スバルの新型「フォレスター」が売れている。受注台数は2025年4月の先行予約開始から2カ月で1.5万台まで積み上がった。大人気のミドルサイズSUVということで、スバリストならずともその仕上がりには興味津々のはず。今回は新登場の「S:HEV」(ストロングハイブリッド)と1.8Lガソリンターボの2台を乗り比べて魅力を探った。
サイズはキープ、価格は400万円超え!
新型フォレスターのボディサイズは全長4,655mm、全幅1,830mm、全高1,730mm。先代から比べるとわずかに15mm幅広になったぐらいで、ホイールベースの2,670mmは変更なしだ。何でもかんでも大きくなる最近のクルマのなかにあって、「この大きさがベストである」との実直な判断はいかにもスバルらしい。好ましい姿勢だ。
スバル伝統の2.5L水平対向エンジンにトヨタ自動車「THS」由来のハイブリッドシステムを組み合わせたS:HEVの「e-BOXER」には「プレミアム」と「X-BREAK」の2グレードがある。「スポーツ」グレードは1.8L水平対向ターボのガソリンエンジンを搭載する。全グレードにGPSや準天頂衛星システム「みちびき」の情報などを使用する運転支援システム「アイサイトX」搭載の「EX」グレードが用意されるので、選択肢は合計6種類ということになる。
価格は全て400万円超えの404.8万円~459.8万円。ちょっとしたプレミアム価格になってしまったが、そうなったのには理由があるはず。早速、試乗してみよう。
ハイブリッド車の内外装を詳細確認
最初に乗ったのは、ストロングハイブリッドシステムを搭載した「X-BREAK S:HEV EX」グレード。「オータムグリーン・メタリック」のボディに「クリスタルブラック・シリカ」のルーフを組み合わせた2トーンカラー(有償)が、新型フォレスターによく似合っている。
フェンダーとリアゲートにはハイブリッドモデルの証である「e-BOXER」バッジを装着。フロントグリルの横バーとリアピラーの「シンメトリカル4WD」バッジにあしらわれる「エナジーグリーン」はX-BREAK専用のアクセントカラーだ。
インテリアは8角形のセンターコンソールを中心としたスバルらしいデザインを踏襲。11.6インチの縦型センターディスプレイは標準装備となり、ナビやインフォテインメントのほか、走行モードの「Xモード」やデジタルマルチビューなど多くの機能がここに集約されている。
着座すると、何よりも視界が良いのに感心する。凹凸のないフロンガラス下部の水平なライン、一段下がった左右のウエストラインによる見切りの良さなどは、海辺で撮った写真を見てもらえば一目瞭然だろう。
撥水ポリウレタン/合成皮革のX-BREAK専用シートやダッシュボード、ドア内側トリムなど、仕上がり具合のレベルは一段上がった印象。最大幅1,250mm、長さ928mm、高さ887mmという広い開口部を持つ容量428L(標準乗車時)の使いやすいラゲッジは、さすがはフォレスターといった感じだ。ラゲッジ壁面にカーゴフックが付いているのは想定内として、高級オーディオ「ハーマンカードン」のサブウーファーが鎮座していたのにはちょっと驚いた。
S:HEVは全方位で上質! 弱点の燃費を克服?
注目のストロングハイブリッドシステムは、最高出力118kW(160PS)/5,600rpm、最大トルク209Nm/4,000~4,400rpmを発生する2.5Lの水平対向16バルブ「FB25」型エンジンに2モーターを組み合わせたトヨタTHSシステム由来のシリーズ・パラレル式を採用。駆動用モーターは88kW(119PS)/270Nmを発生する。状況に応じて最も効率のいい走り方を選んでくれる賢いシステムだ。走り方には「エンジンだけ」「エンジンとモーターを協調」「モーターだけ」の3つがある。
このシステム、日本で最初に採用したのはフォレスターよりも小さなSUVの「クロストレック」で、筆者も青森で乗って出来のよさに感心したものなのだが、実は、パワー的にはフォレスターにジャストフィットする性能になっていたそうだ。
走り出すとすぐに、従来のフォレスターに比べ圧倒的に静かになった車内とスムーズで上質になった乗り心地に気がつく。低速(30km/h以下)であればなるべくモーターのみで走ろうとするし、アクセルペダルを踏み込んでスピードを上げても、遮音がしっかりと効いている。思わず「ホホゥ」と声が出てしまうほどだ。
「スバルグローバルプラットフォーム」(SGP)は「フルインナーフレーム構造」の採用で剛性が向上している。ルーフ部分には振動を吸収して抑える接着剤を使用。乗る人の三半規管の揺れを抑える工夫だ。フロントシートは乗員の“仙骨”を支えて頭の揺れを低減する作りになっている。快適な走りの実現というひとつの目標に向かって、各所の技術者が足並みをそろえて開発した様子が見て取れる仕上がりだ。
アクセル全開の0-100km/h(ゼロヒャク)加速では、先代のe-BOXERに比べて2.8秒も速い9.6秒を達成。ワインディングに乗り入れてのスポーティーな走りにも満足がいく。タイヤは225/55R18のファルケン製オールシーズンだったが、コーナーでは内側ブレーキを軽くつまむ「アクティ・トルク・ベクタリング」や2ピニオン電動パワーステアリングのアシスト量が適切で、リズミカルな走りが堪能できた。
さて気になる燃費だが、ちょっと強めの加減速を伴う1時間ほどのテストドライブを終えてメーターを見ると15.7km/Lの表示になっていた。「最高!」とまでは言えないけれど、これまでのスバル車と比べると文句なしだ。少なくとも「十分!」とは言える数値なのではないだろうか。
1.8Lターボはもっと速い?
もう1台の1.8Lターボは人気色の「クリスタルホワイト・パール」で、バンパーやサイドプロテクター、ホイール、リアマフラーが専用のブロンズカラーに塗られた「スポーツEX」グレードだった。左右2本出しマフラーとなっているのはターボ車だけの特徴だ。
水平対向1.8L直噴ターボエンジン(DIT)は最高出力130kW(177PS)/5,200~5,600rpm、最大トルク300Nm/1,600~3,600rpmを発生。新排ガス規制や70kgの重量増を補う燃費改善のため、リーン燃焼(理論空燃比より空気が多い燃焼)や低燃費エンジンオイル、高効率オルタネーターを採用している。0-100km/h加速は8.6秒とS:HEVよりも速い。性能は十分だ。ボディの作りはS:HEVと同じだと考えていい。
走り出すと、トランスミッションケースカバーの面積拡大や同ケースの剛性強化の効果もあって、パーシャルスロットル時の静かな車内と、加速時にわずかに聞こえてくる水平対抗4気筒の「トロロロン」というビート音が気持ちいい。路面の入力に対してスムーズな動きをみせる「超飽和バルブ付きダンパー」をターボ用に採用したとのことだが、こちらも効果ありといった感じだ。
S:HEVと同じルートを走って燃費を見ると、S:HEV比3割減の10.3km/Lという数値に落ち着いた。
現時点での納期はS:HEVモデルの1年に対してターボが3カ月程度。とにかく早くフォレスターに乗りたいのなら、こちらの選択もありだ。事実、2025年5月は4割がターボの受注だったという。
新旧e-BOXERでオフロードに突入!
最近の電動4WDは前後別々のモーターによって四輪を駆動するシステムが多いのだが、新型フォレスターはスバル伝統のプロペラシャフトで前後をつなぐ左右対称のシンメトリカルAWDだ。シャフトには切り離し可能なクラッチを装着しているのだが、圧着方式が先代は油圧式、新型は電磁式になっている。当然、その駆動方式を司る「Xモード」の設定も異なるはずなので、その違いを確かめるため、新旧モデルでオフロードコースを走り比べることになった。
場所は、千葉県安房郡鋸南町の内陸部にある採石場跡地。アップダウンのある岩場のゴツゴツした路面を往復2kmほど走った。新型は2.5Lのストロングハイブリッドモデル、旧型は2.0Lマイルドハイブリッドの「X-EDITION」だ。
Xモードはどちらも「SNOW/DIRT」を選んで走ったのだが、結論から言うと、どちらも問題なしでどんどん突き進むことができた。220mmの最低地上高が、やっぱり効いている。下り坂では20km/h以下で「ヒルディセントコントロール」が作動するので、安心してステアリングに集中できた。
ひとつだけ気がついたことを言わせてもらおう。
ホコリまみれのコースを走っていると、新型フォレスターの斜めに取り付けられたモニター画面に細かなチリがついてしまった。そうなると、大きく揺れるクルマの角度によっては、日光が当たる部分が光って画面が読み取りにくくなってしまうのが気になった。新型ではタッチして切り替えるXモードが画面の上部にあって、特に日が当たりやすのだ。
一方、旧型のXモードはセンターコンソールにあるダイヤルを回して選ぶ方式なので、確実性はこちらの方が良かった。
とはいえ、総じて出来の良さがビンビンと感じられた新型フォレスター。プレミアムな価格設定もこれならOK、というレベルに仕上がっている。北米でも日本でも、人気モデルになるのは間違いない。