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67 森口将之のカーデザイン解体新書

キャデラックは電動化してもキャデラックなのか - EV「リリック」で考える

MAR. 20, 2025 08:00
Text : 森口将之
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キャデラック初の電気自動車(EV)「リリック」がいよいよ日本にやってくる。キャデラックといえば“アメ車”を代表するラグジュアリーカーブランドであり、なんとなくガソリンのにおいがしてきそうなイメージなのだが、はたしてEVになっても“らしさ”は残っているのか。日本初公開のリリックを実際に見ながら考えた。

  • キャデラックのEV「リリック」

    キャデラックが日本で発売した同ブランド初のEV「リリック」

GMの本気を感じた発表会

キャデラックやシボレーのインポーターであるゼネラルモーターズ(GM)ジャパンが3月7日、日本市場におけるキャデラックの「EV導入戦略」を発表するとともに、初のEVである「リリック」を公開した。

当日はGMジャパン代表取締役社長の若松格氏だけでなく、グローバル・キャデラックでバイス・プレジデントを務めるジョン・ロス氏、GMアジア・パシフィックのプレジデント&マネージングディレクターであるヘクター・ヴィラレアル氏が登壇。しかもリリックは、日本仕様のキャデラックではひさびさの右ハンドルで、会場にはリリックに続いて導入予定の「オプティック」も展示するなど、GMの本気を感じた。

  • キャデラックのEV「リリック」

    キャデラックの「EV導入戦略」発表会に登壇した左から若松格氏、ヘクター・ヴィラレアル氏、ジョン・ロス氏

GMは1990年代に、その名も「EV1」というEVを約1,000台生産した実績がある。その後もシボレー「ボルトEV」など、EV数車種を販売してきた。こうした経験をいかしたEV専用新設計プラットフォームによるリリックの走りも気になるところだが、個人的にはキャデラックらしさを随所に織り込んだデザインに惹きつけられた。

伸びやかなシルエットはまさにアメリカン

リリックのボディサイズは全長4,995mm、全幅1,985mm、全高1,640mm。長さ約5m、幅約2mと堂々とした体格のSUVだ。日本に輸入されているキャデラックのSUVでは、フラッグシップの「エスカレード」のひとつ下に位置する「XT6」に近い長さと幅を持ち、背を低くしたような寸法になる。

  • キャデラックのEV「リリック」

    長さ約5mの堂々たる体格が特徴

ただし、リリックのホイールベースは3,085mmもあって、2,860mmのXT6はおろか、全長5,400mmのエスカレードより長い。つまり、ノーズが短くキャビンが長いという、エンジン車のキャデラックSUVとはかなり違うプロポーションなのだ。それでも実車を観察すると、随所にキャデラックらしさが見られた。

とりわけボディサイドは、面の抑揚が控えめなので、フロントからリアに向けて伸びるほぼ水平のキャラクターラインが、昔のセダンやクーペのような伸びやかさを感じさせてくれる。

細かい部分では、サイドウインドー後端が鋭角的になっているのも、かつてのキャデラック・セダン「セビル」あたりを

  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • サイドウインドー後端の尖り具合がキャデラックらしい

  • キャデラックのEV「リリック」

    発表会で示されたスライド

フロントマスクはEVということで、伝統のグリルは「クリスタルシールド」と呼ばれるパネルに変わっているが、メッシュ風の模様を入れることでグリルっぽく見せている。エンブレムをクリアとしたところもEVらしい処理だ。加えて、極細のLEDを垂直水平に配したランプ類は、凝った造形に走りがちな欧州車とは一線を画している。

  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • フロントマスクには「クリスタルシールド」なるパネルを装着している

圧巻はリアだろう。テールゲートの傾斜を強めたファストバックスタイルとして伸びやかさを出しつつ、リアウインドー下端とバンパー両脇にやはり垂直水平に配した極細LEDのランプ類と、クリアー仕上げのエンブレムを配した。大胆かつおおらかな面構成は、欧州のプレミアムブランドとは明確に違う。

  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • 圧巻のリア

残念なのは、日本の法規の関係で、フロントのクリスタルシールド内やリアウインドー脇のイルミネーションがダミーになっていること。それでも、細い縦長のテールランプは、それだけでキャデラックであることが伝わってくるようなデザインだ。

ボディカラーは展示されていたブラックの他、ホワイトとシルバーが用意される。ローンチキャンペーンではブルーとレッドも選べるそうだ。

  • キャデラックのEV「リリック」

    ローンチキャンペーンでは「レッド」と「ブルー」も用意

3月16日までの契約が条件なので、この記事が出る頃には締め切られているかもしれないが、スクリーンに映し出された姿はビッグサイズのSUVらしからぬ鮮やかな色で、これもまたアメリカンだ。機会を見つけてまた選べるようになってほしい。

インテリアには「KOMOREBI」という仕掛けも

インテリアではまず、エスカレードのそれに似た33インチ(!)のアドバンスドカラーLEDカーブドディスプレイに圧倒されるが、ディスプレイのベースのシルバー、センターコンソールのローレット加工が施されたダイヤルなど、伝統的な高級車の装いもあって、エクステリアよりもオーセンティックに感じた。

  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • ディスプレイが大きい!

ドアトリムや足元などに備わるアンビエントライトは、なんと126色を用意。さらにドアトリムには、業界初のレーザーエッチングによるバックライトを内蔵した。「KOMOREBI」(こもれび)というネーミングが日本人としてはちょっと嬉しい。

シートにはレザーに代えて、動物由来ではないサステナブルな素材「インタラックス」を採用。自然保護にも配慮している。展示車両の「ジュニパー」と呼ばれるブルー系のコーディネートは、アメリカ車らしい色調だった。

  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • キャデラックのEV「リリック」
  • ブルー系のコーディネートがアメリカ車らしい

スペースはEVのメリットをいかしていて、クラス最高レベルの広さのレッグルームを備えた後席、通常でも793リッター、後席を畳めば最大で1,722リッターの容量を誇るラゲージスペースを持つ。さらに頭上には、クラストップレベルの広さを誇る電動サンシェード付きガラスルーフを装備している。

同時に会場に展示されたオプティックは、リリックよりもひとまわり小柄なSUVだった。フロントのクリスタルシールドを上下に薄くしつつ、リアクォーターはリリックとは違うグラフィックを施していて、リリックよりもカジュアルな雰囲気でありつつもキャデラックとわかるビジュアルを備えていることが確認できた。

  • キャデラックのEV「オプティック」
  • キャデラックのEV「オプティック」
  • キャデラックのEV「オプティック」
  • 「オプティック」は「リリック」よりも小柄なSUVタイプのEV。日本には2026年に投入予定

将来的にはリリックよりも大柄な3列SUVの「ビスティック」と高性能な「リリックV」も日本に導入する考えだそうで、いずれも右ハンドルでの供給になるという。

直近ではEVシフトの勢いは一段落という印象もあるし、リリックの価格は1,100万円なので誰でも手が届くというわけではないものの、デザインは個性的で、これに乗りたいと思わせる独自の魅力にあふれている。

伝統と革新を巧みに融合した姿で現れたリリックは、「アメリカンラグジュアリーの逆襲」という言葉を使いたくなる存在だった。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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