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乗ったぞ! 電気のマイバッハ - 「EQS 680 SUV」はどれだけラグジュアリーなのか

JUN. 03, 2025 11:30
Text : 原アキラ
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2024年8月に日本に上陸したメルセデス・マイバッハ初の電気自動車「メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV」。EV(電気自動車)化とSUV化で、マイバッハはどこまでラグジュアリーな乗り物に進化したのか。その世界観を味わうべく、箱根で運転席と後部座席に座ってみた。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    EVでSUVの「メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV」に乗ってきた

そもそもマイバッハとは

ドイツの高級車メーカー「マイバッハ」は、戦前には5.4リッター直列6気筒エンジンを搭載した「W3」型や、7リッターV型12気筒エンジンを搭載した「W8」型「マイバッハ・ツェッペリン」(飛行船ツェッペリン号のエンジンもマイバッハ製だった)など、ウルトラ級の高級モデルを世に送り出していた。

しかし、敗戦により自動車製造は停止。2002年になって当時のダイムラー・クライスラーがマイバッハブランドを復活させ、世界の富裕層を対象としたロングボディの超高級リムジン「57」と「62」(日本での価格は4,000万円から1億円)の製造を開始したものの、期待通りの販売台数には至らず、2012年にはブランドが廃止となった。

現行の「メルセデス・マイバッハ」ブランドが復活したのは2014年のこと。当時の「Sクラス」(W222型)のロングホイールベース版のリアをさらに200mmほど延長した「メルセデス・マイバッハ Sクラス」を引っ提げての活動再開だった。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    ブランド復活から10年となる節目の年に登場した「メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV」

筆者も当時、米国・西海岸で開催されたマイバッハの試乗会に参加した。ロサンゼルスからナパ・ヴァレーまでは自らステアリングを握り、高級ワイナリーで乾杯した後、今度は優雅な後席に身を沈め、夕陽に染まる太平洋を眺めながらシャンパングラスを傾けつつ再びロサンゼルスに戻るという、夢のようなプログラムだったことを思い出す。

驚異の3トン超え! ド級ボディの乗り味は

4リッターV8ツインターボや6リッターV12など、多気筒エンジンを搭載した4ドアセダンの「メルセデス・マイバッハ Sクラス」と、SUVの「メルセデス・マイバッハ GLS」をラインアップするメルセデス・マイバッハブランドに、新たに加わったのが今回の「メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV」だ。EQSの名のとおり、ブランド初のEVである。

ボディサイズは全長5,135mm、全幅2,035mm、全高1,725mm、ホイールベースは3,120mm。車重は3トン超えの3,050kgに達する。近くに立つと、さすがのド級ボディに圧倒されるが、ちょっと離れてみると意外とスリークな気がする。空力が重要なEVだけに、ボディラインは滑らかだ。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    大きいけれど、ボディラインは滑らか。スリークなスタイルに見えてくるから不思議だ

ボンネット先端に取り付けたマスコットやその下の縦桟グリル、エアインテーク部分に取り付けたブランドロゴを散りばめたカバー、マイバッハ専用22インチアルミなど、スペシャル感は満点だ。当然ながらお値段もド級で、本体価格は2,790万円。試乗車はハイテックシルバー/ノーテックブルーのツートーンペイント(285.9万円)、クリスタルホワイト/シルバーグレーのナッパレザーインテリア(224.7万円)、ファーストクラスパッケージ(123.6万円)、ブラックピアノラッカーフローイングラインインテリアトリム(28.1万円)など合計662.3万円のオプションを装着、トータル3,452.3万円也となっていた。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    マイバッハに乗っているという特別感はEVになっても味わえる

通常、同じクラスのクルマであればガソリン車よりもEVの方が高額になるのだが、マイバッハ GLS600は3,220万円(元々のボディが違うので、比べている場合じゃないという意見もあるが)なので、実はEQSの方が“お買い得”なのである。首都圏の新築マンションの平均価格が7,000~8,000万円というから、その半分で買える計算だ。20数年前に筆者が買った新築マンションの価格が、これぐらいだった気がする(庶民的な話で申し訳ない)。

  • メルセデス・マイバッハ GLS600

    こちらが「メルセデス・マイバッハ GLS600」(この写真のみ提供:メルセデス・ベンツ日本)

メルセデスの広報さんに日本での売れ行きを尋ねてみると、「もうちょっと売れてほしいんですけど」とおっしゃる。「それはなぜ?」という答えを探すべく、まずは豪華なリアシートを体験することにした。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    もう少し売れてほしい、ということは、思ったほどには売れていない?

ファーストクラスパッケージを味わう

運転席からスイッチで開閉操作ができるリアの「電動コンフォートドア」を開けてもらい、真っ白なナッパレザーの後席に乗り込む。元々3列シートだったスペースに左右独立の2座(ファーストクラスパッケージ)のシートを取り付けているので空間は十分。ノーマルEQS SUVをマイバッハ化するに当たって、ボディをストレッチする必要がなかったわけだ。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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    真っ白な後席に乗り込む

最高のラグジュアリーを体験すべく、乗り込んですぐにシートスイッチを押すと、背もたれは150度ほど後ろに倒れ、足元からはニーパッドがせり出し、同時に助手席が前方に倒れるとともに、そこからフットレストが現れた。フルフラットとまではいかないけれど、これで十分に体が伸ばせる。シートに触れる背中の感触とともに、頭を包み込むような「ファサッ」というヘッドレストの当たりも素敵だ。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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    後席を目いっぱい倒して寝そべってみた

座席の間にはシャンパンとグラスを収納するクーリングボックスがあり(トランクスペースに出っ張る形で装着される)、取り出したボトルとグラスは保温・冷機能のあるセンターアームレストのスタンドとカップホルダーにセットできる(当日は残念ながら用意なし)。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    後席でシャンパンを楽しむための設備が充実している

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    着脱式のMBUXリアタブレットを使えば、シートベンチレーションやヒーター、マッサージなどさまざまな機能が操作できる

まさに、ファーストクラス(筆者はビジネスクラスまでしか体験したことがないのだが)の移動空間だ。航空機と違うのは、窓の外に流れる景色が空の上の雲ではなく、箱根の山の木々だったことぐらい。撮影ポイントまでのわずか10分ほどだったが、商談やビジネスで神経をすり減らしたり、寝付きの良い方だったりすれば、すぐに瞼が重くなってくるはずだ。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    ちなみに、こちらが5人乗り仕様の後席

ドライバーにとって電気のマイバッハはどうなのか

運転席も豪華絢爛。クリスタルホワイト/シルバーグレーのインテリアもそうだが、ダッシュボードに3枚のスクリーンを並べた巨大な「MBUXハイパースクリーン」にも目を奪われる。コックピットメーターは専用表示の「マイバッハ」モードを選び、ドライブモードをこれも専用の「マイバッハ」にしてやれば、立派なショーファードライバーに変身できる。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    運転席も豪華絢爛

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    メーターをマイバッハモードに

パワートレインはフロント174kw/346Nm、リア310kW/609Nm、システム合計で最高出力484kW(658PS)、最大トルク955Nmを発生する2モーターの4WDで、3トンを超えるボディを時速100kmまで4秒ちょっと(欧州仕様)で加速することができる。ボディ床面のリチウムイオンバッテリーは容量118kWhで、一充電走行距離は640km(WLTCモード)を公称。試乗時はバッテリー残量69%で走行可能距離が369kmとなっていたので、普通に走れば500kmは確実に行けそうだ。日本仕様はV2H/V2Lに対応していて、バッテリーは10年/25万kmまでの保証付き。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    フル充電なら500kmは走れそう

走り出すと、大きく重いボディながら、エアスプリングと可変ダンパーをセットした「エアマチックサスペンション」や、最大10度の切れ角を持つリアアクスルステアリングによって、ちょっと荒れていたりコーナーがきつかったりする道路にも安心して乗り込んでいけるのが素晴らしい。マイバッハのエンブレムを刻んだアクセルペダルを踏み込むと、頭が後方に持っていかれるような乱暴な感覚ではなく、どこまでも伸びていくその加速感もマイバッハらしいところ。車内があまりにも静かなのがお好きでないなら、「サウンドエクスペリエンス」の4つの走行音からふさわしいものを選んでやればいい。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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    EVだが加速感は唐突ではなく、どこまでも伸びていきそうなマイバッハらしい走りだった

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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  • 最大10度の切れ角を持つリアアクスルステアリングを搭載

ひとつ挙げるなら、下りのコーナーでは3トンの重量が伝わるタイヤがきつそうだな、と感じるシーンがあったので、そうした場面ではスピードにご注意を。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV

    下りのコーナーではタイヤがきつそうだった

NVH対策として多気筒エンジンを搭載してきたマイバッハにあって、EVというのはひとつの到達点かもしれない、と思わせてくれた今回のEQS 680 SUV。ただ、前出の広報さんの言葉にある通り、街中であまり見かけることがないのは、結局はEVのユーティリティが存分に発揮できない現在のインフラ環境に原因があるのかもしれないと思ったのも確かだ。

  • メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV
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