高齢者向けの「プラチナNISA」が誕生する可能性があることが、大きな話題になっています。毎月分配型投資信託を中心に運用する構想を懸念する声もありますが、その理由はなぜなのでしょうか? この記事では現段階での情報を基に、プラチナNISAの制度の概要、毎月分配型投資信託のメリット・デメリットを解説します。
プラチナNISAの概要
プラチナNISAとは、65歳以上の人を対象にした新たなNISAの制度です。岸田前首相が会長である「資産運用立国議員連盟」が提言したもので、2026年度の開始が検討されています。
対象者は65歳以上の年金生活者層を想定し、現在のNISAでは対象外の「毎月分配型投資信託」に投資ができるようにするというのが、プラチナNISAの概要です。毎月分配型投資信託とは、分配金が毎月口座に振り込まれるタイプの投資信託を指します。
年金だけでは収入が足りない世帯が多いため、毎月分配型投資信託から得られる収入を非課税にし、生活の足しにできるようにすることが、制度導入の背景の1つです。
また、ここ数年の政府の基本方針である「貯蓄から投資へ」の流れの1つでもあります。
日本の預貯金の多くは高齢者が保有しており、これを資産運用や投資へ振り向けることも狙っていると考えられます。
毎月分配型投資信託の特徴とは
毎月分配型投資信託は、1カ月ごとに決算をして、収益の一部を分配する仕組みです。
毎月分配型投資信託のメリット
- 毎月の安定収入が得られる
- 自分で投資信託を売る手間がない
毎月分配型投資信託では、原則として毎月分配金が現金で振り込まれます。年金収入に加えて安定的な収入を得られることから、メリットを感じる高齢者もいます。
また、他のタイプの投資信託で利益を獲得するには、持っている分を売却する手続きが必要ですが、毎月分配型ならその手間は必要ありません。
毎月分配型投資信託のデメリット
- 「たこ足配当」では投資信託の基準価額が下落する
- 他のタイプの投資信託より手数料が高い
- 複利効果を得にくい
毎月分配型投資信託の大きな注意点である「たこ足配当」とは、元本が切り崩されて分配金に充てられることです。運用で利益が出ない場合、元本を切り崩して分配金とするため、投資信託の基準価額が下がってしまいます。
分配金がもらえて喜んでいたものの、気づいたら基準価額が大きく下落していたというケースも。いくら分配金がもらえたとしても、基準価額の減少のほうが大きいと、結果的に損をしてしまいます。
また、毎月決算をしたり分配金を配ったりと運営に手間がかかるため、手数料が高く設定されている点も要注意です。手数料が割高だと、運用で多少のプラスになっても相殺され、想定していたような利益が出ないこともあります。
毎月分配型投資信託で見込めるリターンの例
毎月分配型投資信託に投資をしたらどの程度のリターンが得られるのか、以下の例でシミュレーションをしてみました。
- 購入金額:1,000万円
- 基準価額:1万円
- 月々の分配金(1口当たり):70円
- 購入手数料:2.2%
上記の設定では、購入金額に対しての受け取り分配金(税引後)は5万4,552円、分配金利回り(税引後)は6.5%となりました。
投資信託の分配金利回りは3%~10%が目安ですが、あくまで平均であり、実際には商品の種類や運用状況によって大きく異なります。
毎月分配型の場合、20%以上など非常に高い利回りを出している銘柄もあります。ただし、たこ足配当を行っている可能性もあるため、注意が必要です。
プラチナNISAに求められること
プラチナNISAに関しては、賛否両論が見られます。懸念を少しでも解消するため、プラチナNISAを立ち上げるうえで、今後必要になると思われる項目を解説します。
優良銘柄の選定
毎月分配型投資信託は、知らぬうちに「たこ足配当」になりかねないのが大きなデメリットです。このため、プラチナNISAの口座開設者にはリスクに関して丁寧な説明を尽くすとともに、対象を優良銘柄に絞りこむことも必要です。
現在のNISAやiDeCoでの投資信託は、長期の資産形成に役立つと金融庁が認めた銘柄のみに限定されています。プラチナNISAに関しても、制度の趣旨に合致する銘柄、リスクが高すぎない銘柄を選別することが求められるでしょう。
また、毎月分配型投資信託だけでなく、その他の金融商品に投資できるようにすることも必要かもしれません。
相続税に関する優遇
65歳以上の高齢者を対象にする場合、相続に関する優遇は大きな魅力になると考えられます。たとえばプラチナNISA保有額の全額または一定額は相続税を非課税にすると、利用者のメリットは大きいでしょう。
相続税非課税メリットを享受するべく、口座への資金流入が進み、シニア世代から他の世代への資産の移転も進みやすくなると考えられます。