映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムマシン(のベース車両)としても有名な「デロリアン」もジウジアーロの作品だ。どんなクルマだったのか、振り返ってみたい。
ロータス「エスプリ」の米国版?
デロリアンのフルネームは「デロリアン DMC-12」という。「Delorean Motor Company Ltd.」(デロリアン・モーター・カンパニー)のクルマで、「デロリアン」は創業者のジョン・デロリアンから、「DMC」は社名の頭文字が由来。「12」は当初計画していた販売価格「1万2,000ドル」(12千ドル)からきているそうだ。
ボディのデザインは「イタルデザイン」のジョルジェット・ジウジアーロが担当。機構面は英国のロータスカーズが担った。製造も英国・北アイルランドの工場で行われているので、米国版「エスプリ」とも呼べる存在だった。
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ウェッジシェイプのボディパネルにステンレス鋼を使用しているのが特徴。ヘアライン加工した無塗装の表面が銀色に輝くメタリックな仕上がりが、2シーターガルウイングドアの採用と相まってSF的な印象を強めていた
リアに搭載するエンジンは、プジョー、ルノー、ボルボが共同開発した排気量2.85LのPRV型V型6気筒エンジン(最高出力130PS)だ。5速MTか3速ATを介して後輪を駆動した。スポーツカーとしてはパワーがやや非力だったため、最高速度は175km/h、0-100km/h加速は10秒前後にとどまっている。
なぜ短命に終わった?
製造期間が1981年~1982年と短いのは、販売価格が高騰(2万5,000ドル)しただけでなく、製造クオリティの低さやエンジントラブルの多さから多数の苦情が寄せられたことが原因。注文のキャンセルが殺到し、さらには創業者が麻薬所持で逮捕されるなど問題が重なり、メーカー自体が倒産の憂き目にあったのだ。
デロリアンが再び注目を浴びた理由は、1985年の大ヒットSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場したからだ。
劇中のデロリアンは、科学者のドク・ブラウンが開発し、高校生のマーティ(マイケル・J・フォックス)がドライブするタイムマシンとなり、時速88マイル(約141km/h)でタイムスリップする設計になっていた。タイムマシン版デロリアンは当初、原子力のエネルギーで走る設定だったが、次回作では生ごみをエネルギーに変える環境仕様になっていたのは注目すべきところだ。