃のターゲットから外れていた」という点も挙げられます。
現在はそういった状況にも変化が現れ、Macを攻撃対象にしたウイルス・マルウェアもかなりの数が登場し、実際に感染の被害も出ています。Macにおいても、ウイルス対策は必須といって良い状況が生まれているということですね。
また、今のインターネットの世界ではウイルスやマルウェアだけがリスク要因ではありません。むしろフィッシングサイトなどの不正に個人情報を取得しようとする攻撃の方に主流が移行してきています。
これらのリスクからMacをガードするためには、やはりMacにもセキュリティソフトを導入する必要が出てくるでしょう。
ユーザーそれぞれのMacの使い方、ネットのサービスとのつきあい方を考えたうえで、適切な製品選択を行なってください。