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9 藤田行生の経済先読み

円安は止まらない? 為替介入はある? 自民大勝後のドル円、本当の焦点

FEB. 18, 2026 17:30
Text : 藤田行生
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衆院選を終え、自民党が316議席を獲得する歴史的勝利を収めました。市場はこれを「政治の安定」と受け止め、政権が掲げる責任ある積極財政(食品の消費税を一定期間ゼロにする政策など)の実現可能性が高まるとの見方から、株高・債券安(金利上昇)の動きが見られました。

もっとも、投機的な円売りポジションの巻き戻し(いわゆる"Buy the rumor, sell the fact"=「噂で買い、事実で売る」)や、為替介入への警戒感も重なり、選挙後の数営業日でドル円は一時152円台まで円高が進む場面も見られました。市場では当局による「レートチェック」観測も取りざたされています。

円安圧力は構造的に続く可能性

しかしながら、円安圧力そのものは構造的に続く可能性が依然として高いと考えます。

3月19日に予定される首相の訪米(米大統領との首脳会談)を控え、水面下で為替を巡るやり取りが活発化する可能性があります。米国側から見れば、足元のドル高・円安は自国の輸出競争力に影響を及ぼしかねません。表立って「円高に是正すべき」とは言いにくい立場にあるものの、「過度な変動は望ましくない」「債券市場の安定が重要」といった間接的なメッセージが伝えられる可能性は否定できません。

特に注目されるのは、訪米のタイミングが日銀の3月金融政策決定会合と近接している点です。これが追加利上げへの「外圧」として市場で意識され始めているとの見方もあります。

米国債市場と中国の動向

米国債市場の動向も重要な要素です。

2月上旬には、中国当局が国内銀行に対して米国債の購入抑制や保有縮小を指導したとの報道もありました。詳細な事実関係は慎重に見極める必要がありますが、長期的に見れば、中国による外貨準備の分散やドル資産依存度の低下という流れは指摘されています。

米国にとっては海外からの安定的な資金流入が国債市場を支えてきた構図があります。その前提が揺らぐ中で、債券売りによる金利上昇と、他国通貨売り(結果としてのドル高)が同時に進行する展開は、米政権にとって必ずしも望ましい状況とは言えません。

為替介入の現実味

こうした環境下でドル円が再び急上昇すれば、日本国内では為替介入への警戒感が再び高まるでしょう。

2022年および2024年に実施された円買い・ドル売り介入は、急激な円安局面において相場の過度な変動を抑制する役割を果たしました。今回も「水準」そのものよりも、「上昇スピード」や投機的な動きが焦点になるとの見方が強まっています。

特に短期間で円売りが急拡大する局面では、財務省高官による牽制発言が増え、実弾介入への警戒感が市場に広がる展開も想定されます。

米国の立場と日銀の金融政策

米国側の立場は微妙です。仮に直接的な為替目標を示せば、ドル高是正を容認したとの受け止めにつながりかねず、基軸通貨国としての信認に影響を及ぼす可能性があります。そのため、日本銀行の金融政策正常化を後押しする形で、間接的に円高圧力を促すアプローチが現実的との見方もあります。

日銀はすでにYCC(イールドカーブ・コントロール)を撤廃し、政策金利を段階的に引き上げています。ただし、実質金利はなお大きなマイナス水準にあり、日米金利差が意識されやすい環境に大きな変化はありません。

円安の根底にはこの金利差構造が存在します。高市首相の訪米を機に日銀の金融政策を巡る思惑が強まれば、時期の前倒しも含む追加利上げ観測が、市場でさらに高まる可能性があります。

利上げは万能ではない

もっとも、利上げは万能ではありません。

国内景気への影響や国債利払い費の増加といった財政負担も考慮する必要があります。拙速な引き締めは、債券市場の不安定化を招くリスクもはらみます。日本としては、為替の安定と景気回復の両立という難しいバランスを慎重に見極めなければなりません。

今後の3つの焦点

今後の焦点は、次の3つに整理できます。

  • ドル円の上昇スピード(投機的な動きへの警戒)
  • 米国債市場の動向(中国の動きを含む)
  • 日銀の追加利上げ観測の高まり(訪米との連動性)

これらが同時に重なる局面では、為替介入と金融政策が並行して市場テーマとなる可能性があります。

円安は企業収益を押し上げる一方で、輸入物価を通じて家計を圧迫します。政治的安定を背景にリスクオンが続く局面であっても、為替の行き過ぎは必ず調整を伴います。

訪米を前に、市場は水面下の政策対話を徐々に織り込み始めています。

日銀の利上げ後も円安が止まらない状況は、単なる金利差だけでは説明しきれない構造的要因を含んでいます。だからこそ、為替介入が再び現実味を帯びる可能性も視野に入れつつ、相場のスピードと政策シグナルを丁寧に読み解くことが、今後一段と重要になるでしょう。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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