イタリア語で驚きを表す感嘆詞「クンタッチ」から名付けられたランボルギーニ「カウンタック」(Countach)は、スーパーカー界の大スターです。自動車ファンならずとも胸おどるデザインで、日本ではスーパーカーブームを牽引。憧れのクルマとして今も愛され続けています。
今回はカウンタックを「デザイン」「スーパーカーブーム」「25thアニバーサリーの価値」の観点からご紹介します。
愛され続けるロングセラーモデル
1971年の「ジュネーヴ・モーターショー」でランボルギーニは、カウンタックのプロトタイプ「LP500」を発表しました。全高1.07mという低い車高と極端なウェッジシェイプ(くさび形)が目を引く革新的かつ近未来的なデザインは、それまでのクルマの常識を覆し、人々の記憶に深く刻まれることになります。
初披露から3年後の1974年に市販型の「LP400」を発売するまで、ランボルギーニは走行テストやエンジン冷却性能の改善などを繰り返しました。鋼管スペースフレームボディとLPレイアウト(縦置きエンジン構造)で軽量化と剛性を両立したカウンタックの設計は、理想的な重量配分を実現し、優れたハンドリングを可能にしました。その後も改良を重ねたカウンタックは、生産期間16年のロングセラーモデルとして、ランボルギーニのアイコンにまで上りつめます。
タイムレスで特別な「シザーズドア」
「ミウラ」に続き、カウンタックのデザインを担当したのはマルチェロ・ガンディー二です。
カウンタックのデザインにおいて、何よりもファンを興奮させ、スーパーカーへの夢を募らせる特徴は「シザーズドア」でしょう。車体側面から垂直に開くデザインは、ノーズからテールパネルまで途切れのない1本の曲線で成るボディラインに華を添えます。
このドアはスタイリングだけを目的に開発されたのではありません。カウンタックは後方の視界が悪い造りですが、このドアがあることにより、ドライバーは上方にドアを開けて上半身を車体から出し、後方を目視することができるのです。つまり、バック走行中でも接触の心配をすることなく、狭いところでの駐車を可能にするという機能性も併せ持っているわけです。
ちなみに、世界で初めてシザーズドアを採用したクルマは、ガンディー二がデザインしたアルファロメオ「カラボ」(1968年発表)でしたが、市販車で採用したのはカウンタックが初めてです。まさに、“夢”を手に入れることができるクルマだったということです。
シザーズドアを含めたカウンタックのスタイリングは、「ディアブロ」「ムルシエラゴ」「アヴェンタドール」など後の歴代V12モデルに受け継がれていくことに。このシザーズドアは、スーパーカー市場においてコレクターやファンたちを魅了し続けるタイムレスで特別なデザインなのです。
スーパーカーといえば「カウンタック」
1971年にカウンタックのプロトタイプ「LP500」が発表されたころ、高度経済成長期にあった日本では自動車産業が発展し、輸入車の数が増加していました。そんな中で巻き起こったのが、「スーパーカーブーム」です。
このブームを語るのに欠かせないのが、1975年から1979年にかけて週刊少年ジャンプで連載された漫画『サーキットの狼』です。それまでの日本の車漫画には架空の車種しか登場していなかったのに対し、『サーキットの狼』にはカウンタックをはじめ、ロータス「ヨーロッパ」やポルシェ、フェラーリなどの実在する車種が登場しました。「リアルさ」が少年や大人たちの心をつかんだのです。
中でもカウンタックは、極端に低い車高やシザーズドア、リトラクタブル・ヘッドライトなどの目を惹くデザインが人気となり、ブームの主役を張っていました。日本独自のこのブームを目撃した人には、「スーパーカー=カウンタック」というイメージが根強く残っているのではないでしょうか。
日本の文化を象徴する存在へ
当時の子どもたちにとって、スーパーカーへの憧れや欲を満たしてくれるのが「グッズ」でした。スーパーカー消しゴム、スーパーカーカード、鉛筆、排気音を録音したレコードなどが大流行したのです。ブームを支えたのは子どもたちだったと表現してもおかしくはありません。
日本各地でスーパーカーの展示イベントが開催され、1977年には東京12チャンネル(現テレビ東京)で『対決! スーパーカークイズ』が始まるなど、マスメディアの力も加わってブームは絶頂期を迎えます。
そして1980年代のバブル経済期に突入すると、人々は趣味や贅沢品に莫大な資金を投じ始めます。スーパーカーには、「成功の証」や「自己表現」のツール、「充実した生活」の象徴としての価値も見出されるようになりました。ブームだったころの少年が大人へと成長し、スーパーカーを所有するという夢を実現し始めたのです。この現象は「第二次スーパーカーブーム」とも呼ばれています。
バブルが崩壊して日本は低迷期に入りますが、スーパーカーの夢は褪せることなく続いています。カウンタックは単なるクルマではなく、日本で一世を風靡した熱い文化を象徴する存在でもあるのです。その革新性と影響力は、今後もスーパーカー市場の指標であり続けることでしょう。
最終進化系モデル「25thアニバーサリー」
1988年に登場した「25thアニバーサリー」は、カウンタックシリーズの最終進化系モデルです。当時、ランボルギーニに在籍していたオラチオ・パガーニがフロントバンパーやサイドスカート、リアバンパーを再設計し、冷却性能を向上させ、空力性能も大幅に改善しました。インテリアもより快適になっています。
「最も洗練されたカウンタック」とも呼ばれるこのモデルは、シリーズ最多となる657台の生産数を誇ります。
過去10年で落札額が倍以上に! 富裕層増加が理由?
ランボルギーニの革新と伝統が融合したモデルとして、25thアニバーサリーが多くのスーパーカーファンに愛されていることは、オークション市場での落札額の上昇傾向からも見て取れます。
10年ほど前は4,000万円前後で取引されていた25thアニバーサリーですが、2022年には倍の約8,000万円、ここ数年では1億円単位まで上昇しています。カウンタックそのものに価値があるのは当然ですが、この上昇の背景のひとつには、富裕層人口の増加が挙げられるでしょう。
2021年には世界のミリオネアが520万人に増加し、ビリオネアに関しては、この10年間で1,757人から925人増の2,682人になったというレポートがあります。富裕層はアセットマネジメントのひとつとして、高価なクラシックカーをポートフォリオに組み込む傾向があります。
非富裕層には羨ましい話かもしれませんが、つまり、往年の名車は趣味や夢、所有することで生まれる感情の機微といった感情的価値に加え、資産としての価値も併せ持っているということなのです。
&OWNERSで取扱中の「カウンタック25thアニバーサリー」はこちらからご覧下さい。
監修: 株式会社AND OWNERS(https://and-owners.jp/)
「株式会社AND OWNERS」は株式会社サイバーエージェント代表取締役 藤田晋氏が手掛ける「藤田ファンド」やGMOインターネットグループ株式会社らからの資金調達を経て、「テクノロジーで、アートと社会を結び、拓く。」をビジョンとして2018年に創業。2019年、アートの共同保有プラットフォームサービス「ANDART」の提供を開始し、2023年11月に東証プライム上場の株式会社FPGの80%子会社として参画。同サービス提供開始から5周年となる2024年7月16日付で共同保有の対象実物資産をアート作品以外に拡げるサービスリニューアルを実施し、社名を「AND ART(アンドアート)」から「AND OWNERS(アンドオーナーズ)」へ、同サービスの名称を「&OWNERS」へと変更。同時に総額約4億円のランボルギーニの取扱いを開始。また、アート作品と自動車の売買および仲介のアドバイザリー事業 「AND OWNERS CONCIERGE」(旧「ANDART CONCIERGE」)や最新のアート市場動向などを発信するWebメディアなど、複数のサービスを通して日本のアートリテラシーの向上とマーケットの活性化を目指す。