トランプ関税をめぐる日米協議が続いたものの、日本に対する関税は25%、とトランプ政権から発表がありました。同税率は日本のGDPの0.5~1.0%を引き下げる可能性があると報じられるなど、今後の影響が懸念されます。6月後半にかけて堅調に推移した日米の株式市場ですが、今後は乖離する可能性が否定できません。トランプ関税問題は、資産運用における分散投資の重要性を再認識させるイベントとなりつつあります。
日本のトランプ関税は25%に
トランプ関税については日米間で交渉中とされていましたが、日本時間8日早朝に米国政府から日本政府に書簡が送られ、日本には25%の関税が課されることが判明しました。
実際に関税が課されるのは8月1日からであり、まだ交渉余地は残されています。しかし当初の24%から1%増えており、これまでの交渉は何だったんだ……という状態です。
日本や韓国などに関税の税率が通告された7日の米国株式市場の終値は、ダウ平均▲422.17ドル(▲0.94%)、S&P500▲49.37ポイント(▲0.78%)、ナスダック▲188.586ポイント(▲0.91%)です。下落したものの下落幅は限定的で、高値の更新が続いていたS&P500とナスダック指数に押し目を入れる形に留まりました。
日本経済に影響が大きいトランプ関税、GDPを05.~1.0%押し下げも
トランプ関税は相互関税とも呼ばれており、米国からだけではなく日本からも同率の関税をかけることが可能です。しかし乗用車の場合、米国製の乗用車は日本にほとんど輸入されておらず意味がありません。日本からは米国に多数の乗用車が輸出されており、トランプ関税は国内自動車産業中心に大きな影響が予想されます。トランプ関税は日本のGDPを0.5~1%押し下げる影響がある、とも報じられています。
米株式市場が大崩れしないと予想される2つの理由
トランプ関税の影響はまだ読み切れない部分があるものの、以下の理由から、米株式市場は大崩れはしないと予想されます。
- 底堅い米景気
- FRBによる利下げ余地
それぞれ解説します。
底堅い米景気
4月にトランプ関税ショックで世界的に株式市場は大きく下落しました。一部のトランプ関税は既に開始されており、米経済への影響も懸念されたものの、これまで米経済指標などは一方的な悪化は見られません。雇用指標は良化している程です。
また長く続いたインフレも落ち着きを見せており、米国はインフレが落ち着いてまぁまぁの景気状況、という経済的にはそれほど悪くない状態にあります。ファンダメンタルズ的に大幅な悪化が見られないため、この先に急に米株式市場が大崩れするリスクは低いと考えられます。
FRBによる利下げ余地
米国ではインフレ退治のため高金利政策が採られています。しかしインフレは一服しており、今後の景気後退時は利下げの余地があります。利下げが行われれば、債券市場から株式市場へ資金流入が予想されます。
前述の通り米景気が持ちこたえており、金融市場は米国の利下げを織り込む形となっていません。しかし、今後米景気の後退が明らかになれば、利下げを織り込む値動きが生じ、米株式市場には追い風となる可能性があります。
トランプ関税に加え参院選での与党苦戦もあり日本株は低迷か?
6月後半に、日経平均は40,000円に到達するなど年初来高値を更新しました。しかし7月に入ると、高値から若干下落した水準で取引されています。高値更新が続くナスダック指数やS&P500指数とは様相が異なります。
日本経済はトランプ関税の影響が避けられないと予想されます。更に7月20日には参院選が控える中で、与党は苦戦中です。参院選で政権与党が敗北すれば、政治の混乱が嫌気され、国内株式市場は下落する展開も予想されます。
以上から日本株は低迷に向かう可能性が否定できません。
トランプ関税で分散投資の大切さを認識できる
国内では7月20日に参議院選挙を控えており、日本政府は米国との交渉で大きなカードが切れない状態です。ただし今後の交渉でも、税率は25%という数字がベースになると見込まれます。トランプ関税は自動車業界中心に、国内経済に大きな影響が予想されます。
国内株式市場は参院選での与党敗北の可能性もあいまって今後不調に陥り、日経平均も40,000円付近が天井となり下落が進む可能性は否定できません。
一方、米株式市場に大きな落とし穴は見当たらず、S&P500やナスダック指数の上昇は続く可能性があります。S&P500などの米国型の投資信託中心に投資や資産運用を行っている方には安心できる展開が見込まれます(ただし米国株の特化型は、米国市場が逆回転した時にリスクが高まります)。
トランプ関税が日米の株式市場にどのような影響を与えるか、最終的な姿は見えません。ただし先行きを考えると、トランプ関税の発表は分散投資の大切さを再認識させる出来事となったのではないでしょうか。