三菱自動車工業が日産自動車の米国工場での共同生産の検討を始めた。三菱自は2015年に米国工場を閉鎖し、同国での現地生産からは撤退していたが、トランプ政権の関税政策の影響をモロに受けることになり、筆頭株主である日産との連携による現地共同生産で対応していく考えだ。
さらに、当面の対応として、日本から対米輸出している三菱車の米国販売については、追加関税を受けて値上げする方向での検討に入った。三菱自はトランプ政権の関税政策により、2025年度に400億円の営業減益を見込むことを余儀なくされている。
トランプ関税が減益要因に
5月8日にトヨタ自動車に続いて2025年3月期(2024年4月~2025年3月)連結決算会見を行った三菱自動車。米トランプ関税の影響を加藤隆雄社長は「不透明な国際情勢だが、トランプ関税の影響は米国だけでなく他国においても押し下げ要因となる。三菱自としてトータルで400億円の営業減益を見込む」との見方を示した。
三菱自の前期2025年3月期連結業績は売上高2兆7,882億円(前期比増減なし)、営業利益1,388億円(同27.3%減)、当期純利益409億円(同73.5%減)の大幅減益となった。前期業績について三菱自は、主力のアセアンでタイ、インドネシアの需要回復が遅れたことや北米でのインセンティブ上昇によるコストアップなどが響いたと分析。それでもモデル刷新、電動化の促進、販売ネットワーク強化などにより、アセアン、日本、北米などの主要市場では販売台数が増加した。
今期2026年3月期の業績見通しについて加藤社長は「米国の関税政策に端を発する国際経済の混乱により、グローバルで景気不確実性が増すとの判断している」との見方を示した。業績予想は売上高2兆9,500億円(前期比5.8%増)、営業利益1,000億円(同28%減)、当期純利益400億円(同2.4%減)を見込む。関税の影響を除いた試算としての営業利益は1,400億円だが、米国の関税影響で300億円、その他アセアン諸国での関税の影響で100億円の減益になる、としている。
三菱自は決算発表の直前の5月7日、台湾・鴻海精密工業からEV(電気自動車)を調達し、2026年後半からオセアニア市場に投入することを発表している。さらに、決算発表とともに、日産米工場での共同生産検討を発表。2015年に米イリノイ工場を閉鎖していたが、米国での現地生産を復活させ、トランプ関税に対策する姿勢を打ち出した。
三菱自の米国生産が日産の支援に?
米国での三菱車ブランドには根強いものがある。トランプ政権の誕生により、全面輸出からの転換を余儀なくされた格好だ。日産は北米市場での不振により米国工場の稼働率が落ち込んでいる。三菱自の動きは日産の支援にもつながることになる。
また、三菱自としては、サプライヤー対策を含めて米国現地販売での「値上げ」に踏み切る方向で検討に入ったようだ。現地生産から撤退している三菱自としては、他の日本車が米現地生産と輸出で状況を見極めている中で、その判断を迫られている。