相続した土地などを利用できずに、持て余している方は多いのではないでしょうか。実は所有する土地は自分で利用する以外にも、さまざまな用途で活用することができます。
売却してまとまった資金を得ることはもちろん、所有したまま誰かに貸し出して賃料を稼ぐこともできるでしょう。例えば駐車場として貸し出す、農地として活用する、建物ごと賃貸物件として貸し出すなどです。
では、その賃料はどのように決まるのでしょうか。また、その金額に相場は存在するのかも気になるかと思います。本記事では、土地を貸し出す際の借地料を算定する方法を解説するので、土地活用の参考にしてください。
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土地の借地料に関する基礎知識
土地の借地料の算定方法を解説する前に、借地料についての基礎的な知識を身につけておきましょう。
土地の借地料とは
そもそも借地料とは、土地を貸したときに借主から支払われる使用料のことをいいますが、一般的に地代とも呼ばれます。貸主は個人の場合もあれば、企業や自治体の場合もあります。
貸主が土地を貸し出しても、所有権は貸主のまま変わりません。しかし借主はその土地を契約の範囲内で、自由に使用することができるようになります。その権利が借地権と呼ばれるものです。借地料は「借地権の料金」とも言い換えることができます。
相場はさまざまな要素で変動する
不動産にはそのエリアや種類によって相場があり、借地料にもある程度の相場が存在します。そして、エリア・地代の種類・活用方法によっても異なります。
相場はさまざまな事象によって常に変動しており、例えばその土地のエリアに新しい商業施設ができて人気が出れば、価格も高騰するでしょう。借地料を算出するのであれば、そのように日々変動している相場についても念頭に置かなくてはなりません。
不動産所得なので税金が課せられる
就労して得た所得からは、所得税や住民税が差し引かれることはご存じでしょう。借地料もそれと同様に、不動産所得としてきちんと申告して、その分の所得税を納めなければなりません。
また、所有している土地には固定資産税や都市計画税などの税金もかかり、その税率は建物の有無や所有期間によって異なるため注意しましょう。
土地の借地料の相場を調べる方法
借地料の相場を調べるなら、次の2種類の方法をおすすめします。
- 一括査定サイトを利用する
- 不動産のポータルサイトを利用する
それぞれについて順にみていきましょう。
一括査定サイトを利用する
土地の相場を知りたいなら、不動産会社に査定してもらうのが一番です。土地の相場は、さまざまな事象によって変動を繰り返しています。正しい価格を知りたいなら、最新の情報を駆使して専門家に調べてもらうのが最も適切です。
また、査定を依頼するのが1社では不十分といえます。不動産会社はそれぞれ得意とする不動産の種類が違い、その査定額もそれぞれ異なってくるためです。つまり査定を依頼するのであれば、大手から地域密着型まで複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。その際は一括査定サービスを利用すると、一度の入力で複数社へまとめて依頼ができるため便利です。
土地の相場を知りたいなら一括査定サイト「イエウール」がおすすめ
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- 悪徳業者が排除される仕組みがあるので安心して利用できる
※2020年7月「不動産の一括査定サイトに関するランキング調査」より(株)東京商工リサーチ調べ
その他の一括査定サイトについても知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/9915
不動産のポータルサイトを利用する
査定に出すほかにも、不動産のポータルサイトを利用して相場を確認することも可能です。ポータルサイトに出ている価格は、実際に市場に出ている不動産が、いくらで売り出されているかを判断する基準になります。また、賃貸物件を専門的に扱っているポータルサイトなら、月々の家賃や管理費がどのくらいに設定されているかを閲覧することが可能です。
ポータルサイトには、主に居住用の物件や更地の情報が掲載されています。所有する土地に建物を建てて家賃を得ようと考えているなら、理想の物件に近い条件に絞って検索し、どのくらいの賃料で市場に出ているかを確認しましょう。
土地の借地料の算定方法
だいたいの相場を確認してイメージがつかめたら、実際に設定する土地の借地料を算定しましょう。借地料の主な算定方法は次のとおりです。
- 公租公課倍率法
- 積算法
- 賃貸事例比較法
- 収益分析法
- 路線価
- 公示地価や基準地価
このように借地料にはいくつもの算定方法があるので、ひとつの方法のみで導こうとせずに、複数の方法を選んで算出することでより適正な価格を設定しやすくなります。
それぞれの算定方法について見ていきましょう。
租税公課を基にする公租公課倍率法
公租公課倍率とは、国や地方自治体に支払う税金(租税公課)をもとに、その借地料を算出する方法のことです。この場合は、土地にかかる固定資産税や都市計画税を基準にします。
土地を所有していると、かかる維持費よりも高い利益を得られなければ、その土地を運用する意味がありません。公租公課倍率法は、固定資産税などの税額をもとに利益が出るような賃料を求める方法です。
そもそも固定資産税などの土地にかかる税金は、その土地の価値によって金額が決められています。つまり、税金をもとに価格を設定すれば、その土地の評価も加味することになるため、適正価格になりやすいのです。
エリアや活用目的によっても異なりますが、借地料は首都圏の住宅地で固定資産税と都市計画税を足した金額の3~5倍、商業地で5~8倍として計算できます。
期待利回りを基にする積算法
積算法は土地そのものの価格だけを基準にするのではなく、その土地を運用したときに、どの程度の利益を期待できるかということに焦点を当てた計算方法です。これは建物を居住用として貸し出す賃貸経営など、投資として不動産を運用する場合に適しています。
年間の利益率を計算に使用するため、不動産投資など年間で得たい収益が明確である場合に、有効な計算方法です。また相場よりも安く貸し出して、なるべく早く借り手を見つけたいような場合に、最低いくらで貸し出せば損益が出ないかという金額を導き出すこともできます。
積算法とは
積算法での借地料の計算式は以下の通とおりです。
ここでいう期待利益率とは、期待する年間の利益率のことをいい、一般的には2%程度に設定することが多いです。土地の価格に利益率を掛け合わせ、年間にかかるであろう固定資産税と、都市計画税などの維持費用を足して計算します。
実際の事例をもとにする賃貸事例比較法
不動産ポータルサイトでは、実際に賃貸物件がいくらで取引されているかを確認することができます。こうして、実際の取引事例から似た条件の物件を選び、借地料を導く方法を賃貸事例比較法といいます。
実際に、その金額で賃貸契約を結んでいる実績がある場合が多いので、その価格で設定すれば借主が現れるであろうという基準にすることも可能です。
ポータルサイトでは住む家を探す人用に、細かな条件を指定して検索できるようになっています。エリアだけでなく、マンションかアパートかやどういった構造にするか、運用する不動産にどのような設備を付けるのかなど、細かな条件によって変わる金額も検討できるので大変便利です。
賃貸事例比較法の注意点
賃貸事例比較法は便利な計算方法ですが、注意点も存在します。この方法で正確な価格を算出するためには、いくつかのデータを比較しながら検討しなければなりません。
例えば、そのエリアに1つしか賃貸事例が掲載されていなかった場合は、同じ条件の物件でなければ比較することは困難ですし、需要の偏りもあるため適正価格は算出できないでしょう。このように、比較データが多い都市部には適した算出方法ですが、地方のエリアなどデータが少ないケースでは、この方法で導くことは困難です。
予想した利益をもとにする収益分析法
収益分析法は積算法と同じく、利益に着目して借地料を算出する計算方法です。具体的には、土地を貸し出してどのくらいの利益が出るのかを、建物の容積率や高さ・建ぺい率などを用いて分析します。
収益から求めることができるため非常に有益な計算方法ですが、素人がひとりで計算することは難しいといわれています。よって投資用物件に精通した不動産会社などの専門家に、算出を依頼するとよいでしょう。
路線価を用いて更地価格を算出する
路線価は、国税庁が土地にかかる税金の基準として設定する価格です。道路ごとに設定され、それに面した面積や奥行きによって土地の価格を算出することができます。国税庁が毎年更新して発表するため、公的で信用性の高い基準といえるでしょう。
路線価は国税庁の路線数・評価倍率表で確認できますが、公示価格の8割程度になるように定められているため、更地の価格を求めたいのであれば路線価を0.8で割ると概算できます。なお年間借地料は、更地価格の1.5~3%が目安です。
路線価について合わせて読みたい記事はこちら。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/6090
公示地価や基準地価を用いる
路線価以外にも、公的に決定された土地価格を基準にすることができます。公示地価や基準地価がその例です。
公示地価は土地取引が公正に行われるように、国が1年に一度更新して発表する価格のことで、基準地価は都道府県が発表します。全国各地を基準値として価格が設定され、土地の取引を行う際にはそこから大きく外れないようにして価格を設定します。
これらの価格から借地料を算出する計算式は、以下の通りです。
公示地価や基準地価の基礎知識はこちらの記事もおすすめです。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/6140
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/6212
土地の借地料を決めるときのポイント
土地の借地料は、誤った金額を設定してしまうと借り手が見つからず、維持費だけかかるなどの問題を引き起こしてしまうため、非常に重要なポイントです。適切な金額を求めて設定するために、注意したい点をいくつかご紹介します。
相場が変動したときは見直しが必要
一度適切な価格を設定したとしても、その土地を取り巻く環境や情勢は常に変動を繰り返しています。そのエリアで大きな工事が行われたり、金利政策などで経済情勢の変化があったりすると、土地の価格も変化するでしょう。
つまり、そのように土地価格が変化するような事象があった場合は、それらを加味して価格の見直しをしなければなりません。賃料を設定するときには、常に環境や情勢に目を配り、相場と賃料の差が大きくなっている場合は、価格の変更を視野に入れて検討しましょう。
借地料の相場は常に把握しておく
借地料の相場を常に把握しておくことで、借地料の見直しに役立ちます。また、借主が値下げ交渉してきたような場合にも、無理な交渉に応じて価格を必要以上に下げることも避けられるでしょう。
相場から大きく逸れた価格を設定していると、いつの間にか需要も低くなってしまいます。借主がいなくなるといったことにならないように、土地の状態や相場をこまめに確認しましょう。
算出は専門家に依頼する
計算によって算出された借地料はあくまで目安となる価格で、その方法で求められた価格に設定すれば、借主が現れることを確約するようなものではありません。
適正価格を設定することは、不動産投資においてとても重要です。基準になる地価だけではなく、近隣環境などさまざまな要素を含めて、需要の生まれる借地料を設定する必要があります。しかしその判断は、不動産に関する知識のない一般人には大変困難なことです。
したがって借地料を決定する際は、専門家である不動産会社に依頼することをおすすめします。自分で計算して導いた価格はどのくらいの収益が見込めるのか、その目安として活用するようにしましょう。
土地の借地料に関するQ&A
最後に、借地料についてよく生じる疑問を確認しておきましょう。
借地料の見直しを借主に打診するタイミングは?
常に相場が変動するからといっても、毎日相場を調べて確認していくことは困難でしょう。また、相場を確認して大きく値上がりするとわかっても、突然値上げの提案をすると借主側も困ってしまいます。そのため、価格の変更はタイミングが大切です。
賃料変更のタイミングは、明確に価格が変更されることがわかるタイミングや、賃貸契約が更新されるタイミングなどが適しています。例えば、固定資産税や都市計画税の評価額が値上がりしたときに、明確にその変化を提示できれば、借主に値上げを承知してもらえる可能性は高いでしょう。
借地料の計算が必要になるのはどんなとき?
この記事で紹介したような計算が必要になるのは、借主と借地契約を結んで借地権を設定するタイミングや、価格を見直して改定するタイミングなどです。
不動産会社など専門家による算出で、貸主も借主も双方が納得できるような価格を設定する必要があります。算出した際には、何に基づいてその金額になったのか、理由が明確であれば借主にとっても安心できるでしょう。
借地料を得るのが難しくなった場合は?
適切な価格を設定できなかった、近隣環境の変化で需要が落ち込んでしまった、借主とトラブルが発生してしまったなどの理由で、借地料が得られなくなることもあるでしょう。
そういった場合にも、所有しているだけで固定資産税などの固定費はかかり続けます。賃料が得られない期間が長引いてしまえば、マイナスの費用ばかり重なってしまうため、売却して現金化することも選択肢のひとつとして検討しましょう。
ただし売却すると決意しても、購入希望者を探して内覧を行う必要があり、何か月も期間を要することもあります。そのため、今後も借地料が見込まれないと判断したら、なるべく早めに売却に踏み切ることもひとつでしょう。
土地の売却について詳しく解説したこちらの記事もおすすめ。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/5072
まとめ
所有している土地を貸し出して収益を得るなら、その土地の需要や相場に合った適正な借地料を設定することが大切です。土地の借地料を算出する方法は複数あり、どの方法も有効な計算方法といえます。
ただし、そのエリアに事例がなければ比較が難しかったり、基準値が近くに設けられていなかったりして、うまく計算できない場合もあるかもしれません。そのため、ひとつの計算方法だけを選んで鵜呑みにするのではなく、いくつかの方法で借地料を算出し、それぞれの価格を比較するとよいでしょう。
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